トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「腎移植後の海外渡航に向けて」 腎移植に対する患者さんの誤解 その15

原田 浩先生 コラム

前回は、腎移植後のダイエットというテーマで運動に焦点を当ててお話ししました。今回は少し話を代えて、腎移植患者さんが安全に海外へ行くために気を付けるポイントについてお話ししたいと思います。

血液透析をされていた頃や、末期腎不全の時には、透析への通院の問題や、体調の問題、健康への不安感から大手を振って海外旅行に行けなかった方が多いと思います。
腎移植は透析への通院から開放してくれますし、何よりも健康を取り戻せます。よって気軽に海外旅行にも行けそうですが、その際には注意をしていただきたいことが何点かあります。基本的に腎移植後の健康は、免役抑制剤のお陰で成り立っていることを忘れないで下さい。

つまり、
1.免疫抑制剤を服用している皆さんは、一般の方よりも感染に弱いということ
2.免疫抑制剤は海外でも服用が必要であるということ
3.万が一合併症などにかかったら、医療機関の診察、加療が必要となる場合があるということ
です。

                     

これらを踏まえ、まず海外旅行先を決定しましょう。何を第一に決定しますか?まず水が綺麗かどうかということです。水は、生きて行くには絶対必要なものですし、食事の中にも含まれています。薬を飲むためにも必要です。まず、その国の水の状況がどうなっているかを調べましょう。良いウェブサイトがあります。


↑(図1)クリックすると大きい画像が出ます

図1は世界の国々において、水を理由に健康を損なう可能性がどのくらいあるのかを示していると単純理解して良いと思いますが、例えば、わが国やアメリカでは<0.5%であるのに対し、インドでは4-7.9%の危険性があります。水はペットボトルのミネラルウォーターを飲むから良い、と反論される方もいらっしゃるかもしれませんが、食事はどうしますか?加熱をしてあれば良いと考えるかもしれませんが、サラダなどはどうでしょう。サラダの野菜が質の良くない水で洗ってから提供されているのです。また、氷にも気を付けなければなりません。


↑(図2)クリックすると大きい画像が出ます

水の他にも、室内の空気も大切です。図2は室内の空気汚染がどのくらい健康を害するかを示したものです。やはり、南アジアの危険性が目立ちます。



↑(図3)クリックすると大きい画像が出ます

もう少し進んだ話しをしましょう。厚生労働省検疫所のウェブサイトが非常に便利で見やすいサイトです。海外旅行先を決める際には是非参考にしてみてください。
この中から例えばインドを選んでみると、図3のようなページが出てきます。気候の話や、先に述べた水の話、さらには、感染症の話、またトイレ事情まで教えてくれます。



↑(図4)クリックすると大きい画像が出ます

さて、ここで意地でもインドへ行きたいと思っている方、予防接種で何とかならないかと考える事でしょう。このページの先には予防接種の情報も提供されています。例えば、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎などの接種が推奨されています。なお、A型肝炎ワクチンなど、抗体価の獲得が困難で、しかも時間を要するワクチンもあるので、旅行は計画的に行う方がよいでしょう。それに合わせてワクチン接種を済ませるべきです。なお、皆さんくれぐれも、移植後には生ワクチンの接種は原則できないということを頭に入れておいて下さい。
また、予防接種で予防できない病気も沢山あります。例えば、キャンピロバクターやサルモネラによる下痢、マラリア、デング熱などです。感染に不安のある方は、良く渡航予定、希望先の情報を調べておく必要がありそうです。


↑(図5)クリックすると大きい画像が出ます

また、旅先で病気になってしまった場合は、先ほどのサイトで、診療情報まで提供してくれています(図4)。名古屋第二赤十字病院の後藤先生が、移植患者さんが渡航されるときに、接種を推奨されるワクチンを列挙してくれております。ご参照下さい(図5)。


話が長くなりましたが、大まかにまとめると、いわゆる先進国家では、ほぼ日本と同様に生活が出来ますが、これ以外の地域では、渡航前に、是非、主治医、感染症の専門医、旅行医学の専門医にご相談されることをお勧めします。アフリカや、南アジア、中南米などに行かれる場合には特に注意が必要でしょう。くれぐれも、免疫抑制剤を忘れずに。MediPressの田邉先生のコラムもご参照下さい。海外旅行時の服薬の仕方なども詳しく書かれております。


参考文献
1.http://emigration-atlas.net
2.http://www.forth.go.jp/index.html
3.後藤憲彦: トラベル医学. 腎移植感染症マニュアル, 東京医学社,東京,2013, pp213-218

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