腎移植後のがんのスクリーニング

腎移植患者さんにおいて、最近は高齢化が進み、免疫抑制薬を長期に服用することもあり、がんの罹患が一般人と比較して高頻度にみられます。ただしスクリーニング検査で早期発見・治療できた場合は、がんのない腎移植患者さんとほぼ同等の余命が期待できます。このため、がんのスクリーニングが行われます。

定期スクリーニングの対象となる腎移植後のがんには、一般人にも多い胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんのいわゆる5大がんと、腎移植患者さんに特に多い皮膚がん、腎がん、ウイルス感染と関連するリンパ腫などがあります。
5大がんに関しては一般人も検診を受けますが、腎移植患者さんも同様に検診が望まれます。腎移植患者さんは、他のがんに関してもさらに追加の検査が必要です。
具体的には、腹部の超音波やCTなどの画像検査、採血による腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, AFP, PSAなど)検査が行われています。子宮頸がんに加えて、子宮体がんの検査も望ましいです。また、腎移植前にEBウイルス抗体陰性の患者さんで腎移植を契機にEBウイルスに感染したと考えられる場合などは、各種採血検査が行われます。

定期スクリーニング受診率は、検査の種類によって大きく異なります。
当施設では、超音波やCTなどの画像検査と採血検査は、腎移植患者さんにとって抵抗感がなく、検査で得られる情報量も多いためほとんどの患者さんが毎年必ず受けています。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や便潜血検査などはその有用性は理解していただいていますが、やや抵抗があるためか受診率は少し下がります。

最も受診率が低いのは、乳がんと子宮頸がんおよび子宮体がんのスクリーニングです。腎移植を受けるまでほとんど婦人科検査を受けていなかった患者さんも多く、抵抗感が強いためかもしれません。検査を受けていただくようにご説明し、婦人科などへ紹介して、腎移植外来受診時に検査の受診の有無とその結果を確認しています。

腎移植患者さんが進行がんとなった場合、残念ながらその治療が困難なケースがあります。がんの頻度が高いことは、腎移植の数少ないデメリットの1つですが、その対応は前稿に挙げた予防策と本稿で紹介した地道なスクリーニングです。がんを早期発見・治療できた腎移植患者さんの余命はがんのない腎移植患者さんとほとんどかわらないため、積極的なスクリーニングを行っています。

まとめ