今回はちょっと趣を変えて、残念ながら1回目の腎移植がうまく行かずに透析に戻ってしまった方で2回目の腎移植を考えている方の話題です。

このような2回目の腎移植はそもそも可能なのかご存知ない方も多いかと思いますが、答えは、「可能です」ということになります。現在でも全体の移植例のうち約5%が2回目の腎移植例です。2回目までの腎移植はそれほどリスクがないことから、本来ならもっとたくさんの方が2回目の腎移植を受けることが出来るはずですが、残念ながら日本ではドナーがいないことがネックになっています。

2回目の腎移植は1回目に比較してやや注意すべき点はあるものの腎移植は問題なく行えます。

2回目の腎移植を考えるうえで重要なポイントは、一回目の腎移植がどのような理由でだめになったかです。もし、慢性拒絶反応であれば、現在、術前検査を詳細に行うことによりリスクを評価し腎移植後も殆ど拒絶反応を起こすことなく腎移植することも可能です。この場合、最も問題になるのは、ドナー特異的抗HLA抗体(DSA)(*)といわれるものです。このDSAがあっても比較的弱いものであれば、適切な術前準備を行えば全く問題ありません。しかし、全体の5%前後の患者さんはDSAが強く拒絶反応のコントロールに難渋することが予想されます。

また、IgA腎症やFGSなどの再発性腎疾患が原因で移植腎がだめになった方の場合でも、これらの再発を抑制する治療法が確立されつつあり、2回目の腎移植が安全に行えるようになっています。事実、IgA腎症の再発で移植腎がだめになった方でも2回目の腎移植が安全に行え、順調に推移している人もいます。

*DSA:ドナー特異的抗HLA抗体といわれるものです。これは皆さんが水痘やはしかに対して一度かかると抗体を持つようになり2度とかからなくなる現象と基本的には同じ現象です。一度感染して抗体を作ると2回目に感染したとき直ちに抗体が反応して病原体を破壊するのです。これが免疫(病気を免れる)というものの本体です。すなわち、生体が生存していくのに必要な自己防衛システムなのです。2回目の腎移植の場合もこれと同様です。一度、腎移植を受けると提供者に対する抗体を作ります。この抗体が2回目の腎提供者にも反応するものであると2回目の提供者の腎臓を(ちょうど水痘ウイルスが2回目に感染したときたちどころに撃退してしまうのと同じで)たちどころに拒絶してしまうのです。本来の自己防衛システムが皮肉なことに移植腎を破壊するのです。