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若井 幸子先生 コラム

 IgA腎症は日本で最も頻度の高い慢性糸球体腎炎で、30~50%を占めます。IgA腎症を原疾患とする新規透析導入患者は、毎年約5,000人いるともいわれています。

 1968年J.Berger, N.Hinglaisらにより、はじめてIgA腎症が報告されました。 昔の(1980年代)教科書には、IgA腎症は予後のいい疾患であり、血尿が出るが、治療をせず診ているだけでいいとされていました。

 1970、80年代エコー機が病棟に設置されるようになり、広く腎生検が行われるようになりました。それにより、IgA腎症がアジア太平洋地域、フランス、南欧諸国に多発し、北欧、北米で少なく、黒人では稀であることが判ってきました。1993年に予後が明らかになり、10年で10~15%、20年で40%が末期腎不全となることも報告され、診ているだけではいけない疾患であることがわかりました。

 1995年IgA腎症診療指針が厚労省・腎臓学会合同でだされ、IgA腎症にステロイド治療が導入され、2002年IgA腎症診療指針(第2版)にまとめられました。

 『組織学的予後分類(2002)』を基準としている以下の分類です。


 この指針では、予後良好群、予後比較的良好群では、治療介入せず、予後比較的不良群、予後不良群となったらステロイド治療に踏み切ろうという方針です。この指針で10年近くやってきましたが、予後良好群と診断された方が透析導入となったり、予後不良と診断された方が持ちこたえたりする逆転現象やクレアチニン(Cr)<1.0の予後良好群の方が10年するとCr>1.0になったりするようなことを経験したり、治療指針が不十分であることを感じていた腎臓内科医も多かったと思います。

 IgA腎症の進行速度は活動性によりますが、多くは10~30年の経過です。早期に診断がつけば、軽いステージに分類されますが、時間がたてばステージが進んだ分類になるという意味合いを含んでいます。感冒や扁桃腺炎を合併すると、急速進行性に悪化することもあります。

 早期のIgA腎症に扁桃腺摘出パルス療法が有効であると報告もなされています。

 2011年3月IgA腎症治療指針第3版がだされました。臨床症状、病理所見から以下に分類されました。


 第2版と異なる点は低リスク群から早期にステロイド治療を開始する、免疫抑制剤を使用する点です。

 ただ、IgA腎症はまだ、新しい疾患であり、施設によっても腎生検の時期や治療方針(扁桃腺摘出の適応、パルス療法単独か、パルス療法の期間)に至っても、ばらつきがあるのが現状です。

 現在腎移植をされている方の中には原疾患がIgA腎症の方も多いと思います。
腎移植後の再発IgA腎症は13~45%、graft loss※は2~16%と報告されています。免疫抑制剤を服用していても、IgA腎症が再発することがあるのです。

※graft lossとは移植した腎臓が機能を失うこと

 当院では、2008年から移植後再発IgA腎症に対して、扁桃腺摘出術をしています。移植後5~10年して尿所見がすでに出現している方や、尿所見はなくプロトコール腎生検で所見があった方、IgA腎症が原疾患であることが明らかな方、最近では、原疾患がIgA腎症である移植前の方も扁桃腺摘出術を施行しています。

 耳鼻科医としては腎移植患者や透析患者の扁桃腺摘出術はリスクの面からやりたがらないものですが、当院では、腎内科との連携を密にしてスタートいたしました。移植後IgA腎症に対する対応もまだまだ確立されたものではなく、今後の課題です。

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