腎移植後の外来ではさまざまな検査が行われます。腎移植後に検査値をみる上で知っておくべきことや、移植内科医がどのようなポイントをみているのかについて、名古屋第二赤十字病院の後藤憲彦先生にシリーズで解説していただきます。
第2回目はeGFRについてです。

①eGFRとは

GFRとは糸球体濾過量のことで、腎臓の中にある糸球体が、1分間にどれくらい血液をろ過できるかを示す値です。
GFRを測定するには、クリアランス検査という検査が必要です。クリアランス検査では、イヌリンやクレアチニンという物質が、ある一定時間の尿中にどのくらい排泄され、どのくらい血液中に残っているかを測定することにより、ろ過機能を調べます。
現在、最も正確にGFRを反映する検査法は、イヌリンクリアランス(Cin)ですが、イヌリンを2時間かけて点滴静注することや、測定法が煩雑であることからほとんど行われません。
そのため、イヌリンクリアランスより簡単なクレアチニンクリアランスが利用されていますが、クレアチニンクリアランスも筋肉量の影響を受けることや、24時間の蓄尿が必要なことから、血清クレアチニン値、年齢、性別から、より簡単にGFRを推定する、eGFR(推算糸球体濾過値estimated glomerular filtration rate)計算式が作成されました。eGFRは多くの医療施設で腎機能を表す値として使用されています。

②eGFRと腎機能の程度

eGFR計算式 194×血清Cr -1.094×年齢 -0.287 (女性の場合は×0.739)
MediPressの各ページの右下には、eGFRの計算機がありますので、ご自身の血清クレアチニン値を確認の上、計算してみてください。ただし、18歳以上に適用され、小児の腎機能評価には用いません。

【eGFRと腎機能の程度】

eGFR

③腎移植後にeGFR値をみる上でのポイント

eGFRは血清クレアチニン値と年齢、性別から算出されるため、ステロイドの長期内服により筋肉量が減少している時には、血清クレアチニンが低値となり腎機能が過大評価されます。また体表面積が1.73m²の標準的な体型(170cm、63kg)に補正した場合のGFR(mL/分/1.73m²)が算出されるため、体格の小さな患者さんでは腎機能が過大評価されます。
腎移植後は肥満気味になり、腎不全から脱却するために筋肉量が増加するのが一般的です。肥満や、筋肉量が極端に多いときには腎機能が過小評価されるため、体表面積で補正する必要があります。

体表面積=(体重kg)0.425×(身長cm)0.725×7184×10-6
体表面積で修正されたGFR(mL/分)は、eGFR(mL/分/1.73m²)×体表面積÷1.73となります。

eGFRはあくまで推定値ですので、より正確な検査が必要な場合は、イヌリンクリアランスを実施しますが、筋肉として持っているクレアチニンを代用するeGFRに比べて、人が持っていないイヌリンを使用するイヌリンクリアランスは頻回に行うことはできません。eGFRの限界を把握しつつ、クレアチニン測定から計算されるeGFRで外来フォローしていくのが現実的です。