トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「腎機能の共通言語:GFR」 腎移植に対する患者さんの誤解 その11

原田 浩先生 コラム

前回は、免疫抑制剤を中止できる新たな夢の導入療法について少し脱線してお話ししました。今回は腎機能の指標である糸球体濾過率:GFR(ジー・エフ・アール)について身近になって下さい。

皆さんの腎機能はどのように評価されていると思いますか?
その前にもう一度腎臓について考えましょう。腎臓は背中寄りの腹部に通常は左右1つずつ存在する大きさ10~11cm位の臓器です。その組織の多くは“血管”あるいは、尿の通り道からできております。その働きはご存じのように、①尿として老廃物や余分な水分を体外へ出す ②体のバランス(酸性-アルカリ性、電解質)をとる ③血圧の調整 ④赤血球を作るエリスロポエチンを作る ⑤ビタミンDを活性化する ということを行っています。中でも最も大事な働き(どれも重要ですが)は①ではないでしょうか。そしてその働きを知れば、他の障害の程度もある程度推測出来ます。その指標は何でしょう?

簡単には尿量ですが、外気温や不感蒸泄量、飲水量でかなり左右されます。つぎに腎臓のサイズを測る事ですが、画像検査が必要であり、また糖尿病性腎症の方は意外と慢性腎臓病(CKD)が進行しても、あまり萎縮しないこともあります。また逆に先天性多嚢胞腎の方は、大きくなるほど腎機能が障害されます。
やはり手軽なのは尿蛋白量ですが、これも腎機能を必ずしも反映しないこともあります。

次に皆さんが目にするのは尿素窒素(BUN)そして血清クレアチニン(sCr)でしょう。特にsCrは誰でも体の中に有する物質で、腎から排泄されるので、腎機能が悪いほど蓄積され数値が大きくなります。筋肉量に比例するので、筋肉質の方では大きめにでる傾向はありますが、依然最も手軽な腎機能の指標です。しかし、慣れた方でないとその数値の意味するところ、すなわちどのくらいの割合の腎機能が傷害され、どのくらいの腎機能が残存しているかの検討をつけるのは少し困難かもしれません。
 例えば多くの病院でsCrの正常値は0.6-1.1mg/dl程度(男女差もあります)ですが、1.5mg/dl位であれば数字の上ではそんなに変わらなそうですが、実際の腎機能はかなり異なってきます。

そこで、皆さんも腎機能が障害されている方は、その腎機能を把握する手段としてGFRを理解していただきたいと思います。GFRは腎臓の中におしっこの元が入っている血液が巡ってそれをどのくらい糸球体で濾過することができるのかという指標です。


↑(図1)クリックすると大きい画像が出ます

(図1)をご覧下さい。赤い色が血管です。それが毬状になったものが糸球体です。ここから尿が濾過されます。尿はボウマン嚢から尿細管に流れ、尿管—膀胱から排泄されます。
さて「どのくらいのGFR値が良いのか?」と尋ねられたら、私は“学校でやったテストの点数”と答えてあげています。つまり、満点は100点(本来の単位はml/min/1.73m2)です(もっと良い方もおりますが)。80点以上であれば優秀で、何も言うことはありません。そして、60点あれば合格です。また40~50点では微妙ですし、30点では、答案をもらった瞬間暗くなりますね。10点以下では悲観的です。まさにこの感覚がGFRです。
移植患者さんは単腎です。また提供者の方も単腎となります。よって、単腎で100点をとることは殆どないのですが、良好な方は60点以上ですし、一般的には50点くらいですね。でも40点くらいでも普通に生活はできます。いただいたGFRを大事にする生活をして行けば良いのです。

さて、GFRはどうやって求めるのでしょうか、昔からの方法は一定の時間でクレアチニンがどのくらい尿に出たかというクリアランスを求める方法(クレアチンクリアランス)が比較的簡便ですし、今でも良く行われております。ただ、最近は全く自分の中にない外因性物質を点滴などで投与し、尿からのクリアランスをみるイヌリンクリアランス法が行われております。また核医学検査やシスタチンという物質でもGFRは推測できます。しかし、依然煩雑さが残り、sCrが比較的GFRと関連があるので、腎疾患で通院中の方のデーターから年齢、性別、sCrのみからGFRを推定する式が日本腎臓学会で作成されております。これをeGFR(イー・ジー・エフ・アール:推定GFR)と言い、正確さは上記の方法に劣るものの、気軽さから利用されてきております。

皆さんもsCrのほかにGFR/eGFRを覚えていただき、適正値は保存期療法や腎代替療法の選択の指標としていただきたいと思います。


↑(表)クリックすると大きい画像が出ます

ちなみにCKDガイドラインではeGFRが30を切ったら透析や、腎移植の準備をし、15を切ったらそれらを行っても良いとあります。(表)にCKDガイドライン2009のCKDステージ別の診療計画を載せております。CKDガイドラインは2012バージョンが出ており、蛋白尿を含めた計画表となっておりますが、2009の方が分かりやすいので、敢えて載せさせていただきました。



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以上腎機能の共通言語、GFRにつき述べさせていただきました。次回はドナーの腎移植前後の腎機能の変化につき、述べさせていただきたいと思います。お楽しみに。
GFRで主治医の先生と語り合ってみて下さい。


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