トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  腎癌治療の最前線・献腎移植の最近の動向 腎移植・血管外科研究会報告【6】

森田 研先生 コラム

 2011年7月、北海道大学大学院医学研究科 腎泌尿器外科学分野(代表世話人:野々村克也)の主催で開催された「腎移植・血管外科研究会」の講演を、引き続き同大学院 森田研先生に解説いただきます。
 今回は腎癌治療の最前線と献腎移植の最近の動向を解説します。

6月25日(金)教育セミナー(3)
腎癌治療の最前線【演者:東京女子医科大学 近藤恒徳先生】

【解説】
 腎癌の治療は手術と薬の治療が主体となっています。新しい手術方法や新薬の登場で、治療方針は年々変化しており、手術方法としては腹腔鏡手術やロボット手術などの、負担を軽くする方法が導入され、特に腹腔鏡手術は日本でも盛んに行われるようになってきています。

 手術の長期的な成績を十分考慮することが腎摘出、腎部分切除術などの治療選択には重要です。

 特に、直径が4cm以下の小さな腎癌では、片方の腎を全部摘出してしまうと、術後長期間の経過で慢性腎臓病や患者さんの腎癌とは関係のない生存率に影響するという報告があり、部分切除術の適応が広がって来ています。

 新薬の登場は、ここ数年間の新たな腎癌治療薬剤の開発で、転移性腎癌の治療方針は大きく変化してきています。これまでにも腎癌には免疫療法という薬物治療法がありましたが、新たに出現してきた分子標的薬と呼ばれる新薬は、それに比べると高い効果があります。

 また、転移性腎癌では、元の原発巣である腎臓を摘出することが有効で、腎摘出術を行うにあたって上記の分子標的薬を手術の前や後に追加して行う方法の検討がなされ始めています。

 近藤先生から、これらの新しい取り組みについての最新情報が示されました。

6月25日(金)特別企画
献腎移植の最近の動向【演者:札幌北楡病院 玉置 透先生】

【解説】
 昨年の7月に臓器移植法が改正され、家族の書面による承諾で脳死下臓器提供ができるようになりました。家族による承諾で行われた脳死臓器提供は今年2月時点で36例と増加しているように見えますが、それは今までも行われていた、家族による承諾の心停止下腎提供者の一部が脳死下での提供に移行したと考えられることで、臓器提供数自体は増加していない、という分析であります。  今後、献腎移植を推進するためには、我が国における様々な問題を解決する必要があります。

 それには、救急医療の法的整備、提供施設の体制整備、移植側の施設整備、コーディネーター増員を含む臓器移植斡旋業務の整備、虐待児童への対応を始めとする小児臓器提供のガイドライン整備、臓器提供、移植医療への診療報酬、経済的補助の充実などが挙げられます。

 レシピエントの選定基準は公平な分配を目的として改訂を繰り返していますが、待機年数に比重が置かれているために規則上、16才未満の小児や膵腎同時移植希望者以外は、待機期間が平均15年という長期に渡ってしまうという問題があります。16才以上の若年者に対する移植を考える場合、年齢の再調整や規則の細かな変更が検討されるべきであると玉置先生は述べています。

 北海道では、臓器移植推進のために1999年に設立されたNPO法人「北海道移植医療推進協議会」が中心となり、3つの大学病院、北海道庁、札幌市、移植ネットワーク、腎バンク、アイバンク、骨髄バンク、臍帯血バンク、学会や研究会事務局、マスメディア代表、支援企業が定期的に集まり、臓器移植推進を検討する会議を行っています。昨年度の北海道内で行われた臓器提供による腎移植数は、全国の総数の11.5%にのぼり、全国の中でも移植を受ける機会が多い地域となっています。


次回に続く
解説:北海道大学大学院医学研究科 森田 研 先生

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