トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「生体腎ドナーについてのアップデート (David A. Goldfarb先生 米国クリーブランドクリニック財団)」 第101回 日本泌尿器科学会総会報告【4】  

森田 研先生 コラム

 

 2013年4月25日~28日に札幌市にて開催された、第101回日本泌尿器科学会総会での主な演題について、北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 講師 森田研先生にご紹介・ご解説頂くシリーズの第4回目です。



 2013年4月25日(木)から4日間、札幌市で行われました上記学会で腎移植に関係した講演を聴講致しました。各部門の専門家を招いて行われた企画講演(特別講演やシンポジウムなど)を今回ご紹介致します。毎度のことながら、内容についての解釈や文責は私にあります。事実と違う点がございましたらご容赦下さい。学会のホームページは以下です。プログラム、抄録集が閲覧できます。
第101回 日本泌尿器科学会総会


生体腎ドナーについてのアップデート (David A. Goldfarb先生 米国クリーブランドクリニック財団)

【講演内容解説】


 1991年に米国で初めて腹腔鏡で腎摘出術が行われ、1995年に初めて生体腎ドナー手術が腹腔鏡で行われました。その後、何度かドナーの安全性に関する省察がされています。最近の統計では開腹手術は全体の10%の施行数となっています。
 解剖学的な理由で右腎は静脈血栓症や出血のリスクが高いとされており、左右に差がなければ左が選択されることが多くなります。移植後の成績も、多数例の回帰分析で移植後の機能も右より左が良好という結果が出ています。
 腹腔鏡を用いて出来るだけ傷を小さくする試みは、単孔式手術やロボット手術でさらにドナーに対する負担を軽減する方向へ進んでいます。一方で、負担軽減により技術的には手術が難しくなり、かつ経費もかかってくるため、どこまで進めるかが今後の課題です。
 スペインでは、女性のドナーに対して、細い内視鏡で腎臓を遊離したあと、お腹を切らずに膣から腎臓を取り出すことにより腎臓を提供する手術方法が実際に行われました。また開腹手術でも傷を小さくする努力は挑戦され続けており、最小で4cmの傷だけで腎臓を取り出して移植を行うという報告もあります。
 このような負担軽減の努力は、ドナーの安全性を維持した上で行われる必要があり、ドナー手術の安全性についての問題も重要であります。負担をできるだけ軽く、かつ安全な方法で手術を行う具体的な方法について米国で行われている検討なども紹介されました。


 血液型不適合腎移植が日本では発達しているのに対して、米国や韓国の生体腎移植では、血液型不適合の壁を越えるために、不適合のままで移植するのではなくて、不適合のペアを複数集めて、ドナーを取り替えて交換して移植することにより、適合として移植することが行われており、「ペアドナー交換」と呼ばれています。
 血液型だけでなく抗HLAドナー抗体陽性の場合も含めて、何組もの移植ペアが、まとまってドナーを交換して移植を受けるプログラムが各地で行われています。そのペア数は年々多くなり、記録がどんどん更新されて、今年は何と30組のペアが移植を行ったことがありました(米国の事例です)。 どのように順番にドナー交換をしていけばこの移植の連鎖がうまく行くか、を専門に計算するスタッフが必須となり、コンピュータで理想的な順番を決めるそうです。また、このような腎移植を始める場合には、その連鎖の最初に、誰に腎臓を提供するかを決めていないドナー、という存在が必要であり、肉親に腎不全患者が居ない善意の提供者が病院に来て、片方の生体腎を提供するそうです。実際にクリーブランドクリニックのペアドナー交換連鎖を開始するときに貢献した22歳の男性の写真が紹介されていました。大変驚くべき治療法ですが、この方法は日本では認められていません。


 解説・文責:北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 森田研先生

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