2014年5月31日~6月3日にかけてオランダ、アムステルダムで行われた第51回ERA-EDTAに参加いたしましたので、見聞したことを皆様にお伝えしようと思います。

学会場

ERAはヨーロッパ腎臓学会、EDTAはヨーロッパ透析・移植学会で、腎臓内科医、透析医、移植医が一同に会して毎年行われるヨーロッパの学会です。既に初めての開催から、半世紀以上がたっています。
この学会のユニークなところは、透析医療関係者と移植医療関係者が一緒に学会を開いている点で、このような組み合わせの学会は日本にもアメリカにもありません。両方とも、末期腎不全に苦しむ患者さんのための腎代替療法に関する研究や知見を議論し合うのですから、この二つと腎臓内科を合わせた三分野の人たちが一同に会して、互いの情報交換をすることは非常に有用だと思いますが、なぜか、これらを統合した学会、研究会は少ないのが現状です。

ヨーロッパでは腎移植が盛んですが、それでも腎移植は腎代替医療の4分の1程度で、半分以上は血液透析です。このような状況を反映してか、口演演題161題には腎移植の演題はなく、ポスター発表1564題の内197題(12.6%)が腎移植関係の発表でした。日本からの参加者も透析、腎臓内科関係者は数十人が来ていましたが、腎移植関係の参加者は10人程度で例年より少ない印象でした。

学会は、これらの発表演題の他に7つの会場で朝8時から夜7時過ぎまで、トピックス別に数題ずつ、まとめのようなシンポジウム講義が続きます。ポスター発表は90x130cmのポスターを張って、その前に約45分間立ち、訪ねてくる人の質問に答えます。
さて、今年のERA-EDTAでは腎臓病関係では急性腎不全、幹細胞を使った再生医療、また、遺伝子、細胞、臓器の日内リズムに焦点を当てた講演がありました。
透析関連の企業のブースも多く出店されており、日本ではADPKD(常染色体多発性嚢胞腎)※の薬であるトルバプタン(サムスカ®)が大塚製薬から発売されていますが、この薬はまだヨーロッパでは発売前であるのに、かなり大きなブースを展示会場に設けていて、セッションでもADPKDの話が多いような印象を受けました。
※嚢胞が多数でき腎臓が大きくなる遺伝性の疾患。症状や合併症に対する治療をしても次第に腎機能が低下する。70歳までに約半数が末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要になる。

移植では臓器の配分の話が出ており、高齢のレシピエントに関する話が一番のトピックスだったようです。腎移植は透析導入後、6カ月以上たつとやはり成績が悪い、という話が出ていましたが、ヨーロッパ、アメリカの透析での生存率は日本よりかなり悪いので、それも原因かと思います。しかし、日本では献腎移植では16年の待機期間というような状態ですので、全く比較にならない話です。あとは移植後の感染のコントロールがやはり問題になっているようでした。