ドナーとなって約30年

臓器提供後からこれまでの約30年間、体調面でつらかったことはありましたか。

孝子さん
特にありません。移植前となんら変わらないですね。

ドナー検診には定期的に行っていらっしゃいますか。

孝子さん
1年に1回、28年間ずっと通っています。これまで何かを指摘されたことは、一度もありません。いつも、「調子よくいってますね」と言われます(笑)。

臓器提供後からこれまで、ドナー検診以外で通院や入院はありましたか。

孝子さん
臓器提供から20 年後に、脳梗塞を3回患いました。全部症状が軽かったので、2~3週間の入院で済みました。ただ、2 回目の入院の時は、歩くのに支障をきたし、しばらくの間は少し大変でしたね。3回目は、呂律が回らなくなったりしましたが、今はもう大丈夫です。

臓器提供後は体調面でどのようなことに気を付けていますか。

イナゴの佃煮

孝子さん
血圧は、毎日、朝晩測定しています。また、カルシウムを積極的に取るように心がけ、毎朝牛乳を飲み、小魚をよく食べています。後、イナゴも食べますね。

イナゴですか?!

孝子さん
佃煮を売っているでしょう?あれを見ると必ず買って、家に置いています。「カルシウムを取るにはイナゴがいい」と、皆さんから聞くものですから。


ひとみさん
後は、義母は「ちょっとおかしいな」と思えば、大事を取ってすぐに病院に行きますね。いろいろなことを自分で考えて心がけていますから、転ぶようなこともあまりないですね。


息子が元気になった幸せ

臓器提供後、最もうれしかったことはどのようなことでしたか。

孝子さん
息子が元気になり、仕事ができるようになったことです。


ひとみさん
主人は34歳の時に移植をして、それから1年間は体調がなかなか戻らなかったのですが、徐々に元気になり、ちょうど40歳の時に2人目の子どもを授かりました。その頃から5年間、仕事が終わってから大学院に通って、博士号を取りました。

ご主人は何の研究をしていらっしゃるのですか。

ひとみさん
主人は教員で、“医用画像情報工学”の研究と言っていますが、私には全然わかりません。ただ、1回目の移植当時は短期大学に勤めていました。大学には自分の部屋がありましたので、腹膜透析もその部屋でできたというのがすごくラッキーでしたね。今も、当時と職場は変わったのですが、自室があって、疲れたときはちょっとソファに横になって休むことができる環境にいますので、その点は恵まれていますね。

移植後は生活が変わりましたか。

ひとみさん
そうですね。移植前は腹膜透析をしていたということもあり、常におなかをかばっていましたから、子どもとお風呂に入ったり、遊んだりすることもあまりできず、仕事から帰ってくると、いつもソファに横になっていましたね。
移植後に2人目を授かりましたが、2人目の子どもとはいろいろなことが一緒にできますし、そういう意味ではずいぶん変わったと思います。

レシピエントである息子さんとの関係は、臓器提供前後で何か変わりましたか。

孝子さん
特に変わりはありません。以前から息子は、毎年私の誕生日にプレゼントをくれます。母の日にも貰いましたね。


ひとみさん
男性はそういうことをしない人が多いと思うのですが、主人は常にしていますね。誕生日に家族みんなで集まったりとか、何かにつけて機会を作ってやっています。敬老の日や、喜寿、米寿など、いろいろありますよね。米寿の時は、お兄さんたちの家族から、子どもや孫、そして、ひ孫まで全員集合しました(笑)。


”孝子さんの米寿のお祝い”

最近は、孝子さんはどのように過ごされているのですか。

孝子さん
1週間に2~3回、老人の会に行っています。それと、毎日接骨院に行って、背筋や腰をマッサージしてもらっています。だから、背中は曲がっていないのですよ(笑)。
後は、いろいろな物を手作りしていますね。「家に居ては、ボケてしまうから駄目だ」と思っていますからね。


ひとみさん
義母は、もともと名古屋出身なので、名古屋にもしょっちゅう1人で出掛けますね。


毎日しっかり歩いています

孝子さん
友達からは、「あんた1人で名古屋までよう行くね」と言われますが、「なんね、栄(駅)で降りりゃすぐだがね」と言っています(笑)。もともと栄のど真ん中で働いていたので、さほど遠いと思いませんね。親しみがありますしね。
(※孝子さんは現在、名古屋の中心地から1時間ほどの場所にお住まいです。)


ひとみさん
「ちょっとそこまで」が名古屋なんですね(笑)。そうやって出歩くことが多いので、「出かけるときは、必ず携帯電話と鍵とマスクを持ってね」と、特に冬場などは、うるさいくらいに言っています(笑)。

孝子さんは臓器提供してよかったですか。

孝子さん
もちろんよかったです。

もし、当時の孝子さんの年齢、つまり60歳くらいの方で、臓器提供の機会がありそうな方がいたら、移植を勧めますか。

孝子さん
そうですね。そういう方が居たら、もちろん勧めます。