トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「腎移植の準備(レシピエント編)」 腎移植に対する患者さんの誤解その21

原田 浩先生 コラム

皆さん、夏の盛り、夏バテなどされておりませんか。札幌は7月には最高気温摂氏30度超えの日が続きましたが、8月に入り、いつも通りの比較的涼しい北海道の夏となっています。
さて、本題ですが、最近移植を希望されて来院される方が激増しております。その中には当サイトMediPressをご覧になって勉強されている方も数多くいらっしゃいます。中には、折角来院されても、様々な理由でまだまだ移植にはほど遠い方が割といらっしゃいます。出来れば移植施設に受診されてから短期間で腎移植が実現すれば良いのですが、実は移植までにいろいろと解決すべき問題を持ったままの方が多いのです。
今回はその内容をご紹介したいと思います。レシピエントとドナーでは微妙に異なるので、レシピエント編とドナー編に分けました。今回はレシピエント編です。


1.受診のタイミング

以前のコラムで、透析を経ない先行的腎移植(PEKT)を希望される場合には、シャントを作るタイミングで移植施設に受診してください、と紹介しました(腎移植に対する患者さんの誤解その6 参照)。
もう少し具体的な数字を言いますと、遅くともGFR 20mL/min/1.73m2を目安に受診すべきです。もちろんそれより早くても問題はありません。GFR 10mL/min/1.73m2以下では、さすがに遅く、施設によっては「PEKTは無理です。まず透析導入しましょう。」と言われることも多いと思います。
PEKTを多く行っている施設こそ、移植を多く行っている施設であり、実は移植のスケジュールは数カ月先まで埋まっているということが例外ではありません。当科においても例外ではありません。でも遅れても、是非相談してみてください。叶うことも大いにあります。


2.体重コントロール

ドナーガイドラインのような細かいガイドラインがあるわけではありませんが、腎移植とは1つの腎臓を頂くことです。せいぜい35~60mL/min/1.73m2程度のGFRを獲得するにすぎません。
太り過ぎの影響で2つの腎臓がだめになってしまった貴方、当然そのままでは同様の結果が移植後に現れることになります。腎-体格のミスマッチ、腎臓の過負荷現象などと言われています。糖尿病の関与もあります。
よって、そのような方の場合、痩せておくことが肝要です。ダイエットには時間がかかります。安全なダイエットは月に体重の5%程度までと言われています。


3.健康チェック

保存期の腎臓病外来や、透析の際に、貧血のチェック、腎機能や肝機能の状態などは定期的に調べられていると思いますが、がん検診となると意外と受けていない方も多いかと思います。腎移植が可能となる原則は「悪性腫瘍がないこと、活動性肝炎がないこと、全身感染症がないこと」です(表1)(*1)

腎移植ガイドライン

がん検診は意外と時間がかかります。そして、例えばがんが見つかり、手術が必要となった場合、がんの種類によって、一定期間の再発観察期間が必要となります。また、肺などにも感染症が潜んでいることもあり、それも治癒しておくことが必要となる場合もあります。
よって、腎移植前に健康診断、例えば、胃、大腸などのがん検診。女性であれば子宮がん、乳がん検診も必要です。さらに、心臓の検査(心機能や必要に応じて冠動脈狭窄)を受けていただくことをお勧めします(*2)
さらに、近年、ウィルス肝炎も、良い抗ウィルス薬が登場し、B型肝炎でも重症化することは避けられ、さらにC型肝炎は治癒が可能です。腎機能が低下している方の場合には、使用できる製剤は限られますが、是非主治医の先生に相談してみてください。


4.ワクチンの接種

腎移植後は免疫抑制薬が必要です。免疫抑制下ではウィルス感染などが発症し易く、重症化し易い環境になります。特に初感染となると、厄介なことになります。中でも、麻疹、風疹、ムンプス、水痘ワクチンは生ワクチンで、弱毒化はしておりますが、免疫抑制下ではそのウィルス感染が実際に成立してしまう可能性もあり、免疫抑制薬服用中はそれらのワクチンは使用してはならないことになっています。
よって、移植前に自分がそれらの感染症にかかっているかどうかを調べていただき、必要ならワクチン接種をすることが必要です。母親の記憶は当てにならないことも多いです。そして、抗体がつくられたことを確認しなくてはなりません。それには数カ月が必要となり、時間もかかります。また、できればB型肝炎のワクチン(2016年10月からは小児では必須定期接種ワクチンとなっておりますが、成人では未接種の方がほとんどです)も受けていただければ、鬼に金棒ですが、これも抗体がつくられるまでに半年以上かかります(*3)


5.婚姻の状況

同居の伴侶から腎臓を頂けるということになっているカップルで来院される場合も少なくありません。しかし、現在のドナーの条件として、腎提供が可能なのは法定親族(血族6親等)ならびに配偶者、姻族(配偶者の血族、血族の配偶者)3親等までです。つまり、『サザエさん』を例にすると、カツオくんにマスオさん(姻族2親等)は腎臓をあげることができます(腎移植に対する患者さんの誤解その8 参照)。
脱線しましたが、単なる同居者ではなく、配偶者となっておくことが必須です。そうなっていれば倫理委員会の通過は必要なく、ドナーとなることができます。ただし、金銭やその他の利害関係が背景にある婚姻状態、養子縁組などは禁じられていることを付け加えておきます。


6.両親や、お子様への腎移植の説明と理解

例えば夫婦間移植で、奥様がご主人に腎臓を提供されたいと言って来院される場合に、娘さん達は、お父さんのことよりも、腎提供するお母さんのこと心配していることもあります。当然皆で話し合いをして家族で納得していただくことが必要です。また、兄弟間の提供を両親が知らないまま来院されることもあります。完全な大賛成の一言ではなくとも、やはりご家族に知っていただき、納得していただくことが必要です。
もし、ご家族への説明に行き詰まれば、多くの腎移植施設では、ご家族への説明もお手伝いしていると思います。外来にお越しの際に是非相談してみてください。


以上は、表2に簡単にまとめましたので、もう一度ご確認ください。

移植前にしておいていただきたいこと


次回は、移植前の準備(ドナー編)について述べたいと思います。お楽しみに。Coming Soonです。


文献
*1 日本移植学会. 生体腎移植ガイドライン. 日本移植学会ホームページ.
*2 Siddqi N, Hariharan S, Danovitch G. Evaluation and Preparation of Renal Transplant Candidates. Pp169-192, Danovitch GM ed. Handbook of Kidney Transplantation, 4th edition. Lippincott Williams & Wilkins. 2005.
*3 腎移植までに必要な検査は? 辻田 誠. Pp75-78、原田 浩・後藤憲彦編 腎移植の病診連携-これで腎移植が身近な医療になります、医薬ジャーナル社, 2015.


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