2012年9月20日~22日に名古屋にて開催された、第48回日本移植学会総会での主な演題について、北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 森田研先生にご紹介・ご解説頂くシリーズの第3回目です。(文責:森田研先生)

「移植後服薬不全、治療遵守性障害と、抗ドナー抗体発生の因果関係」 【ミネソタ大学Arthur J. Matas教授】

ミネソタ大学の教授で、前の米国移植学会理事長であるMatas教授が、免疫抑制剤の内服中断など、治療拒否に伴う免疫抑制不足で、抗ドナー抗体が形成されてしまう危険性について講演されました。

腎移植後に免疫反応のため抗ドナー抗体が形成されて慢性拒絶反応状態になってしまい、移植腎が長持ちしなくなる原因として、「47%という高い割合で、勝手に患者さんの判断で内服を中断するなどの治療拒否がある」というお話でした。抗ドナー抗体が形成されてしまう原因には、全く薬を内服しなくなってしまうような場合だけでなく、時々薬を飲み忘れたりすることで、相対的に免疫抑制剤の量が少なくなってしまう場合などもあり、「如何にして内服不足を確認するかが重要だ」とのお話でした。

患者さんの免疫抑制剤の飲み忘れを確認する方法として、薬のカプセルのシートを空けた殻を持参させて内服を確認する方法や、実際に処方箋を調剤薬局へ持参して薬を購入したかどうかを保険会社の支払伝票で確認するなどといった努力をされているそうです。
この処方箋確認の背景には、米国では保険がつかえず、薬の費用を実費で支払わなければならない患者さんがいることがあります。この場合、薬の値段はもともと大変高額なため、処方箋を貰っても実際に薬を買えずに内服出来ない人がかなりいるということがあるようです。

解説・文責:北海道大学病院 泌尿器科 森田 研 先生