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森田 研先生 コラム

 10月4日~6日に仙台にて開催された、「第47回 日本移植学会総会」にて、コロンビア大学の加藤友朗先生がご講演された内容を、北海道大学の森田研先生にご紹介・ご説明頂きます。(文責:森田研先生)

「米国における移植医療の現状と日本への提言」【コロンビア大学 加藤友朗先生】

【講演内容解説】

 コロンビア大学で多臓器移植に関わっている日本人移植外科医の加藤友朗先生による講演でした。

2008年にイスタンブール宣言が国際会議で発表されて3年が経過しました。その目的は「非倫理的臓器移植の防止」であり、臓器不全の予防、対策と世界各地域での臓器供給の自立、自給自足をめざすものであります。WHOが倫理的に問題としている臓器売買が行われているとされる地域のリスト(中国、インド、フィリピン、コロンビア、パキスタン、ブラジル、エジプト、イラン、モルドバ、南アフリカ)が紹介されました。国境を越えた臓器移植では、臓器を売買することの倫理的問題点、貧困な人たちから裕福な人たちへの臓器移植、自国民の移植機会が減ることが問題点です。WHOはこれを是正するために、各国の臓器自給自足体制を義務づけました。その影響もあり、日本で臓器移植法案が改正された経緯があります。

 先進国の文化レベルと腎移植数の相関を表したグラフを見ると、先進諸国ほど腎移植数は多いのですが、先進国なのに唯一大きく外れているのが日本です。この状況は、法案改正後も変わっていません。これは政府だけではなく、国民各自が考えるべきことであり、臓器移植を是認しないのであれば外国へ臓器を求めるべきではないと考えられます。日本で臓器提供が進まない背景として、脳死の概念の受け入れが進んでいないこと、慢性脳死の問題、終末期医療の問題、蘇生治療拒否の本人、家族の生前意思表明、などがあります。世界各国に目を向けると、臓器提供が多い国々でも、いまだに移植臓器は充足されていません。

米国での脳死ドナー増加策(2003〜)2007年から頭打ちになってきています。

日本での脳死ドナー増加(2010〜)心停止ドナーからの単なる移行で脳死下提供が増加している現状

韓国での脳死ドナー増加(2008〜)日本よりも脳死法制化は遅かったものの、既に欧米レベルに近づく状況

日本人の移植医療に対する意識は、この国際情勢の中でどうなのでしょうか?

 「臓器不全になったら移植を受けたいですか?自分の子供の場合は?」→殆どYes

 「自分や子供が脳死ドナーになったら臓器提供をしますか?」→殆どNo

 この矛盾が問題です。移植は受けたいけれど、臓器提供はしたくない、ということでは日本は成り立たないのです。勿論、移植を受けたくない権利、提供したくない権利は尊重されるべきですが、臓器移植を推進するためには、提供しても良いと言う方からの臓器提供を国内で増加させる必要があります。将来もし臓器不全になったら移植医療を受けたいと考える人には、脳死ドナー登録を義務化する、などの対策が必要かもしれません。 医学教育、病院への働きかけ(実はこれが遅れている)ドナーアクションプログラムへの抵抗をなくす、などの社会的方法も検討されるべきでしょう。また、1999年以降に行われた日本における脳死臓器移植者が、ドナーへの感謝の気持ちをメディアで伝えることも国民の意識を変える上でマスコミが本来取り上げるべき方向性と考えられます。マスメデイア教育は継続性が問題で、マスメディアの人員が交代すると、移植に関する知識もリセットされてしまうという日本の悪しき傾向があります。その他、我が国の移植医療への意識を改革するには、宗教界との対話、救急医療との協調(End of Life Care)、グリーフケア(近しい人を亡くした人がその悲嘆を乗り越えようとする心の努力を支援する取組)などの推進が必要です。日本が世界第一の医療品質を誇るとされる透析医療の従事者が移植医療への関わりを推進することも考えるべきです。

 医療行政のやるべきこと(ドナー病院の負担軽減、臓器移植推進政策の具体的な病院組織への現場介入、移植医療への補助など)は国の義務であると考えられます。心臓移植のために海外渡航を行うのに募金だけに任せておいて良いのか?という意見もあります。国が渡航費の補助をするようになれば国内での臓器提供を推進する原動力になるのでは?

 今回は、国外から我が国の様子を見る立場で、コロンビア大学の加藤先生より非常に重要なメッセージを多く頂きました。


 解説・文責:北海道大学大学院医学研究科 森田 研 先生

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