トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  腎移植セッション レポート② 第106回 日本泌尿器科学会総会報告【3】

森田 研先生 コラム

2018年4月に国立京都国際会館にて行われた第106回日本泌尿器科学会総会で、腎移植に関連する一般演題セッションを聴講しました。全国の腎移植施設から、日常診療の課題や施設間の情報交換を行う腎移植の一般演題プログラムが3つ組まれておりましたので、順に各施設からの発表について、トピックスをレポートします。
毎度のことではありますが、学会は日常業務の最中に行われるため、今回の学会でも、発表予定であった先生が、臨時手術などの理由で病院に戻らなければならなくなり、発表者が急遽変更になることがありました。そのため、一般口演の発表者の氏名は割愛させていただき、所属施設のみの記載といたしました。ご了承ください。


一般口演27  腎移植2 座長:井上高光先生(秋田大学大学院)


当院におけるReduced Port腹腔鏡下ドナー腎採取術における工夫(東海大学)

生体腎移植ドナーの腎提供手術を、できるだけ小さな傷で行うことを目的として、各施設で様々な工夫がなされています。Reduced port手術は、腹腔鏡を用いて傷を小さくするとともに、腎臓を取り出すための下腹部の傷に、カメラや鉗子(かんし)を複数挿入できる器具を付けて手術を行い、腎臓の近くに置く1本の手術鉗子と臍(へそ)を用いて傷を小さく、目立たなくする手術方法です。
腎臓の血管を切断して腎を取り出す際に、手術を行う複数の医師が役割分担をうまく行うことで、摘出・灌流時間が短縮できるよう工夫されていました。


ミトコンドリア病を原疾患とする末期腎不全に対して生体腎移植を行なった2例(大阪急性期・総合医療センター)

ミトコンドリア病は、生体内のどの細胞にも存在するミトコンドリアというエネルギー器官に異常をきたすことにより、神経症状・糖尿病・聴力障害・腎不全をきたす疾患で、発症頻度は低いです。しかしこの疾患によって腎不全になる場合があり、腎移植を行った2人の経過について報告されました。
この疾患は母系遺伝なので、女性の肉親からの腎提供による移植の場合は、病気の再発進行や、ドナーの腎機能が悪化する危険性があり、避けるべきとされています。この疾患は症状の出方に個人差があるため、会場からは確定診断を行うためには遺伝子検査も必要になるのではないかという意見が出されていました。


抗血液型抗体測定方法にマイクロタイピングシステム法を使用した血液型不適合腎移植の検討(鹿児島大学)

血液型不適合腎移植の際に問題となる血液型に対する抗体の測定を、通常法よりも早く検査結果が出る新たな方法で行った、20名の血液型不適合腎移植の経過について報告されました。マイクロタイピングシステムという新たな方法で測定した場合、血液型に対する抗体価が16倍以下の低反応例では、術前抗体除去療法(血漿交換療法)が不要だったそうです。


リツキシマブ投与後の遅発性好中球減少症を呈した生体腎移植症例の検討(奈良県立医科大学)

血液型不適合腎移植における抗体関連拒絶反応の予防のためにリツキシマブが使用できるようになったことにより、過去に行われていた脾臓摘出が不要となり、多くの患者さんに福音をもたらしています。
その一方で、リツキシマブに特有な副作用として、遅発性好中球減少症が投与患者さんの3割以上に認められます。どの場合も併用薬剤の調整や好中球を増やす薬剤の投与などで適切に治療され、発熱、感染症を併発した方はいなかったようです。
会場からは併用治療の詳細や副作用の評価方法について質問が多数出されていました。移植後数年経ってから初めて起こるケースもあるようでした。
※リツキシマブ:分子標的薬(特定の細胞などに結合するように設計された薬)の1つで、Bリンパ球にあるCD20というタンパク質に結合する。リツキシマブが結合することで、抗体産生細胞である形質細胞のもととなるBリンパ球が減少し、その結果、抗体産生が抑制される。これにより、抗体関連型拒絶反応である超急性拒絶反応(腎移植後24時間以内に起こる)と促進性急性拒絶反応(腎移植後24時間以降~1週間以内に起こる)を抑制することができる。


modified DFPPによるIgG除去能とフィブリノゲン保持効果の検討(北海道大学)

血液型不適合腎移植などで行われる血漿交換では、血液中に含まれる抗体だけを除去したいのですが、抗体と分子量が近い物質である血液凝固因子が除去されてしまうことによる出血傾向が問題になる場合があります。それを防ぐ新たな方法として、抗体だけをより選択的に除去できるよう血漿交換に用いる血液フィルターの組み合わせを変更する臨床研究を行い、報告しました。
研究の結果、除去される抗体の量が1割程度減りましたが、凝固因子の代表であるフィブリノゲンが保持され、手術直前でも安全に行える抗体除去法でした。同様な工夫を模索している他の施設から、具体的な方法や健康保険適用、臨床データの詳細について質問が寄せられました。
※DFPP(Double Filtration Plasmapheresis):二重膜濾過血漿交換


腎移植患者におけるタクロリムス変動係数の臨床事象への影響(秋田大学)

腎移植後に服用する免疫抑制剤で血中濃度の変動に注意が必要な薬剤の1つ、タクロリムスの濃度差異を表す指標である変動係数について報告がありました。
タクロリムスをきちんと内服できているかの指標になると言われている数値ですが、併用薬の影響でタクロリムスの血中濃度が影響を受け変動する可能性もあり、この数値が30%よりも高くなると拒絶反応が起こりやすくなるそうです。移植後1~2年での測定結果を示されていましたが、使用薬剤が変動することが多い移植後早期におけるこの数値の影響について、質問が出ていました。


腎移植後慢性血管型拒絶反応についての臨床病理学的検討(戸田中央総合病院)

移植後腎生検の病理診断の際に、腎血管の動脈内膜が硬くなり、動脈内壁が厚くなる所見であるcvスコアが高い症例と、慢性血管型拒絶反応の頻度について臨床的特徴を検討されました。
cvスコアが高い場合、拒絶反応やドナーの組織適合性抗原に対する反応が強くなりますが、腎移植成績そのものには大きな影響はありませんでした。動脈が硬くなり、動脈硬化や血管の内膜肥厚が認められる所見は、移植後の成績を左右する要因なので注意が必要ですが、このスコア単独で他に異常がない場合は経過を見ても特に変化がないケースも多く、どこで治療をするか、検出感度を上げるためにはどうするべきか、という討議がなされていました。


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