2013年9月2日~6日に京都国際会議場にて行われた、第13回アジア移植学会での主な演題について、北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 講師 森田研先生にご紹介・ご解説頂きます。

シンポジウム「腎移植における長期生着」 第13回アジア移植学会報告【1】

腎移植後の長期生着に関わる問題について、台湾の中国医薬大学附設医院腎臓科の黃秋錦(Chiu-Ching Huan)先生と、秋田大学の佐藤滋先生が司会を行い、アジア各国からの演題によるシンポジウム形式で行われました。国による状況の違いはあるものの、共通の話題である長期生着について、どのような現状と課題があるのかについて論議が行われました。

韓国の延世大学校医療院セブランス病院のKim医師は、3500件に及ぶ腎移植の成績と、ドナー交換法による生体腎移植数増加の実際について概説しました。
韓国では2000年頃までは日本と同様に臓器提供が低迷しており、我が国より遅れて脳死移植法の施行が行われましたが、その後急激に臓器移植が進んで現在では日本を凌駕しています。長期生着に影響する因子としてはドナー年齢の影響を中心に述べておりました。
また、韓国では血液型不適合の場合はドナーを交換して移植を行う方法が早くから取り入れられていましたが、実際には抗HLA抗体陽性腎移植の方法に準じて血液型不適合腎移植も一定数行っている現状のようです。

台湾の長庚大学記念病院のChiang医師は、2002年に設立された台湾臓器移植センターの臓器分配による献腎移植成績と欧米の長期成績を比較しました。
台湾でも臓器不足が問題となっておりますが、長期成績は欧米の成績と遜色ありませんでした。台湾の特色として献腎ドナーは男性が多く、レシピエントは女性が多いということを述べていました。

パキスタンのカラチにあるSindh泌尿器移植施設のZafar医師は、2283件の生体腎移植の長期成績を様々なドナー因子から解析しました。
ドナー年齢、性別、腎機能、ドナーとレシピエントの体重比、HLA適合度の各項目で点数化を行い、その合計点数と生存率が比例することを示しました。この点数計算を事前に行い、より望ましい成績が期待できるように生体ドナーを変更したり、免疫抑制剤の投与法、投与量を調整すべきであると述べていました。

タイのバンコクにあるChulalongkorn大学腎臓学教室のAvihingsanon医師は、免疫抑制剤の一つであるカルシニュリン阻害剤(シクロスポリンやタクロリムス)の長期使用による影響を最小限にするために、血管新生抑制剤であるシロリムスを用いてカルシニュリン阻害剤を減量、中止する試みを報告しました。
カルシニュリン阻害剤は拒絶反応抑制に重要な薬剤であるため減量、中止の場合は定期的腎生検が欠かせず、シロリムス単独治療では移植腎組織の線維化が進むため、完全にカルシニュリンを中止することは難しく4割で再開が必要であったと述べていました。

インドのチャンディーガルにある卒後医学教育研究施設のJha医師は、同様にカルシニュリン阻害剤をシロリムスに移植後3〜6ヶ月目から変更することで拒絶反応抑制が十分行えて慢性移植腎症の発生が少ないという結果を示し、これは腎に対する保護効果とともに免疫を制御するリンパ球の機能改善が行われた結果であろうという考察をしていました。
シロリムスは日本では健康保険適応がありませんが、その改良型のエベロリムスが2011年から使用可能になっています。

北海道大学病院の森田は、腎移植後10年を越える生着が得られている場合と10年以内に透析再導入になった場合で、移植条件がどのように異なっていたかについて調査した結果を発表しました。
ドナーとレシピエントの体格差や性差の問題や急性拒絶反応の有無については最近の免疫抑制法ではあまり問題にならず、腎生検で判明する移植後早期の動脈障害や長期の移植腎線維化が長期成績に影響しており、カルシニュリン阻害剤を中止できたケースが長期生着群に多いことを示しました。その他に少数ですが抗ドナー抗体の形成や服薬不全、悪性疾患の発生などが長期的問題として認められました。

フィリピンの国立腎移植施設のDanguilan医師は、フィリピンで最大の腎移植施設における5014件の生体・献腎移植の長期成績について、HLAの適合度が移植後の急性拒絶反応や長期成績についてどのように影響するのか、についてHLA抗原の各項目の適合度を調査しました。
腎移植が開始された当初にはHLA適合度が成績に影響するとされており、適合度を高くすることが長期生着の要件でしたが、最近の免疫抑制療法では拒絶反応の発生頻度や長期生存、生着率についてHLA適合度は関連が認められないという結果を報告しました。

腎移植成績の改善とともに、以前では考えられなかった長期生着中の問題点がクローズアップされて来ており、腎移植後に改善した腎機能を末長く維持するために、メタボリック症候群や心血管系合併症を予防することが重要となってきています。
また、感染症や悪性疾患などの予防など、腎移植直後の拒絶反応防止と同時に、長期的な観点に立った免疫抑制法に方針転換していくことが今後必要になると思われます。