トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「よりよい移植診療 内科医が参画するために」 第32回腎移植・血管外科研究会報告【1】

森田 研先生 コラム

総合討論の様子

平成28年5月下旬に開催された第32回腎移植・血管外科研究会における講演をレポートいたします。 研究会は姫路市で行われ、兵庫医科大学の野島道生先生が当番世話人で主催されました。 レポートは個人的な解釈で記載しておりますので、発表者が意図した内容と異なる場合はご容赦いただきますようお願いいたします。


 第32回腎移植・血管外科研究会 シンポジウム1
「よりよい移植診療 内科医が参画するために」

研究会初日の朝9時から行われた、シンポジウム1「よりよい移植診療 内科医が参画するために」では、神戸大学の西慎一先生(腎臓内科)、大阪市立大学の仲谷達也先生(泌尿器科)の司会で、腎移植診療に取り組む4名の内科医(腎臓内科医)の先生方が講演を行い、活発な論議が行われました。
このシンポジウムの紹介として、プログラムには「移植外科医、泌尿器科医に対する要望を、腹を割って、普段は言いにくいことも含めて意見交換をしよう」という野島先生(当番世話人)からのメッセージが書かれていましたので、大変楽しみに聴講しました。



「検尿異常から透析・移植まで対処可能な腎臓内科を目指して ‐腎移植患者170名を受け入れた経験から‐」
 九州大学病院 升谷耕介先生(腎・高血圧・脳血管内科)

九州大学病院では2010年から腎移植件数が急増したため、腎移植前後の患者さんの管理を、大学病院だけでなく、福岡市内の病院と協力して腎臓内科医が行っています。現在でも週1例のペースで腎移植が行われているそうですが、通常は腎移植後の入院治療は移植外科、泌尿器科が行う施設が多い中、升谷先生らは腎臓内科の病棟に腎移植患者さんを受け入れて、多くの研修医とともに診察にあたっておられます。
腎移植後の外来で行う業務は、定期的な腎生検、がん検診、妊娠出産教育に加え、最近では腎移植後の拒絶反応の治療も行っているということで、腎移植医療における腎臓内科医の活躍ぶりを臨場感あふれるスライドで示されました。
腎臓内科医が、市中の病院で移植後の患者さんの管理を行うことも増えていますが、腎臓内科医師で腎移植専門医の資格を取っている人数はまだまだ少ないため、これを後輩の先生方に広めていきたいとお話されていました。




「いつ、どこで、何ができるのか -自身の経験を通して-」
 兵庫県立西宮病院 米本佐代子先生(腎疾患総合医療センター)

兵庫県立西宮病院では、1973年に第1例目の腎移植が行われ、現在までに580人以上の方が腎移植を受けられています。
腎臓内科は2006年に開設され、移植医療にも携わっておられます。「移植後の時間を患者さんと共にすること」を目標に挙げ、術前検査や入院病棟で、移植前から患者さんとコミュニケーションを図ることで、移植後の外来においても患者さんとの信頼関係を築けるように心がけているそうです。
腎臓内科医が腎移植後の患者さんに貢献できる点としては、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、貧血、骨粗しょう症などの診療があり、内科医が活躍すべき場が多くあります。これまで、多くの施設の腎臓内科が取り組んできたものの、なかなか進まなかった腎臓内科医の移植医療への参加がスムーズにできるよう、さまざまな工夫をされていました。その1つとして、腎臓内科医が、腎移植前から移植チームの一員として関わることで、移植後も長期の合併症管理に中心的に関わっていくことができる点をあげていらっしゃいました。また、ドナーの腎機能管理についても腎臓内科医ができることは多いと力説されておられました。




「移植医療をもっと身近にするために当院が取り組んでいること」
 熊本赤十字病院 豊田麻理子先生(腎臓内科)

熊本赤十字病院では、1989年に、当時の内科医の提案で、外科医と二人三脚で腎移植が始まったそうです。現在は年間30例前後の腎移植を行うようになったそうですが、そのシステムには特色があり、ドナーの手術は、内視鏡手術を得意とする泌尿器科と産婦人科の医師が鏡視下手術チームを組んで担当されているそうです。また、これまで、移植チームのスタッフが、国内トップレベルの移植センターへ臨床経験を学ぶために交代で赴き、外科医と内科医が協力して腎移植を進めてこられたとのことです。
他の講演者同様、腎臓内科医としての仕事に加えて、腹膜透析、血液透析、腎移植、の3つの腎代替療法を全て行う腎臓専門医を目指しているということでした。全国的に腎臓内科医が透析医療に関わることは一般的ではありますが、腎移植の臨床に参加する腎臓内科医はまだ一部と言えます。
腎臓内科医が腎移植後の管理を十分行えるかどうかの分岐点は、腎移植後の急性拒絶反応を正しく診療、治療できるか、にかかっているそうです。
大変熱意のこもった講演で、最後にその原動力を生かした、このたびの熊本地震からの復興についても語っていただきました。「腎移植は、腎代替療法の中で災害に強い医療である」との言葉が印象的でした。




「当院腎移植における腎臓内科の関わり -日々の診療で疑問や課題—」
 兵庫医科大学病院 水崎浩輔先生(腎透析内科)

兵庫医科大学病院では、1983年から年間15~20例の腎移植を行っており、腎臓内科医はその術前検査や腎不全管理に携わっておられます。
初診の患者さんは慢性腎臓病のステージ5、つまり腎機能がほとんど枯渇してきていて早期に腎代替療法が必要な段階で受診される方が多いそうです。このような場合における急激な腎機能悪化の原因となる要素について検討されていました。それによると、移植前のさまざまな全身状態悪化につながる要因として、副甲状腺ホルモン異常(高値)が挙げられ、これを防止するには移植前のミネラル骨代謝疾患の管理が不可欠であり、腎臓内科医の関与が重要と述べておられました。腎機能が低下すると、カルシウムの腸管吸収が落ちてくるために、骨に蓄えられていたカルシウムが動員されて放出されるという現象が起こります。この現象の指標として、腎機能障害の早期から副甲状腺ホルモン値をモニターすることが重要だそうです。




総合討論

最後に司会の先生より様々な角度で講演者に意見交換が促され、数多くの興味深いお話を聞くことができました。
腎臓内科医と移植医の良好なコミュニケーションには、「タメぐち」での会話、腎移植手術への参加、移植医によるバックアップ、移植医側からの腎臓内科カンファレンスへの参加、移植後の講演会など移植成績のフィードバックを内科医、紹介元の病院に対して行うこと、などが必要ということでした。
内科医が移植医療の経験を積むことは重要ですが、そのためには、移植外科医が内科医に、ある程度患者さんの治療を任せることも重要で、将来の移植医療を担う若い研修医に経験の場を与えていくことが、専門医を増やすためにも必要だと論議されていました。
最後に司会の西先生からは、日本腎臓学会や日本移植学会が今後ジョイントプログラムを検討していく必要性と、その核となる腎臓内科医の育成を呼びかけました。
また、仲谷先生からは、「腎臓内科医が、移植外科医と透析医の架け橋となって、腎移植医療を推進していきましょう」とコメントされて、シンポジウムを締めくくられました。


お気に入り記事に登録

森田 研先生 過去のコラム

この記事を見た人が読んでいるのは