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後藤 憲彦先生 コラム

腎移植後の外来ではさまざまな検査が行われます。腎移植後に検査値をみる上で知っておくべきことや、移植内科医がどのようなポイントをみているのかについて、名古屋第二赤十字病院の後藤憲彦先生にシリーズで解説していただきます。
第6回目は尿沈渣についてです。


①尿沈渣とは

尿沈渣(にょうちんさ)とは、尿を遠心分離器にかけたときに沈殿してくる、赤血球や白血球、細胞、結晶(尿酸塩、リン酸塩など)などの固形成分のことをいいます。尿沈渣の有無や数の増加などを調べ、腎臓などにみられる異常の診断を行います。通常、尿蛋白や尿糖、尿潜血などの定性検査で陽性(+)の場合や、診察で腎・泌尿器疾患が疑われる場合に行われます。
病的な結晶としては、尿路結石や肝障害、閉そく性黄疸、ネフローゼ症候群などがあります。

顕微鏡

また、尿沈渣で封入体細胞※1が認められた場合は、尿細胞診※2を行い、特徴的な封入体細胞(デコイ細胞)の有無を確認します。
※1 封入体細胞:ウイルスに感染した細胞内に認められる特徴的な細胞構造のこと。封入体細胞は核内封入体細胞と細胞質内封入体細胞に分類される。核内封入体細胞はサイトメガロウイルスやヘルペスウイルスなどのDNAウイルスに感染した場合に認められる。細胞質内封入体細胞は、麻疹、風疹、インフルエンザウイルスなどのRNAウイルスに感染した場合に認められる。
※2 尿細胞診:尿中の細胞を鏡検し、悪性の細胞の有無を調べる検査。


②尿沈渣の基準範囲(*1) 基準範囲は施設によって異なる場合があります。

基準範囲


③腎移植後に尿沈渣をみる上でのポイント

尿中白血球定性が測定できる施設もあるかと思います。簡単で結果が早く出ますが、感度はあまり高くありません。沈査にて尿中白血球を確認する必要があります。
沈査にて細菌を認めることも多いですが、細菌を認めるだけでは感染症ではありません。腎移植後の免疫抑制療法では白血球の機能は保たれるため、感染症になった時には感染部位に白血球が集まるはずです。細菌と一緒に尿中白血球を認めた時には、尿路感染の治療を始めます。
移植施設の検査室のレベルにもよりますが、沈査にて尿封入体を認めることがあります。核内封入体を認めた時には尿細胞診を追加します。尿細胞診にてデコイ細胞が見つかれば、ウイルス感染症が疑われます。アデノウイルス、サイトメガロウイルスなどでも移植腎からデコイ細胞が排出されますが、最も注意しなければいけないのがBKウイルスです。デコイ細胞を認めた時には、血中のBKウイルスの遺伝子量をチェックします。BKウイルス腎症は移植腎を失う可能性がある感染症です。まずは免疫抑制薬を減量します。現段階でBKウイルスの遺伝子量の検査は保険適応になっていません。尿沈査から尿封入体を認めたら注意深くフォローすることが重要です。クレアチニンもゆっくり上昇することが特徴的です。クレアチニンが上昇して、血中にBKウイルスを認めるときには腎生検を予定します。


*1 医学情報科学研究所編 病気がみえるVol.8 腎・泌尿器,p.12,2014




腎移植後の管理で重要な検査値解説 掲載予定内容

【1】クレアチニン(CRE)

【2】eGFR

【3】尿酸(UA)

【4】尿潜血

【5】尿蛋白

【6】尿沈渣(今回)

【7】白血球数(WBC)

【8】カリウム(K)

【9】カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)

【10】中性脂肪(TG)

【11】LDL‐コレステロール(LDL‐C)、HDL‐コレステロール(HDL‐C)

【12】ヘモグロビン(Hb)

【13】空腹時血糖

【14】HbA1c

【15】75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)


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