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  • 「本当はすごい、日本の腎移植」Ⅰ.腎移植後の癌と検診の重要性

 日本での腎移植は生体間移植の場合も献腎移植の場合も、「2回目はない」との覚悟で行う場合が多いです。そのため移植患者も主治医・コメディカルからの指導に忠実に従う傾向にあり、患者のコンプライアンスは世界的にみても非常に高いと言えます。この「高いコンプライアンス」に裏打ちされた移植成績の具体例を一連のシリーズとして取り上げていきます。
 今回は特に「腎移植後の癌検診」について解説します。腎移植患者さんの死亡原因の第3位は悪性腫瘍であり、長期生存率向上には定期検診による悪性腫瘍の早期発見早期治療が不可欠です。


 図1に、ある腎移植専門施設に外来通院中の腎移植症例の悪性腫瘍発症の内訳を示します。日本人一般の様々な悪性腫瘍の発症率に比べ、固有腎癌と悪性リンパ腫の割合が高いことが特徴です。前者は腎不全によるACDK(Acquired Cystic Disease of Kidney)が原因であり、後者はCNI(シクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニュリン阻害剤)服用によって発症率が上昇したものです。



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 さて図2に、この施設の悪性腫瘍を発症した腎移植患者さんと非発症の腎移植患者さんの生存率を示します。悪性腫瘍を発症しても生存率が低下していない。これは何故でしょうか? 実は図1に示した症例の90%以上は1回/年施行している癌検診によって発見されています。 早期診断・早期治療の結果、悪性腫瘍の再発なく移植腎機能も維持されているのです。

 臓器移植後の悪性腫瘍に関する論文は多いのですが、検診に関する論文は少ない。しかしこの「毎年、高い癌検診率を維持すること」が実は最も重要で、この課題の達成できているか否か?で移植外来としての真の価値が決まる、といっても過言ではありません。

 ではどうすれば「毎年、高い癌検診率を維持すること」が可能になるのでしょうか? 結論としては、「毎月の外来受診ができているか?」が最も重要な条件です。1回/月の外来受診を移植後何十年経っても継続することによってはじめて高い服薬コンプライアンス(決められた薬を正しく服用すること)や自己管理、自分の健康に対する自覚を高めることができます。その結果が高い癌検診率に繋がります。また毎年行うべき癌検診の項目としては、腹部CT、腹部超音波検査、胃カメラ、便潜血検査と陽性時の大腸内視鏡検査、胸部単純レントゲン検査、乳がん検診、子宮癌検診、腫瘍マーカー、などがあります。このように多くの検査を、1年を通じて順次行うには、やはり毎月の外来受診が必須ということです。


 この腎移植専門施設における定期検診の内容と受診率の変遷を図3に示します。2006年から2008年まで、乳がん検診率と子宮癌検診率が少しずつ上昇しています。これは移植専門外来としてのキャンペーンとして乳がん検診と子宮癌検診を強く移植患者に勧めたためです。しかし受診率はまだ60%以下であり今後の課題でもあります。


 胃透視・胃カメラについては、2008年では90%以上が胃カメラを施行しています。これは胃カメラ施行時に静脈麻酔を併用した結果、高いリピート率となったことを反映しています。 この腎移植専門施設の今後の課題はPTLD(Post Transplant Lymphoproliferative Disorder )および悪性リンパ腫です。これらは上記の癌検診だけでは発見できない場合が多く、この問題については改めて詳述したいと思います。

 繰り返しますが、腎移植患者さんの毎年の癌検診は必要なのであって努力目標ではありません。我々専門医は腎移植患者さんへの移植専門外来は「毎回の外来が真剣勝負である」との覚悟で臨んでいます。是非、皆さんも今一度がん検診の重要性を認識し、積極的に受診するよう主治医の先生とご相談ください。

文献;
1)Imao, T., N. Ichimaru, S. Takahara, Y. Kokado, M. Okumi, R. Imamura, Y. Namba, Y. Isaka, N. Nonomura, and A. Okuyama. 2007. Risk factors for malignancy in Japanese renal transplant recipients. Cancer 109:2109-2115.
2)A Toyofumi, Ichimaru N, Kodado Y, Maeda T, Kakuta Y, Okumi M, Imamura, R, Nonomura N, Isaka Y, Takahara S, Okuyama A 『Post-transplant lymphoproliferative disorder following renal transplantation: A single-center experience over 40 years.』 International Journal of Urology (2010) 17,48-54

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