2014年4月24日~27日に神戸市にて開催された、第102回日本泌尿器科学会総会での主な演題について、北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 講師 森田研先生にご紹介・ご解説頂くシリーズの第3回目です。



平成26年4月24日から4日間、神戸において第102回日本泌尿器科学会が開催されました。その中で、腎移植に関係した興味深い講演や企画を選びレポートしました。なお、私の理解不足で発表者の意図した内容と多少異なる解釈や、表現を変えたことによる微妙な違いがあるかもしれません。このレポート内容についての責任は全て私にありますのでご了解ください。

一般演題 「脱細胞化腎と再細胞化腎の形態的、機能的評価」 ~移植用の人工臓器として腎臓を作るための準備実験の検討~

腎臓の再生医療の話題として、聖マリアンナ医科大学の腎泌尿器外科、佐藤雄一先生がラットの腎臓を用いた実験結果を発表しました。将来、移植用の人工臓器として腎臓を作るための準備実験を検討していました。

ラットの腎臓の細胞を、SDSという細胞溶解液で2日間かけて脱細胞化(腎臓を構成する細胞を溶かして、細胞の骨組みだけにすること)すると、腎臓が細胞骨格だけになり、スポンジ状になります。ただし、血管や腎盂などの腎臓の大まかな構造は保たれているため、血管や尿管から色素を注入すると構造が描出されます。顕微鏡で見ると、細胞が無くなって空洞になっていますが、細胞骨格であるラミニンやコラーゲンといった組織は保たれています。このスポンジ状組織に、腎動脈から血管壁の内側をレンガ状に内張りする内皮細胞を注入すると、糸球体や血管内皮が再構成されます。また、尿管から尿細管上皮細胞を注入すると、尿細管スペースに細胞が植え付けられることが判りました。このような「再細胞化」を行った後にKrebs-Hanks Solutionと呼ばれる疑似血液を注入してみて、尿の流出や圧力を調べた結果が発表されていました。
今のところは尿を濾しているわけではなく、注入した細胞により血管抵抗や尿管からの抵抗が生じているというデータでしたが、現在行われているiPS細胞の腎組織への再生が実用化されれば、このような方法を使って動物の腎臓を細胞だけ入れ替えて、人間の腎臓として使うことが出来るようになるかもしれません。

解説・文責:北海道大学 外科治療分野 腎泌尿器外科学 森田研先生