トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「思春期の移行支援としての患者教育」第36回日本小児腎不全学会学術集会報告3

森田 研先生 コラム

平成26年10月31日、島根県松江市にて行われた第36回日本小児腎不全学会学術集会で、「小児腎移植患者の成長を考慮した長期生着に向けた取り組み」というシンポジウムが行われました。
相川厚先生(東邦大学腎臓学講座)と大田敏之先生(県立広島病院腎臓小児科)の司会で、小児腎移植の4つのテーマから、成長と長期生着に関する話題を討論しました。
講演に参加する機会を頂きましたので、シンポジウムの前後で得られた話題や印象とともにレポートします。講演の解釈について誤解があるかもしれませんが宜しくご容赦下さい。


「思春期の移行支援としての患者教育」
上村治先生 あいち小児保健医療総合センター 腎臓科 副センター長

小児の腎不全患者が、成長に伴って成人の施設での治療に移る場合に伴う医学的心理学的問題に対応する活動過程を「移行」と言いますが、その際の注意点として、最も重視されるべきテーマは個々の自尊感情(自分が大切な存在だと感じることができるか)をいかに育み、医療者がそれを障害しないように維持発達させていくことにかかっている、ということを学びました。

思春期にさしかかった患児ひとりひとりに対して、暦の年齢とは決して同一ではない実際の精神年齢を正しく把握することや、自立・発達を促す上で理解能力の判定を行い、それに従った対応を考えることが医療者には必要になります。

親や医療従事者が、ただ助け舟を出したり手伝ったりすることが良いのではなく、逆に過保護や過干渉を受けた子供は、「助けがなければ生きていけない」という潜在的な感情を持つようになり、自尊感情に障害が生ずる結果になるそうです。病院や主治医の変更が思春期前後の患者に与える影響もこの自尊感情を左右します。通院先が変わったことで自尊感情が「見捨てられ感」によって障害され、服薬不全に陥るようなケースもあるようです。

自分の健康を守るために必要な情報を集め、自己管理を維持していくための方法を独自で考えることができるよう、思春期を過ぎるまでに指導することが重要です。医療者や家族は患児の自己価値観の表層に関与することができ、小児の治療過程から成人の治療過程において多大な影響を与える可能性があることを認識しました。我々医療従事者が患児をいかに「尊重しているか」が患児に伝わっているかどうかをよく考えなければなりません。

腎不全の治療は決して小児期に完了しないので、「移行医療」は必ず必要になります。この具体的方法について、愛知県で取り組まれている実際の様子が供覧されました。1人の主治医によって左右される自尊感情ではなくチームで対応するようにして、主治医の交代や病院の移動がスムーズに行われることを目指しています。


解説・文責:北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 森田研先生

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