Chapter2 腎代替療法選択のタイミングと腎移植後のフォローについて

こちらの病院では、慢性腎臓病の患者さんに対し、どのくらいの腎機能になった段階で末期腎不全における治療選択のお話をされるのでしょうか。

腎代替療法外来への紹介の時期は、腎臓内科の先生に任せていますが、大体、クレアチニン値で4mg/dL台です。そのくらいの数値を目安に、一度、腎代替療法外来に来ていただき、その後は腎臓内科と一緒にフォローしています。
もちろんできるだけ腎機能を長く持たせることが一番なのですが、その先を考え、事前に準備をしていくことも必要です。

腎代替療法外来ではどのようなお話をされているのですか。

最初に、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本移植学会、日本臨床腎移植学会より出されている冊子「腎不全-治療選択とその実際-」をお渡しし、血液透析、腹膜透析、腎移植について考えてきていただきます。その後、患者さんのご家族にも一緒に来ていただき、もう一度医師と看護師から話をします。決して一度で決めていただくことはありません。じっくりと考えていただき、選択していただいています。これまでに70人くらいの患者さんが腎代替療法外来に来られましたが、そのうちの12人(20%弱)が腎移植を選択されています。特に60歳以下の患者さんは、かなりの確率で腎移植を選択されています。
腎移植を希望される患者さんには、移植後元気になった患者さんに会っていただき、話をしてもらうこともあります。

腎移植後の患者さんをフォローしていく上で、腎臓内科医として特にどのような点に気を付けていらっしゃいますか。

移植後の外来では、特に塩分制限や血圧のコントロールに関してより厳しくみていますね。

移植腎を長持ちさせるためのポイントはどのような点でしょうか。

平野先生

一番は指示された通りにきちんと薬を服用することです。当院では外来時に残薬数を書いていただくなど、コーディネーターが中心となって服薬管理を行っておりますので、現在のところ、服薬を怠るような患者さんはいらっしゃいません。
また、塩分制限などの生活習慣病予防も重要です。腎移植後も、高血圧は心疾患や動脈硬化の危険因子として重要ですので、血圧コントロールもきちんと行うことが大切です。
私がよく患者さんにお話しするのは、「腎移植後は、移植前と比べて運動ができるようになったり、旅行ができるようになったりと、自由にはなりますが、生活が自由になるだけであって、食事の管理はきちんとしなければなりません」ということです。何でも、いくらでも食べていいわけではなく、ある程度の制限は必要です。

※平野先生は、「移植腎を長くもたせるための合併症予防」に関してのコラムもシリーズで執筆されていますので、ぜひご確認ください。
腎移植後の高血圧(1)~長期生着のための高血圧対策~
腎移植後の高血圧(2)~薬以外で血圧を下げる方法~