トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「腎移植後のダイエット その1」 腎移植に対する患者さんの誤解 その13

原田 浩先生 コラム

前回は、生体腎ドナーの腎提供前後の腎機能の変化についてお話ししました。今回は腎移植後のダイエット、つまり運動-栄養管理についてお話しします。大事なテーマですし、大きなテーマなので2回に分けたいと思います。まず、「腎移植後のダイエットその1」、肥満がなぜいけないのかについて考えます。

腎移植の醍醐味の一つに、保存期の腎不全状態や、透析療法下での状況に比べ格段に改善する生活の質があります。なかでも食事療法に対する制限の解除、つまり、ほぼ健常人に近い食事が可能となることを多くの方があげると思います。
しかし、ここで注意が必要です。腎移植前には痩せていたのに、数か月後、数年後にお会いすると別人のような顔つき、体格となっている移植患者さんが何人もいらっしゃいます。10kg、ひどい人になると20kg太られた方もいらっしゃいます。食事が美味しいのはわかりますが、今一度体重管理について考えてみて下さい。
皆さんが享受した貴重な腎臓はお一つです。GFRの話しに戻りますが、GFRとするとせいぜい60、場合によって35ml/min/1.73m² 程度の方もおります。つまりCKD3であり、腎臓が二つある健常の方と比べると依然低腎機能であることには変わりはありません。移植腎機能を長く大事にする、あるいは、長生きするためには、当然体重管理-肥満防止に努めるべきであることに疑いの余地はありません。CKDは単独の心血管イベントの発症リスクであることを今一度肝に銘じておいて下さい。



↑(図1)クリックすると大きい画像が出ます

師走の忘年会、クリスマス、大晦日、お正月と美味しいものを食べる機会が多いこの1か月、皆さんは如何が過ごされましたか? 食べる割には冬なので運動も億劫になり、体重が増えること間違いなしです(私がそうでしたので)。ダイエットには一つは消費カロリーと摂取カロリーのバランスが重要です。当たり前ですが消費カロリーが摂取カロリーを上回れば、ダイエット成功ですし、この逆ですと肥満が進みます(図1)。



↑(図2)クリックすると大きい画像が出ます

何を食べたかは問いませんが、糖質、脂質、蛋白質、いかなるものも最終的に余剰となれば脂肪に変換され貯蓄されますので内臓脂肪、皮下脂肪が増加します。脂肪組織を構成する脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞がありますが、前者がほとんどを占めます。余ったカロリーはそこの内部に蓄えられ、ひどい場合にはパンパンに膨れます。この白色脂肪細胞は単なる脂肪の倉庫ではなく、体に影響を与える様々なホルモンなどが製造されていることが分かっております(図2)。代表的なものに、食欲を抑えるレプチン、動脈硬化を抑える効果や、血中からブドウ糖の取り込みを促進する効果をもつアディポネクチン、反対に血中からブドウ糖の取り込みを抑制するTNF-α、レジスチンなどが白色脂肪細胞から分泌されております。脂肪が白色脂肪細胞に蓄えられると、これらの分泌量が変化し、レプチンやTNF-α、レジスチンは分泌量が増加し、反対にアディポネクチンは減少することが知られています。TNF-α、レジスチンが増えれば、高血糖が持続し、その結果血管のダメージが進み、さらにアディポネクチンが減少すれば、動脈硬化に拍車がかかります。まさに、メタボリックシンドロームの進展です。



↑(図3)クリックすると大きい画像が出ます

さらに、白色脂肪細胞からは脂肪細胞の蓄積により動脈を収縮するアンジオテンシノーゲンが増加し、血液凝固を進展するPAI-1と呼ばれる物質も分泌されるので、動脈硬化がさらに進展します。肥満は単純に体型の問題だけではなく、糖尿病、動脈硬化から死亡リスクを増す危険因子であることがもうおわかりでしょう(図3)。面白いことに増加したレプチンは食欲を抑えそうですが、肥満者はこのレプチンへの抵抗性があることが問題となっております。肥満を解消するには悪循環を意地でも断つ必要があると言えます。つまり、長生きしたければ、特に一つの腎臓機能で暮らしている移植患者の皆さんは、より慎重にカロリー摂取と向き合う必要があるのです。



↑(表1)クリックすると大きい画像が出ます

ダイエットを考える上で、まず消費カロリーについて知りましょう。人間は生きている以上はカロリーを消費します。例え動かないでじっとしていてもそうです。これを基礎代謝と呼びます。これは筋肉量で決定され、若い方、大きい方、男性ほどカロリーを消費しますので、年齢と体重、姓差でこれは算定できます。WEBでも計算できるサイトがありますので、まず、自分の現在の基礎代謝を先ず知ることが第一歩です。このWEBサイトが便利だと思いますので、是非、体重、年齢を入力してみて下さい。例えば、40歳、60kgの男性の基礎代謝は1338kcalと出ます。仮に、家でじっとしていることを仮定し、3回の食事を均等に摂ったとすると一食たったの450kcal程度です。少し驚かれた方いらっしゃると思います。最近はコンビニ弁当などでも、カロリー表示がされておりますが、一食450kcalなんてお弁当はよほど小振りのものしかありえませんね。ご飯130gが220kcalです。ラーメンは500~600kcal、カレーライスは600~700 kcalです。これだけで、基礎代謝分に達してしまいます(表1)。つまり、これより食べたければ、運動をして消費するしかないという事は自明の理です。次回は運動についてお話ししたいと思います。



参考文献
1.http://motivated.jp
2.なぜ太る?どうして病気を招く?肥満のサイエンス. Newton 2014 2月号 pp44-67.

お気に入り記事に登録

原田 浩先生 過去のコラム

この記事を見た人が読んでいるのは