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MediPress編集部 コラム

  • 第20回 世界移植者スポーツ大会(アルゼンチン大会) チームマネージャー丸井先生インタビュー

    第20回 世界移植者スポーツ大会(アルゼンチン大会) チームマネージャー丸井先生インタビュー

世界中から移植を受けた方々が集まり、2年に1回行われるスポーツの祭典、世界移植者スポーツ大会。2015年はアルゼンチンにて開催されます。
2007年の大会から日本チームのチームドクターとして参加されている、虎の門病院分院 腎センター外科の丸井祐二先生に、世界移植者スポーツ大会の見どころと、大会への意気込みをお聞きしました。



― まず初めに、世界移植者スポーツ大会とはどのような大会ですか。

丸井先生:
世界移植者スポーツ大会(World Transplant Game)は、2年に1度、世界中の臓器移植及び骨髄移植を受けた患者さんがアスリートとして集まり、陸上、水泳、ロードレースなど、さまざまな種目のスポーツで競い合う大会です。世界移植者スポーツ大会連盟(World Transplant Games Federation)が主催しており、世界各地で開催国を募り、選抜して開催しています。日本では、2000年に神戸で大会が開かれました。直近では、2007年はタイ、2009年はオーストラリア、2011年はスウェーデン、2013年は南アフリカで開催されました。来年2015年はアルゼンチンで開催されます。現在、世界移植者スポーツ大会は、IOC国際オリンピック委員会にも国際スポーツ大会として公認されています。


― どのような目的で開かれているのですか。

丸井先生:
「リハビリテーション」という言葉は、英語では回復という意味で使います。移植を受けることによってフルリハビリテーションをし、社会復帰もし、スポーツも健常人と同じように楽しめるようになる。スポーツを通して競い合うことができるまでに回復したことをお互いに喜び合い、家族とその喜びを共有する。社会に対して移植医療によってこのように回復できたことを伝え、移植医療の素晴らしさを伝える。そして、一番大切な、尊いドナーになってくれた方の意思、ドナーになってくれた方のご遺族の意思をもう一度確認し、深い感謝の意を示す、というのがこの大会の主旨です。
大会では、国ごとの選手入場の後に、ドナーファミリーの入場をスタンディングオベーションで迎え、ドナーになってくれた方のことを思い、感謝の意を示しています。


― 丸井先生はいつごろから参加されているのですか。

丸井先生:
2007年のタイ(バンコク)の大会から3回連続で、チームドクターとして参加していますが、昨年の南アフリカ大会には日本チームが出場しませんでしたので、参加していません。


― このスポーツ大会は、誰でも参加できるのですか。

丸井先生:
臓器移植受けた患者さん、骨髄移植を受けた患者さんであれば、選手として参加できます。また、ボランティアとしての参加も可能です。実際、選手登録している方以外にも、選手と同じくらいの人数がサポーターとしてボランティアで参加しています。大会開催地の現地ボランティアや、患者さんのサポートのために、各国から患者さんと一緒に参加している方や患者さんのご家族などです。


― これまでの大会で、日本の選手はどのような競技に出場していますか。

丸井先生:
陸上競技や、ボーリング、バドミントン、ゴルフ、テニス、水泳、卓球などです。ローンボウルズやビーチバレーに参加した大会もありました。これまで、バドミントンやボーリングで良い成績を上げた方もいますし、2009年のオーストラリア大会では、陸上短距離100mと200mで日本人初の2冠を達成された方もいらっしゃいます。陸上の短距離100mで日本人選手が金メダルを獲得したのは22年ぶりで、短距離200mでの金メダル獲得は日本人初でした。


― 世界大会に参加する選手は、選抜されているのですか。

丸井先生:
現在、日本では世界大会に出場する選手の選抜は行っていませんので、手を挙げれば出場することができます。出場したい方にとっては今がチャンスですね(笑)。
おそらく、イギリスやカナダ、スペインなど、数多くの選手が参加している国では、同じ種目への参加者が多くなりすぎないように、選抜をしていると思われます。香港チームのローンボウルズ競技出場選手などは、選抜選手が出てきていたようで、とても強かったですね。


