トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  腎移植後の妊娠・出産 【1】 ~安全に妊娠・出産するために知っておいてほしいこと~

市丸 直嗣先生 コラム

腎移植後女性の妊娠

血液透析と比較した場合の、腎移植の最も大きな長所は、狭心症や脳卒中などの合併症が少なく、生命予後が改善することです。また他にも、腎不全のために生じる様々な合併症が改善します。
透析中の女性は、ホルモンのバランスが大きく崩れており、妊娠しにくいことが知られています。また、妊娠できた場合でも、ハイリスクであり透析管理に難渋します。
それに対し、腎移植後には腎不全に伴って崩れていたホルモンバランスが改善するため、女性は月経周期が改善することが多く、透析中と比較して妊娠・出産の希望をかなえやすくなります。挙児希望の患者さんが腎移植後も月経不順の場合には、産婦人科への紹介と診察が必要です。

多くの腎移植施設では、経過良好な腎移植後女性に関しては計画的な妊娠・出産を許可しています。逆に計画外の妊娠をしないように、それまでは十分な避妊の指導を行います。
個々の患者さんの病状により異なりますが、例えば腎移植後1年経過していること、拒絶反応がなく腎機能低下や蛋白尿がないこと、血清クレアチニン値ができれば1.5mg/dl未満、高くとも2.0mg/dl未満であること、血圧が良好に管理できていることなどが妊娠を許可する条件として挙げられます。リスクに対する覚悟や挙児希望の程度が患者さんによって大きく異なるため、詳細は母体を管理している移植の先生に相談してみてください。

妊娠を許可する条件の例


妊娠中に使用できない薬剤は、妊娠を許可する前に中止や変更を行います。妊娠希望の腎移植後女性の免疫抑制薬については、ミコフェノール酸モフェチルやエベロリムスなどは催奇形性が高いため、変更や中止を行います。
完全に安全であるとは言えませんが、経験的にシクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬、アザチオプリン、少量のステロイド剤は、比較的安全に使用できることが知られています。
降圧薬のうち、アンジオテンシン変換酵素阻害薬や、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などは中止や変更が必要です。降圧薬の中では、カルシウム拮抗薬が比較的安全に使用できることが知られています。
脂質異常症や高尿酸血症の治療薬、抗血小板薬や抗凝固薬も、妊娠中に使用できない薬剤があります。

妊娠前に変更が望ましい代表的な薬剤


腎移植後女性の妊娠・出産に際しては、移植医と産婦人科医による専門的な管理が必要です。主治医の先生と相談して、計画的な妊娠を行いましょう。


腎移植後女性の不妊治療

子供を希望する一般の夫婦では、2割弱が不妊のカップルです。不妊の原因は男性側あるいは女性側にありますが、その割合はほぼ半分ずつです。妊娠を許可した腎移植後女性が不妊の場合にも、不妊治療を受けることができます。一般女性では、1年たっても妊娠しなければ産婦人科を受診することが多いです。腎移植後女性では、ホルモンや排卵について専門的な診察が必要なため、月経周期の改善が見られない場合などは、腎移植後1年を待たずに早期から積極的に産婦人科受診を勧めています。体外受精や顕微授精なども含め、不妊治療の制約はほとんどありません。
なお、腎移植医療では医療費の自己負担が少ないのに対して、不妊治療には保険外診療も含まれるため自己負担額が多くなることがあります。


腎移植後の妊娠・出産 【2】 腎移植後女性の出産


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