トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  腎移植後の高血圧 ~薬以外で血圧を下げる方法~ 移植腎を長くもたせるための合併症予防【2】

平野 一先生 コラム

腎移植後、移植腎を長く持たせるためには、合併症の予防が重要です。大阪医科大学腎泌尿器外科・血液浄化センターの平野先生に、腎移植後の合併症とその予防についてご解説いただきます。第2回目の今回は、腎移植後の高血圧(2)~薬以外で血圧を下げる方法~ です。


~シリーズ 移植腎を長くもたせるための合併症予防(掲載予定内容)~
第1回 腎移植後の高血圧(1)
第2回 腎移植後の高血圧(2) (今回)
第3回 腎移植後の貧血
第4回 腎移植後の脂質異常症
第5回 腎移植後の肥満
第6回 腎移植後の糖尿病
第7回 腎移植後の高尿酸血症




腎移植後の高血圧(2) ~薬以外で血圧を下げる工夫~

今回は、お薬以外で血圧を下げる工夫、特に生活習慣についてのべたいと思います。高血圧は生活習慣により引き起こされることが多く、原因となる生活習慣には以下の5つがあげられます。
1. 食塩の取りすぎ
2. カロリーの取りすぎ
3. アルコールの取りすぎ
4. ストレス過剰
5. 運動不足
今回はそれぞれについてお話ししていきます。


1.食塩の取りすぎ

食塩

まず、血圧を下げるために最も大事なことは塩分制限です。塩分すなわちナトリウムには水分を引きつける作用があります。ナトリウムの過剰摂取は体液過剰を引き起こして血圧上昇につながります。日本人には食塩感受性の高血圧が多いといわれ、高血圧患者の4割程度を占めると推定されています。ご両親が高血圧の方、肥満気味の方、高齢者の方は、食塩感受性が高いので特に注意が必要です。
日本高血圧学会では高血圧の予防、治療のために1日の塩分摂取量は6g以下にすることが推奨されています。また、厚生労働省から出されている日本人の食事摂取基準の2015年版では、高血圧でない健康な方の1日の塩分摂取量の目標値として、成人男性は8g未満、女性は7g未満と定められています。
よく外来で、「塩分には気をつけているつもりなんですが、血圧が下がらなくて・・・」、といったお話をお聞きします。このような場合、よく調べてみると、ご本人の想像以上に摂取してしまっていることが多いようです。
減塩を意識しているのにあまりできていない理由の1つとして、1日の塩分摂取量の80%くらいを、加工食品から取っていることがあります。したがって、加工食品を食べたときには、追加で塩分を取らないなどの注意が必要です。また、外食など塩分の多い食事が続くと、血圧が上昇しやすくなります。
毎日の食事内容を記録しながら、家庭血圧を測定すると、塩分摂取の影響度を知ることができます。また、減塩をするとその味に慣れて、嗜好が変わるといわれています。塩分を控えるための工夫が厚生労働省のホームページにありますので、参考にすると良いでしょう。日ごろから塩分をひかえる食事を心がけ、高血圧の予防に努めましょう。

【塩分を控えるための12ヶ条 (厚生労働省ホームページより)】
1. 薄味に慣れる
2. 漬け物・汁物の量に気をつけて
3. 効果的に塩味を
4. 「かけて食べる」より 「つけて食べる」
5. 酸味を上手に使いましょう
6. 香辛料をふんだんに
7. 香りを利用して
8. 香ばしさも味方です
9. 油の味を利用して
10. 酒の肴に注意
11. 練り製品・加工食品には気をつけて
12. 食べすぎないように


2.カロリーの取りすぎ

食べ過ぎ

次に、カロリー制限についてですが、やはりバランスのよい食事は大事です。移植後は味覚が改善され、またステロイドの影響もあり食欲が増進します。しかし、 食欲のままに食べているとあっという間に肥満になります。移植腎にとっては、体重が重いほど排泄しなければいけない老廃物が多くなるので負担が増え、移植 腎の寿命を短くしてしまいます。摂取カロリーについては、主治医医の先生と良く相談されることをおすすめします。


  

3. アルコールのとりすぎ

飲み過ぎ

アルコールの適正な摂取についてですが、飲酒が血圧を上げることも、よく知られています。ただし、節酒をすると1~2週間で血圧が下がることもわかっているので、飲みすぎないことが大切です。一般的に、日本酒にして1合くらいが適量とされています。適度な飲酒であれば移植腎に悪影響はありません。ただし、免疫抑制剤と一緒に内服するのはすすめられません。


4.ストレス過剰

ストレスが身体に悪い影響を与えることは言うまでもないのですが、血圧上昇が起こることも医学的に証明されています。ストレスを受けると交感神経が刺激され、アドレナリンやノルアドレナリンといった興奮物質であるホルモンが大量に放出されます。これらの働きで血管が収縮し、血圧が上昇します。具体的には心拍数が増え、心臓が1回の拍動で送り出す拍出量が増えます。それと反対に血管では収縮が起こります。つまり、全身をめぐる血液量が増え、血管の抵抗が増加するわけですから、当然血圧は上がるというわけです。
心理的なストレスが増えると、健康に関係する生活習慣にも影響してきます。喫煙量が増えたり、食べ過ぎになったり、アルコールを飲む量が増えたり、体を動かすのがおっくうになったりするのが、その例です。
ストレスを上手に解消しましょう。自分で色々と工夫して、少しでもストレスを解消できる方法を積極的に取り入れていきましょう。


5.運動不足について

運動

運動不足を解決するには、具体的にどうすればよいでしょうか。1週間に1回まとめて長い時間運動するより、1日30分ぐらいで、続けることが重要といわれています。続けるためには、運動の強度も強すぎないことが重要です。
息が軽くはずむぐらいの、にこにこペースの運動がよいとされています。強度が強い運動は、運動中の血圧が余計に上がるうえ、体にもつらいので長続きしにくいです。
例えば、1回10分の運動を1日3回でも大丈夫なのですが、大切なことは、やめてしまうと、1ヶ月で元に戻るということです。
最も大切なことは、習慣づけるということです。日頃の心がけを大切にしましょう。


最後に

高血圧は「生活習慣病」といわれていますが、ある程度理解していただけたかと思います。高血圧の予防で最も大切なことは血圧を上げないような生活習慣を身につけることです。ご自身だけではなく、ご家族にも協力してもらい、高血圧を予防する生活習慣をはじめましょう!


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