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森田 研先生 コラム

2017年4月21日から鹿児島市で4日間にわたり開催された、第105回日本泌尿器科学会総会の腎移植に関連するプログラムの内容についてレポートいたします。


第105回 日本泌尿器科学会総会報告 Emerging Urology企画05
「腎移植生着 20年のためにできること」
司会:藤田保健衛生大学 星長清隆先生、自治医科大学 八木澤隆先生


腎移植後の生着期間が長くなってきている中で、さらに長期の生着を目指すためにはどうしたら良いか、ということについて、腎移植の認定医講習プログラムを兼ねて行われたセッションでした。やや専門的な内容を含んでおりますので、難しい用語もありますがご了承下さい。


「腎移植後の悪性腫瘍の発生とマネジメント」
新潟大学 斎藤和英先生

腎移植後の悪性腫瘍の原因については、ドナーからの持ち込み、レシピエントの潜在腫瘍、移植後の新たな発がん、に分類され、介入できる原因と介入できない原因があります。
一般人口と比較して移植後に多い発がんとしては、リンパ腫、腎がん、皮膚がん、肉腫があり、日本の多施設臨床研究では、皮膚がん、腎がん、リンパ腫、肝がん、大腸がん、子宮がん、乳がんが多いそうです。東京女子医科大学や大阪大学の調査によると、世界との比較において日本で特徴的なことは、皮膚がんが多い点と、自己腎がんが多いということで、自己腎がんが多いのは、透析歴が長いことがその原因と考えられています。
がんの対策を考える上で、発がんの背景として、ドナー由来、免疫抑制剤による影響のほかに、ウイルス感染などにも考慮する必要があります。
腎移植を受ける際に、ドナーのがん既往やレシピエントのがん既往がある場合は、治療後の期間やがんの種類ごとの推奨待機期間がさまざまな教科書で示されていますが、細部は異なり、かつ、日本のデータが不足しているのが現状ということでした。
進行すると悪性リンパ腫に移行してしまう移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は移植後の発症時期が数ヶ月から十数年と幅広く、リンパ球、白血球の異常や持続する貧血等に注意が必要です。

※移植後リンパ増殖性疾患(PTLD):移植後の免疫抑制状態を背景に、リンパ系細胞が異常増殖して発生します。B細胞性のPTLDでは80%以上にEBウイルスの関与が認められます。PTLDは、伝染性単核球症(主にEBウイルスの初感染によって生じる急性感染症で、発熱、倦怠感、扁桃炎、リンパ節の腫れ、咽頭痛などの症状が出る)様の反応性病変から、明らかな悪性リンパ腫までを含んだ概念です。
移植後は定期的な検査でウイルスの増殖程度を測定しておくことが重要で、早期診断することにより、病気を早い段階で防ぐことが可能となります。


「慢性抗体関連拒絶反応について」
東京女子医科大学 石田英樹先生

移植腎機能喪失の最大の要因とされる慢性抗体関連拒絶反応は、移植後にB細胞とT細胞の働きにより2~3年で15~20%に形成されるドナー特異的抗体が原因とされています。最初から抗体がある場合よりも、移植後に新たに出てくる抗体が起こす場合がさらに予後が悪いそうです。蛋白尿が増加してくることが最初のサインですが、その直前ぐらいから血液中にはすでに抗体形成が認められます。
慢性抗体関連拒絶反応が起こりやすい危険因子としては白血球抗原がドナーとレシピエントで異なっている場合のHLA-DR※1ミスマッチ、以前に移植腎摘出した場合、ウイルス・細菌感染、服薬不足による免疫抑制不足、副作用や何らかの原因による免疫抑制剤の中止や早期の減量、細胞性拒絶反応※2による活性化、などがあります。
治療は大量ガンマグロブリン療法とリツキシマブ(B細胞治療薬)が初期には有効とされていますが、全体としては有効な治療法は未だ確立されていません。免疫抑制を弱くし過ぎないことや、最初にリツキシマブを使用する、等で起こらないようにすることが肝心とのことでした。

※1 HLA-DR:HLAには、クラスⅠのA、B、CとクラスⅡのDP、DQ、DRなどいくつかの遺伝子座があり、それぞれに何十種類もの抗原があるので、その組み合わせはとてつもなく多くなります。移植の際には、HLAのA、BとDR(最近はDQも)を調べ、ドナーとレシピエントの間の適合度を検査します。
MediPress腎移植事典:基本編「HLAとは何ですか?」も合わせてご確認ください。

※2 細胞性拒絶反応:リンパ球などの免疫担当細胞が原因の拒絶反応のこと。抗体が原因の拒絶反応は液性拒絶反応(抗体関連型拒絶反応)という。


「長期移植腎生着・患者生存を目的とした免疫抑制療法の課題」
名古屋第二赤十字病院 渡井至彦先生

近年の医学の進歩により、長期にわたる移植腎予後はかなり達成されてきていますが、さらに改善するためには移植腎が機能した状態での生存率を改善する必要があります。そのため、今後は腎移植患者さんの生命予後に直接影響する心血管疾患、悪性腫瘍、感染症を制御していく必要があります。
心血管疾患や悪性腫瘍、感染症は加齢とともに多くなります。講演では、サイトメガロウイルス感染症のリスクが高い高齢レシピエントに、適切な免疫抑制療法を選択する方法を提案されていました。
免疫抑制に関しては、カルシニューリン阻害剤による腎毒性、BKウイルスやサイトメガロウイルス感染、慢性抗体関連拒絶反応の管理が重要になってきます。ここで難しいのは、免疫抑制剤の投与量を下げ過ぎないようにする必要があることです。
そのために考えられる今後の方法として、欧米で使用されているベラタセプト(T細胞活性化阻害薬)を使って移植抗原のリンパ球による認識をブロックすることにより、現状の免疫抑制剤の副作用を減らす可能性について言及されていました。


「腎移植におけるウイルス感染症」
市立札幌病院 原田浩先生

代表的なヒト感染ウイルスであるヘルペスウイルスα、β、γ(単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス)についての腎移植後の注意点について解説されました。
帯状疱疹ウイルスは全身性播種性(全身に広がること)病変に悪化した場合に注意が必要で、ひどくなると生命に危険を及ぼす場合があります。従って、時に思い切った免疫抑制剤の減量が必要です。
EBウイルスは発がんに結びつくウイルスで、移植後リンパ増殖性疾患や悪性リンパ種の原因になることがあります。
ポリオーマウイルスであるBKウイルス、JCウイルスは移植腎に感染を起こし腎機能悪化の原因となります。
治療法は原則的に免疫抑制剤を弱めることですが、欧米で用いられているシドフォビル(サイトメガロウイルス感染症治療薬)の有効性についても言及されており、会場から様々な質問が挙がっていました。


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