トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「アレムツズマブ導入法による腎移植のピッツバーグ大学での成績」第48回 日本移植学会総会報告【2】

森田 研先生 コラム

 2012年9月20日~22日に名古屋にて開催された、第48回日本移植学会総会での主な演題について、北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 森田研先生にご紹介・ご解説頂くシリーズの第2回目です。(文責:森田研先生)



「アレムツズマブ導入法による腎移植のピッツバーグ大学での成績」 【米国ピッツバーグ大学医学センター トーマス・スターツル移植研究所 Ron Shapiro教授】

【講演内容解説】

 日本にはまだ導入されていない、新しい薬に関するアメリカからの報告です。新しいリンパ球抑制剤として米国で使用が開始されている「アレムツズマブ」という薬を使用し、免疫抑制剤の投与量を減らして腎移植を成功させる試みで、かなり驚異的な成績を示していました。

 アレムツズマブは、Campathとも言われ、米国では14年の使用実績があります。これを移植直前に投与し、ステロイドは最初の2日間のみ使用、あとはタクロリムスを内服継続するだけの方法で、通常の腎移植と同等の成績を出していました。
 多くの患者さんでタクロリムスの減量が可能で、中には週に3回だけの内服の方も居るようです。また、年齢が82~86歳のレシピエントが数名含まれており、高齢者にも安全な方法であると断言されていました。小児にも適用されており、既に26例で行われているようです。
 拒絶反応の発生頻度は通常の方法と変わらない25%程度(1年以内)で、ウイルス感染症、移植後糖尿病、移植後リンパ組織増殖などの合併症の頻度は通常法よりも少なく、かつ、抗ドナー抗体の発生率も低いという夢のような方法です。

 米国では、腎臓以外の臓器移植後に合併症で腎不全になってしまった方にも早期に腎移植が行われており、既に他臓器移植で免疫抑制剤を内服している方にも腎移植の際にこのアレムツズマブを使用していますが、感染症は少なく、拒絶反応も十分抑えられていました。悪性腫瘍の発生率についても、アレムツズマブはサイモグロブリンや日本でも使われているT細胞レセプター拮抗剤などと比べて多くならず、最も少ないということでした。

 参加者から多くの質問がされておりましたが、回答のいくつかをご紹介しますと、抗ドナー抗体陽性の患者さんについては、この方法ではなく従来法で免疫抑制を行っているそうです。また、感染症が少ないとはいえ、かなり強力なTリンパ球抑制効果があるため、移植後6ヶ月間は、ウイルス感染に対する予防薬投与が必要ということでした。
 また、「ボストンやシカゴで行われている、完全に免疫抑制剤を中止するプログラムはこのアレムツズマブでは可能なのでは?」という質問もありましたが、「それについては考えていない」というご解答でした。「免疫抑制剤の中止、すなわち、免疫学的寛容状態を作るためには、腎臓移植では、やはり骨髄移植を部分的にでも併用しないと無理だ」とShapiro先生は仰っていました。  


 解説・文責:北海道大学病院 泌尿器科 森田 研 先生

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