母親からの大切な命の贈り物

1回目の移植手術はどの様な感じだったのでしょうか?

中井さん

中井さん:
母親と私とでは、体重の差がかなりあり、母親の腎機能も100点満点では無かったので、手術の際には先生に、「車で言うなら、3ナンバーのボディに軽のエンジンを積むようなものだから、オーバーヒートする可能性がありますよ」と言われました。

1回目の移植手術を終えてのお気持ちはいかがでしたか?

中井さん:
無事終わったのかなという気持ちでした。先生から「尿がよく出ていますよ」と声を掛けられて「ああ、よかった。」と思ったことを覚えています。
あとは、母親が大丈夫かとても心配でした。

手術後お母様の状態はいかがでしたか?

中井さん:
びっくりしたのは、母親が手術後3日位たった頃に、私の病室に歩いて会いに来た事です。1回目の移植手術の際は、ドナーの母の手術も開腹手術でしたので、すごいなと思いました。
その後私の状態も順調でクレアチニンの値も退院時までに徐々に落ち、その後3ヶ月くらいで正常値に近い値まで落ちました。母親がついてくれているのだな、と感じていました。

お母様とは手術後何かお話しされましたか?

中井さん:
母親には「本当にありがとう」と伝えました。退院後、私が実家帰った際には、食事に連れて行ってあげたりしました。
嬉しかったのは、母親に「大変だったでしょう?」と聞いた際、「これまで忙しくて検査もしていなかったから、自分の体をしっかりと診てもらえて良かったし、入院してゆっくり出来たのも良かった」と言ってくれた事です。私に気を使ってそう言ってくれたのかもしれないのですが、本当に嬉しかったです。

美味しい食事とタバコの誘惑

移植後、美味しかった食べ物は何ですか?

中井さん:
印象に残っているのは病院の朝ご飯です。手術前までは、汁が無いものしか出ませんでしたが、手術後の朝ご飯で、普通のご飯とみそ汁と納豆が出た事があり、とても感動しました。その他、野菜でもみずみずしいものや、水分を使っている料理を食べる事が出来るようになり、本当に美味しく、嬉しかったです。

その後の生活はいかがでしたか?

中井さん:
あまり大きな声では言えませんが、1回目の移植後の生活は管理が悪く、不摂生を続けてしまいました。先ほどお話ししたように、移植後、食べ物が美味しくなり、ほどほどにしておけば良かったのですがついつい食べ過ぎてしまい、加えて夜遅く食事をしていた事が原因で肥満の状態が続きました。また喫煙もしていました。

打田先生:
移植を希望されて受診された患者さんの4分の1が、喫煙者です。去年は、レシピエントの18%、ドナーの29%が喫煙者でした。こちらからは、喫煙者の方には全員タバコを止めて頂き、出来たら禁煙3カ月経ってから移植手術をしたいという希望をお伝えさせて頂いています。

移植後はどの様なお仕事をしていらっしゃったのですか?

中井さん:
東京本社でDI(ドラッグ・インショメーション)を担当していました。コールセンターで薬剤師や営業からかかってくる問い合わせに対し回答する部署です。移植後はもちろんフルタイムで仕事をしておりました。週3回の透析中は、定時より更に早めの時間に帰らなければならない状況でしたので、会社や周囲の方の理解はありましたが、自分の中で引け目を感じていました。移植後はその様な事もなくなり、普通に仕事をする事が出来ました。

2度目の透析導入

その後の病状はいかがでしたか?

中井さん:
定期的な通院の際にも痩せるように言われていたのですが、なかなか痩せず、クレアチニンが2を超すようになってからやっと10キロ程体重も落としましたが、その後クレアチニンの値は徐々に上がっていきました。

打田先生:
更に良くなかったのが、移植して5年後に罹った成人水痘ですね。治療の為に3週間免疫抑制剤を減らした為、クレアチニンが3mg/dlを超すようになり、蛋白尿が出るようになりましたね。
2003年から移植腎機能が低下し、2004年、2005年と頑張りましたが、クレアチニンが4,5,6mg/dlと上がっていき、2007年4月の透析導入時は9mg/dlを超す値にまでなっていましたね。

中井さん:
その後、透析再導入となりましたが、会社にも配慮して頂いた為名古屋に異動する事が出来、名古屋第二赤十字病院で透析を行う事になりました。