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吉田 一成先生 コラム

 腎移植 というと手術を思い浮かべると思います。しかし、移植手術は腎移植のごく一部にすぎません。その前後には実に多くのことをする必要があり、多種の医療従事者が関わります。もちろん移植手術が無ければ始まりませんが、多岐多様の医療関係者がチームワークを組んで初めて腎移植という医療が可能になるのです。これを「チーム医療」といい、最近の医療では重要視されています。

 最近の医療は専門性が強くなり、全てのことを深く知ることが難しくなっています。そこで専門家が互いに補い合い、連携をとって広い範囲で充分な医療が提供されるように結束して治療に当たるのがチーム医療です。その中で腎移植はまさに「チーム医療の典型」と言えます。手術も一人では出来ません。術者、助手、看護師、麻酔医、医療技師、事務員、清掃係など皆が力を合わせてはじめて手術を成功に導くことが可能となるのです。

 では、腎移植においてはどのような人がチームを組んで医療に当たるのでしょうか。もちろん医療は医師だけではできません。病院に行くと医師と看護師には会うと思いますが、事務の人もいますね。医師を取り囲む人たちをコメディカルといい、腎移植を始め多くの医療を支えています。医師だけを考えてみても、移植外科医だけでなく、腎臓内科医、精神科医、麻酔科医をはじめ患者さんの病状により多岐に別れた専門医が関与します。今回は移植医療チームのコメディカルの人たちに焦点を当ててお話しいたします。


A. 移植コーディネーター(RTC)

 腎移植においてはコーディネーターという、他ではあまり馴染みのない職種の人たちがいます。コーディネーターにはドナーコーディネーター、レシピエントコーディネーター、データコーディネーターの3種類があります。ドナーコーディネーターは献腎移植において献腎ドナーとレシピエントを結びつけるなどの役割を果たしますが、腎移植を受ける患者さんにとって一番関わるのはレシピエントコーディネーター(RTCとかレシコと呼ばれます)です。RTCの役割は精神的・肉体的に不安定なレシピエントの相談、レシピ工ントや生体腎ドナーヘの説明、退院後の健康・生活指導、など広い範囲に及びます。  実はRTCはある意味で、移植チームの「要」となる職種です。元々、コーディネーターは調整役という意味ですが、まさに「チーム移植」の進行調整役なのです。コーディネーターについてはまた別な機会に詳しくお話ししたいと思います。


B. 薬剤師

 移植には薬剤が欠かせません。免疫抑制薬、降圧薬、代謝改善薬、抗菌薬など、腎不全、腎移植患者さんの服用する薬は多岐にわたります。さらに、免疫抑制薬などは薬物治療モニタリング (Therapeutic Drug Monitoring, TDM)が必要で、相互作用に充分留意する必要が多く、薬剤の専門的知識が要求されます。移植医は薬剤師のサポートを受けて、適正な投薬をいち早く決定する必要があるのです。さらに薬剤師は誤った薬の投与を防ぐ役割も担っています。


C. 臨床検査技師

 移植患者さんの状態を把握するために、尿や血液等をできるだけ侵襲を少なく採取して検査分析することや、心電図や超音波検査等の多岐にわたる生理検査をすることは必須です。これらを担うのが検査技師です。


D. 診療放射線技師

 体内の変化を探るために胸部X線写真、CT、MRIをはじめとする、放射線画像検査が日常的に行われます。これらの検査は高度な検査技術を身につけた診療放射線技師が行っています。


E. 管理栄養士

 腎臓を保護するために重要な、タンパク摂取制限や塩分制限をはじめ、バランスの取れた食事を長期間にわたり摂ることは毎日のことであるため、栄養士の協力無しにはできません。


F. 理学療法士、運動療法士

 糖尿病での運動療法をはじめ、心血管障害による運動障害が起きることがあり、これは腎移植の後も継続して行われます。運動障害はQOLを下げ、結果的に生存率を減少させるので、予防、そして社会復帰のためのリハビリテーションには、理学療法士、運動療法士が活躍します。


G. 臨床心理士,精神療法士,心理療法士,心理カウンセラー

 患者さんやその家族が抱える種々の精神的ストレス、心理的問題の解決・予防、あるいは精神的健康の保持・増進・教育に貢献します。色々な局面において精神科医と臨床心理士が移植医、RTCと密な連携を取ってレシピエントを支える必要があります。


H. 臨床工学技士、透析技術認定士

 手術室内では人工呼吸器などの生命維持に関する機械やモニター類の保守点検を行ない、血液透析や血漿交換等の血液浄化に関する業務を行います。


I. 医療ソーシャルワーカー (MSW)、社会福祉士、精神保健福祉士

 腎移植患者さんが、移植を終え、透析療法から解放されて地域や家庭で自立生活を送ることができるよう、社会福祉の立場から、患者さんや家族の抱える心理的・社会的な問題の解決・調整を援助し、社会復帰の促進を図るのがMSWの役割です。医療費助成制度や身体障害者手帳・障害年金等といった社会保障制度の活用支援、腎移植後の生活の自立に向けた取り組みを促す支援、職場復帰・家庭復帰・学業復帰の支援、地域の医療連携などを行います。


J. 医療事務・スタッフ

 医療費の支払いや書類の整備、医療保険の手続きなど事務的な手続きがなければ医療は出来ません。病院には多くの事務員がいて医療スタッフを支えています。もちろん病院の清掃や保守点検も非常に重要です。普段は全く表に出ていませんが、このような人たちが居ればこそ質の高い医療が提供できるのです。


 これらの人々が連携を取り、ネットワークを組んでチーム医療を行うことが腎移植を成功させるには必須です。
以上、今回は移植医療を支えるチームワークについてお話しいたしました。

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