原田先生は、北海道では最多の腎移植実施実績を誇る腎移植施設、市立札幌病院の腎臓移植外科を率いていらっしゃいます。市立札幌病院 腎臓移植外科では透析を経ないで腎移植を行う先行的腎移植(プリエンプティブ腎移植)にも積極的に取り組んでおり、年間約3割の方が透析を経ないで直接腎移植を行う事が可能となっています。
今回は市立札幌病院を中心とした北海道における移植医療の状況や、原田先生の移植医療に対する思いをお聞きしました。

Chapter1 北海道での移植実績について

まず初めに、北海道における昨年の腎移植の件数ついて教えてください。

2011年の北海道全体の腎移植件数は77件でした。市立札幌病院では、その内の38件の腎移植を行いました。
また、一昨年の2010年は北海道における献腎移植が非常に多かった年で、20件の献腎移植が行われ、市立札幌病院ではその内の12件の献腎移植を行いました。2010年の北海道における献腎移植件数は、人口比で全国トップだったと思います。

北海道における腎移植の特徴はありますか?

北海道の腎移植の特徴としては、先行的腎移植(プリエンプティブ腎移植)、夫婦間腎移植、ABO血液型不適合腎移植が多い事があげられます。例えば夫婦間腎移植に関しては、昨年の当院の生体腎移植34件のうち、半数以上が夫婦間腎移植でした。
その理由としては、当院も含めた北海道の腎移植施設が、その様な移植に積極的に取り組んでいるという事もありますが、北海道の人の開拓精神というか、考え方がオープンで、周りを気にせず新しいことに積極的に取り組む資質が影響しているのかもしれませんね(笑)。

市立札幌病院では、北海道における腎移植の約半数を行っていらっしゃいますが、こちらの病院では、何年前から腎移植医療を行っていらっしゃるのでしょうか?

原田先生

当院に腎臓移植外科が開設されたのは1985年ですので、27年前から腎移植医療に取り組んでいます。
腎臓移植外科の開設以来の総移植件数は512例を超え、移植件数は毎年増加しており、現在では年間約40件の腎移植を行っています。
当院における最新の10年生着率は現在85~90%となっています。

先行的腎移植にも積極的に取り組まれているようですが、どの位の割合の患者さんが先行的腎移植を受けられているのでしょうか?

先行的腎移植はかなり前から声を大にして行ってきており、当院における腎移植患者さんの約30%が先行的腎移植です。移植前に全く透析を行わなかった方が約25%で、直前透析を行った患者さんも含めると約30%です。
先行的腎移植の全国平均は、移植前に全く透析を行わない方が10%、直前透析を行った方を含めても20%となっています。
先行的腎移植を行った患者さんは、年齢や原疾患に関係なく、移植腎の生着率や生存率において良い結果が得られています。