― 丸井先生がこれまでに参加された大会で、思い出に残るエピソードはありますか。

丸井先生

丸井先生:
大会には小児移植者の参加も多いのですが、ある大会で心臓移植を受けたお子さんが、50m走で、ゴールで待っているお父さんやお母さんのところに走っていく場面がありました。お父さん、お母さんの方を見ると、すごく喜んで涙を流していらっしゃったので、後からお話を聞いたら、「あの子がこんなに距離を走ったのは初めてなんです」とお話されていて、とても感動しましたね。
この大会は、もちろんきちんとした競技大会ですので、ある程度は練習を積んでから出場するというのが本来の姿だとは思いますが、「多少なりとも練習して、大きな大会の競技に出場する」ということ自体は大変すばらしいことだと思います。
また、これまでの大会で、肝臓移植を受けた少年と心臓移植を受けた少女が100m走に出場し、他の選手に引き離されて負けてしまった時に、負けたことが悔しくて泣いている場面がありました。それまで病気で本当に苦労してきて、運動などできなかった子ども達が、走ったりできるだけでも素晴らしいことだと思うのですが、競技に出て、「負けて悔しい」という思いをすることで、「競技には勝ち負けがあるのだ」ということを知り、次なる目標を持って頑張っていこうという気持ちになるというのも、とても素晴らしいことだと思います。


― これまで参加された方が、「参加して良かった」と言っているのはどのような点ですか。

丸井先生:
「移植をして、海外に行くことができた」とか、「なかなか行くことができない遠くの国に来ることができた」という声もありますし、何らかの種目に出場してやりきって、「達成感を感じることができた」と話されていた方もいますね。
また、これまでの参加者の中には、日本で初めて腎移植後に出産された方がいらっしゃるのですが、移植して30年以上は経つと思われるのに、陸上の3㎞に出場したこと自体もすごいことなのですが、その方のご主人がいつもサポーターとして参加されているので、そのご夫婦を見ていると、「この大会を通じて、助け合い・励まし合う家族に出会えて良かった」と思いますね。


― そのような方々が、競技する姿を間近に見ることができるのは、競技に出場しない移植者にとってもいいことですね。また、大会には世界各国から選手が集まるので、世界中に友達ができる可能性もありますよね。

丸井先生:
そうですね。ぜひ同じ競技に出た選手には国内外問わず連絡を取るようにしてみると、次の大会で会うのも楽しみになりますし、いろいろな楽しみが広がると思います。
また、大会では、各国の参加者が自分の国の旗を持って、自国のカラーを身にまとって応援をするのですが、自分の国の代表を仲間として応援するという経験はあまりできるものではないと思うので、そのような経験ができることも大変貴重だと思います。


― 移植専門医にも同行いただけるので、安心感もありますね。

丸井先生:
私たちが参加することで、多少でも海外で時間を過ごすことに対する不安が減ればいいなと思っています。でも、実際に同行した感想としては、参加する人たちは、移植後1年以上を経過していることが条件ということもあってか、大病を克服した患者さんという印象を感じさせない方が多いですね。初めて参加された方の中には、「移植者でも、あんな風に不安を持たずに、のびのびとやっている人がいるのだ」と知り、新鮮な驚きを持つ方もいます。
私自身も同行する中で、参加者の皆さんのはつらつとした元気のよい姿を見て、自分自身の仕事のやりがいを再確認させてもらっていますね。また、参加者の方は旅慣れない人も多いのですが、海外でも物怖じせずにいろいろチャレンジしていらっしゃるので、一緒にいてとても新鮮です(笑)。


― どのような方に参加してもらいたいですか。

丸井先生:
2015年はアルゼンチンでの開催ですので、「めったに行けないところに、こんな機会だから一緒に行ってみよう!」という、チャレンジ精神がある方の参加をお待ちしています。


― 応援団としての参加でもよいのですか。

丸井先生:
もちろん大丈夫です。応援に来て、「この選手が出る時はここで応援して、この日とこの日は観光しよう」という感じでメリハリをつけて楽しまれたらいいと思います。
ただ、選手団としては行き帰りも含めて団体行動をとらなければいけませんので、事前に問い合わせていただいて、団体行動が難しい方は、別動隊として現地で少し交流する、というような形を取ってもらうのもいいかもしれません。


― 最後に、丸井チームマネージャーからの意気込みを聞かせてください。

丸井先生:
「全員で楽しんで無事に帰る」ですね(笑)。ぜひ選手として参加していただければ、きっといい思い出になると思います。


大会の詳細を知りたい方、大会参加希望の方は、日本移植者スポーツ協会のホームページをご確認ください。2013年の南アフリカ大会の様子もご覧いただけます。
これまでの大会の様子は日本移植者協議会のHPからもご確認いただけます。


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