有限だから、頑張ろう

山本さん
移植してこんなに元気になる事ができ、今とても充実していますが、これが有限だと思うと、時々怖くなります。自分の体が、徐々に悪くなっていくことを既に経験しているので、またあれがくるのかな、くるのかもしれないと思うとすごく気持ちが沈みますね。

打田先生
それはすべての人に言える事です。どんな人でも、年齢を重ねるごとに、色々病気が出てきて、生物学的に有限だと感じ始め、自分も長く活動的には生きられないと感じてくるものです。
移植患者さんは、絶えず有限だという事を意識しながら、『だから頑張ろう、与えられた時間の中で出来るだけ頑張って楽しく充実した生活を送ろう』と、『有限』という事を意識して生活していくべきです。その限られた時間の中で、どれだけ有効に満足した生活を送るのかが大事だと思います。
移植を受けた人には可能な限りポジティブに生きて欲しいと思っています。有限だからとかいって落ち込まずに、『有限だから頑張ろう』と思ってもらいたいです。人間は例外無く、皆有限ですからね。

山本さん
移植された方やドナーの方は、普通の方より健康のありがたみを分かっているので、より自分の体の管理に気をつけているのではないでしょうか?

打田先生
私もそう思っていたのですが、ある病院で移植後の服薬の調査を行ったところ、予想より多くの方が、きちんと免疫抑制剤を服用していない事実がわかり、驚きました。
近年、腎移植手術は清水の舞台から飛び降りるような特別な治療ではなくなってきています。腎移植手術を受ける患者さんの3人のうち1人が透析治療を経ずに移植手術(先行的腎移植)を受ける時代になりました。先行的腎移植を受けるような患者さんは、血圧もコントロールされており、貧血もひどくない状態のまま、たまたまドナーがいたので移植手術する事になった、という様なケースが多いのです。透析療法の大変な生活を経験しないまま移植手術となってしまいますので、移植後の管理も徹底されていないという患者さんもいらっしゃいます。
移植された皆さんが、移植手術後何年経っても真面目にきちんとお薬を飲み、体重管理等の日々の健康管理をきちんと行っていれば、もっと移植の成績が良くなると思います。

これから移植を受ける方へ

今、熱中している事や将来の夢はありますか?

山本さん
夫の税理士事務所の総務、広報業務の他にFP(ファイナンシャルプランナ-)として講師の仕事を増やしていきたいと思っています。
山本富彦税理士事務所、株式会社アンドリュウHP
その他にも、真向法(まっこうほう)体操の講師やFMおかざきのパ-ソナリティのお仕事もやらせて頂いており、とても大切な時間ですので、続けていきたいと思っています。
FPの資格は透析をしていた頃、今から8年くらい前に取得しました。
真向法体操は、20歳くらいからずっと続けていましたが、移植後、せっかくなので指導出来る資格を取ろうと思い、資格取得後、3年位前から月に2回、教室を始めました。現在20人くらいの生徒さんがいらっしゃいます。
FMおかざきのパーソナリティは月に1回、金曜日の19:30より生放送を担当しています。『ミズエイジレス』という番組で、岡崎市内の女性で、仕事や様々な場面で活躍されている方をゲストにお迎えして、番組をお送りしています。
夫に頂いた健康な時間。夫、家族に感謝の気持ちを忘れず、これからも明るく元気に過ごしていきたいと思っています。

打田先生
夫婦間移植で、奥さんがご主人にドナーになってもらう場合、ご主人に申し訳ないと躊躇されるケースもあると思うのですが、その様な方々へのメッセージはありますか?

山本さん
そのご夫婦毎の考え方や間柄など、色々なものによって変わると思いますが、もし奥様が透析をされていて、すごく家庭が暗いとか、食事が美味しくないとかいう状況があるのであれば、移植して奥様が元気になられたら、家庭が明るくなり、美味しい食事が食べられるようになるという、とても幸せで楽しい生活がありますよ、という事を知って頂きたいと思います。
移植は、もらう人だけでなく、提供者にもメリットがあるという事を知って頂きたいです。

今後の移植医療に期待する事はありますか?

山本さん
慢性腎不全の治療に関しては、すべての医療機関が「血液透析、腹膜透析、移植」の3つの治療法について同じレベルで知識を持ち、患者さんに情報提供していただきたいと思います。
患者さんサイドも自分自身で情報収集する努力を怠らないことが大切だと思います。受け身ではなく、自分自身で情報を取りに行って欲しいと思います。インフォ-ムドコンセントを大切にし、納得したうえで治療を受けるように患者さん自身が気をつけていく必要があると思います。