トップページ  >  インタビュー  >  ドクターインタビュー  >  東京女子医科大学 泌尿器科 主任教授 田邉 一成先生

ドクターインタビュー

-----生体腎移植を増やす為には具体的にはどうすればいいでしょうか。

生体腎移植を増加させるポイントは2つあります。 1つは腎臓内科医との連携です。腎臓内科医の中には、必ずしも腎不全患者さんに移植の選択肢を与えず透析のみのオプション提示をすることも少なくありません。透析センターとの関係もありますし、「血液型が違うと移植ができない」、「夫婦間やドナーが60歳だとできない」等の医師の勉強不足による間違った知識で腎移植の提案を行わない場合も見受けられます。日本腎臓学会では移植推進に向けて冊子をつくっていますが、慢性腎不全から透析に導入される患者に見せていない医師も少なくないと思います。

さらに、最新の治療は日進月歩です。例えば、昨年まではできなかった腎移植が今年は可能となるなど日々進歩しているのです。そういった知識の伝達も含めて腎臓内科医と連携をする必要があります。現在、腎臓内科医と連携するための具体的な施策として、月に1回程度、腎臓内科医が集まる会で移植の話をすることを考えています。短時間でもいいので、症例検討や治療法、患者への説明内容などを話して情報を共有し、彼らが開業するときには、患者さんが移植も選択するこが可能な状況をつくっていく事が大切です。 生体腎移植を増やすためのもうひとつのポイントは、移植のできる医師の養成です。

通常、養成には3年かかりますが、われわれはあらゆる面で効率化を図りながら、1年で何とか一人前にする教育方法を考えています。内科系医師の場合、手術がいらないので、一般外来の見方や患者のエバリュエーションの仕方など1年やればできるようになりますが、そのためには多くの症例を診ることが必要です。また、外科系医師の場合、ある程度の知識のある人は1年で技術を習得することができます。特にドナーの提供手術に関しては、腹腔鏡下手術なので1年で技術を習得させることが可能です。カニの爪のような先端だけが動く特殊な機械を体内に入れて手術を行うので、通常手術に比べてできることが限られ、指導しやすいのです。

逆に、レシピエント側に移植する手術はバリエーションが大変多く判断が難しいため、そう簡単ではありませんが、なんとか一年あれば通常の腎移植手術に関しては問題なく施行できるレベルにはなります。

また、ハード面では、移植のできる病院を増やす必要があります。まず、移植を行っている病院を核として、スタッフを養成します。そして、養成されたスタッフを1人、2人と別の病院へ送り、彼らが新たな病院で移植を広めます。

私達は、東京女子医科大学病院、大久保病院、戸田総合病院の3カ所で移植を行うことができるようにしました。さらに今後は、千葉県でも行えるようにしたいと思っています。移植の質を維持しながら目標に掲げた5年間で移植件数を2倍にするためには、人材育成と移植可能病院拡充を一緒に行う必要があります。戸田総合病院では5年前から月1件の移植を始めました。大久保病院でも3年前から月1件の移植を始めて今は月2件行われており、それを月3件、4件と増やして毎週1件の移植を行えるようにしたいと考えています。スタッフの質を維持するには、このようなルーティンワークにすることが大切です。ルーティンワークにすることで安全性も格段に上がります。

中核病院で人材育成を行い、周りにどんどん移植ができる病院をつくる。この方法を日本国内のメジャーな20センターが実施すれば、移植件数は確実に増えて移植の待機時間も減っていくでしょう。

-----診断や治療レベルを全体で維持するために具体的にやられていることはありますか。

現在、私達は、移植後の腎生検の結果を全て大学に集め、同一の診断レベルで診断し問題がある症例だけを抽出して、全員で毎週、諸例検討会を行い診断の確認、治療方針の決定を行っています。この会議では症例の所見やマネジメントまで踏み込んでいますので、診断、治療の質は非常に高いものとなります。


---これからの移植医療に期待する事や現在取り組んでいる事を教えてください。

今後やるべき事はトレランス(免疫寛容)、つまり免疫抑制剤を必要としない移植を確立させる事だと思います。

MGH(マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル)である程度は行っていますが、成功率は8割程度に留まっています。このほかにもアメリカでは数カ所で行っていますが、確実にうまくいっているところはまだありません。

トレランス(免疫寛容)に関して最近分かってきたことは、トレランス状態の患者が腎炎などの病気を再発する可能性があるということです。これによりトレランスの将来に多少の不安が出てきましたが、再発性の疾患でなければトレランスは効果的ですので、今後もトレランス(免疫寛容)の導入は推進していくべきです。

一方、異種移植に関しては現状ではなかなか厳しい状況ですが、再生医療の技術が進んできており、IPS細胞から腎臓をつくることもできるようになってきました。人の腎臓はまだ完成していませんが、マウスでは完成しています。その仕組はこうです。

ある遺伝子(Sall1)が欠損すると、生まれつき腎臓がない動物が出ることが分かっており、マウスではSall1だけを欠損させると、腎臓のない個体が生まれます。これによりSall1が腎臓をつくるということが分かりました。そこで、Sall1が欠損したラットの卵子にマウスのSall1を注入してみたところ、形はラットになりますが腎臓だけはマウスの腎臓になったのです。

同様に、人のSall1遺伝子をブタに注入すると、形はブタですが腎臓だけは人間の腎臓になります。このようにして人の臓器をつくれる可能性が出てきました。特に膵臓は、できてしまえばランゲルハンス島だけ取ってきて移植できるので、かなり実現性が高くなります。

臓器が自分の体細胞からパーツをつくるということは、技術的にはたぶん可能なことなので、将来的には本当にコピーがつくれるかもしれません。

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