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森田 研先生 コラム

今回からシリーズで、2014年9月10日~12日に東京(新宿)にて開催された、第50回日本移植学会総会での主な演題について、北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 講師 森田研先生にご紹介・ご解説いただきます。
第1回目の今回は、移植後の二次発癌についての講演をご解説いただきました。



「移植後二次発癌」臓器横断的シンポジウム12(2014年9月12日)
座長 吉田一成先生(北里大学)、田邉稔先生(東京医科歯科大学)

臓器移植後は、免疫抑制療法により、一般人よりも発癌の危険性がやや増えますが、その頻度や部位、時期や危険因子は、移植する臓器の種類や免疫抑制法、人種などにより異なります。
欧米では移植臓器別や年代別にみた発癌統計が報告されていますが、このたび、日本全国の施設を対象に、移植学会による全国調査が行われました。まず、2001年以降の10年間の全国の移植症例についての調査結果を、長崎大学の永安武先生が報告しました。詳細は今後、移植学会から発表されますが、移植臓器や原疾患の影響により、移植後に多くなる癌と、移植後も一般の場合と発生頻度が変わらない癌に分かれることが判明しました。この調査結果を元に日本人にはどのような癌が移植後二次発癌として多いのか、諸外国と比較することが出来るようになる見込みです。

肝移植後の発癌については、慶応大学の日比泰造先生によれば、欧米の報告では、皮膚癌やリンパ腫、消化器癌、婦人科癌、肺癌が多いとのことです。肝不全の原因疾患の中では、原発性硬化性胆管炎とアルコール性肝硬変の場合に、一般人より発癌が多くなるそうです。

腎移植後の発癌については、前述の調査を待たなければなりませんが、現在判明しているデータとしては、腎移植登録システムの統計資料における腎移植後の死因分析を知ることが出来ます。腎移植患者さんの死因としては感染症と心疾患に次いで癌が第三位となっているため、その内訳を調べることで、ある程度、癌の発生率の予想が出来ます。
自治医科大学の八木澤隆先生がその統計を分析した結果によると、2001年以降の移植後の死因で、癌の中で最も多いのは泌尿器癌(腎癌、尿路上皮癌)で、次いで肝胆膵、消化管、リンパ腫の順でした。リンパ腫では発症年齢が若く、病気の進行スピードが早い傾向があったものの、それ以外の癌は腎移植後の定期的観察により早期発見されることが多いので、治療により完治する場合の方が多いということが判明しています。

このあと、全国の代表的な施設から、各臓器(腎、肝、心、肺)移植後の癌の発生率に関する報告が行われました。その中から、腎移植については藤田保健衛生大学(日下守先生)、東京女子医科大学(岩藤和広先生)、名古屋第二赤十字病院(山本貴行先生)の報告を紹介します。

日下先生は247例の腎移植後患者さんに発生した22種類の悪性疾患について報告しました。発癌部位については、皮膚癌、肺中皮腫、大腸癌、腎盂癌など、欧米の報告とはやや異なる部位が多かったとのことですが、多くは早期発見により治療されており、進行が早く移植腎機能を喪失することになった例は少数でありました。

岩藤先生は797例中に発生した一次発癌102例と、そのうち12例に発生した二次発癌を集計し、二次発癌までには11年の期間が経過しており、一次発癌を早期発見して治療したあとも、様々な部位(皮膚、乳房、舌、上顎洞、胃、膵、腎、子宮体部)に発生する二次発癌への注意が重要であると述べていました。また、発症年齢は55才以上と高齢化も発癌が多くなる要因でありますが、一方で、移植後の癌の発生率は12.8%ということで、一般人口の癌発生率8.6%と比較してやや高くなるものの、倍以上になるわけではないので、しっかり定期検診をすることが必要とのことでした。注意点としては、移植後の発癌頻度が高くなる部位がある(固有腎:自分の腎臓 など)ことと、拒絶反応の治療の後に発癌が多くなる点などを挙げていました。

山本先生は1561例中126例の発癌を分析し、献腎移植後の方が生体腎移植後に比べてやや発癌の割合が多く、部位は腎尿路、消化管、血液関連、が3大発生部位とのことでした。発癌は年齢、透析歴、移植後年数、などに影響され、一部に進行癌が認められるので注意が必要であるということでした。

今後、他臓器の発癌統計とともに我が国の腎移植後の癌発生頻度についてのデータに基づき、定期的にどのような検査を行うかということを検討していくことになります。移植学会が主導する取り組みで今後外来での定期検査のガイドライン化が待たれるところです。


解説・文責:北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 森田研先生

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