トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「Diseased ArteryのHandling」と「腹腔鏡・ロボット手術・分子標的薬時代の腎細胞癌手術」 腎移植・血管外科研究会報告【3】

森田 研先生 コラム

 2011年7月、北海道大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学分野(代表世話人:野々村克也)の主催で開催された「腎移植・血管外科研究会」の講演を、引き続き同大学院 森田研先生に解説いただきます。

 今回は特別講演 浜松医科大学第一外科 椎谷紀彦先生の「Diseased ArteryのHandling」と、招請講演 山形大学 冨田善彦先生の「腹腔鏡・ロボット手術・分子標的薬時代の腎細胞癌手術」の2つを解説します。

6月24日(金)プログラム 特別講演
Diseased ArteryのHandling【演者:浜松医科大学 第一外科 椎谷紀彦先生】

【解説】
 腎移植手術には、腎臓や尿路(尿管や膀胱などの尿を運ぶシステム)の手術の側面とともに、動脈や静脈の血管吻合(ふんごう)というテクニックが重要な要素となります。椎谷先生は北海道大学出身の心臓血管外科医で、現在浜松医科大学の教授をされており、全身の血管外科の専門家です。血管と血管を繋ぐ手術手技、縫合技術病的血管の吻合操作方法について、多数の実例やビデオ画像を供覧していただきました。

 病的血管とは、長年の動脈硬化によって血管の壁が堅くなり、卵の殻のような堅いカルシウム沈着が覆っている動脈や、血管の内腔が酒カスのような組織でボロボロになってしまう「粥腫病変」、血管の壁が分離して引きちぎれてしまう「解離」などの異常を指します。

 腎移植においても、移植を行う骨盤から足に至る動脈が、このような病的変化により移植手術の血管吻合が困難になる場合を時々経験します。長年の透析を行っている方や高齢の方などは、予めCTなどで血管の状況を調べておくことが必須になりますが、実際は手術の時に対処するしか無い場合もありますので、上記の粥腫(じゃくしゅ)の除去や、カルシウムの壁を持つ動脈にどうやって縫合の針をかけていくか、血管吻合の補強の方法や実際の血管縫合デザインの仕方など、血管外科の基本操作と、多数の病的血管吻合のデータを提示頂き大変勉強になりました。

 後述のシンポジウムでの「血管合併症の検討」と同様、今後こういった困難例の検討から移植手術の技術を高めていくことが重要になってくると考えられます。

6月24日(金)プログラム 招請講演
腹腔鏡・ロボット手術・分子標的薬時代の腎細胞癌手術【山形大学 冨田善彦先生】

【解説】
 わが国において、年々確実に罹患率(その疾患にかかっている患者さんの率)が上昇している、腎細胞癌(腎癌)は、世界的に見ても増加していますが、日本はその中でも比較的多い方に属します。CTなどの画像検査が発達したことで、無症状で偶然発見される割合も高くなっていますが、それだけでは説明できない数の増加があるというデータが山形大学の冨田教授から呈示されました。

 腎癌は昔から、なかなか手術以外の良い治療法が少なく、手術で癌を取りきれるかどうか、が治療の成否の分かれ目でした。 たくさんの種類の分子標的薬(がん細胞の中の酵素に働いてがん細胞の進行を抑える新薬)が実用化されている現在でも、手術で取りきれるか、ということは、患者さんの長期生存には変わらず重要であるという結果が示されました。

 手術の成績の進歩については、腹腔鏡手術やロボット手術の導入で負担を軽くする工夫がなされ、そのこと自体も成績向上に役立っているのですが、それらの方法をどのように分子標的薬と組み合わせるか、ということが治療のポイントになります。10年前ならば手術不能で手遅れであった患者さんが、分子標的薬を使って腎癌を縮小させて、手術が行えたというようなケースも紹介されています。

 それに加えて、腎癌の手術による腎機能の喪失、という側面からも検討が必要であり、腎機能の判定などに用いられる考え方や検査法は、腎移植のドナーの腎機能保護のための検査と共通です。

 最近では、腎癌の存在する腎臓を全て摘出することは適正ではなく、再発の危険性を十分考慮しつつ、直径4センチ以下の腎癌は部分切除が望ましいという考え方が主流となってきました。

 また、腎癌の原発巣のみならず、転移巣に対しても、手術をどのように行うか、できるだけ負担を軽くするようにするにはどうしたら良いかを考慮して、治療選択がなされます。山形大学病院で行われている、医師だけでなく多くの医療スタッフの共同作業で腎癌治療に取り組む方法も紹介され、反響を呼んでいます。

次回に続きます。
解説:北海道大学大学院医学研究科 森田 研 先生

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