透析導入へ

腎臓の合併症が出てきたのはいつごろでしょうか。

佐藤さん
28歳の時で、まもなく透析導入になりました。透析が始まると、トイレの回数が減って、体全体がパンパンにむくむようになりました。体重が10kgくらい増えて、今の倍くらいの体型になってしまいました。
水も、飲んだら飲んだだけ増えてしまいました。このころは、何をするにも疲れてしまって、どこへも行きたくありませんでした。何のやる気も起きず、1日中家で寝ていることが多くなりました。

その時もお仕事はしていらっしゃったのですか。

佐藤さん
はい。でも、月曜、水曜、金曜が透析でしたので、かなり制限がありました。透析の日は午後まで仕事をして、夕方から透析に行っていました。

透析治療は順調でしたか。

佐藤さん
透析は結構大変でした。血管が複雑だったようで、返血がうまくできなかったので、両腕を使わなくてはいけなかったのです。


圷先生
佐藤さんは血管が細く、シャントがあまり太く作れませんでしたね。

シャント以外のトラブルもありましたか。

佐藤さん
シャント以外もわりと大変でした。透析が終わった後は、フラフラしてぐったりという感じで、家まで帰るのがやっとでした。

移植の情報に触れて

膵腎同時移植に関しての情報や知識は、いつ、どのようにして知ったのでしょうか。

佐藤さん

佐藤さん
透析が始まったころに、透析病院の先生に勧められて知りました。一番初めに移植の話を聞いたのはシャントを作った時です。その時は、「『移植をしないと明日死にますよ』と言われたらやります」くらいの感じで、移植を受けるつもりは全然なく、「透析で何とかなるなら、ずっと透析でやっていこう」と思っていました。

透析はとてもつらかったとのことでしたが、それでも透析でやっていこうと思っていたのですか。

佐藤さん
そうですね。透析はつらかったのですが、透析の次の日はすっきりしていましたので。朝起きると血圧は下がっていて、体はすっきりして楽になっていました。「透析の日は大変だけれど、一日我慢すれば翌日は楽だから」と思っていたので、移植は頭にありませんでした。

そのころは、移植にはどういうイメージを持っていたのですか。

佐藤さん
本当に、「死ぬ間際の治療」というイメージです。


圷先生
実際は、お亡くなりになる間際の状態では移植できないですからね。もちろん人にもよりますが、移植の方が圧倒的にいいですから、特に若い方には移植をお勧めします。時間が自由になりますし、食べられるものも増えます。活動範囲、活動量も増えます。


佐藤さん
最初は移植を受ける気持ちはなかったのですが、同じ病院に膵腎同時移植を受けられた方がいて、直接お話は聞けなかったのですが、先生が、「あの人も移植をして、とてもよくなったよ」とおっしゃっているのを聞いて、「私ももし、少しでもよくなるのなら・・・」と思い、移植に興味を持つようになり、移植希望の登録をすることにしました。

膵腎同時移植の場合、移植を受けるための登録までには、どのくらいの時間がかかるのですか。

圷先生

圷先生
昔は1年近くかかることもありましたが、今はそんなにかかりません。評価のための入院が大体2週間くらいで、調整委員会に申請して承認されれば登録、という流れで、大体3カ月くらいです。
腎臓はすぐに登録できますが、膵臓の評価はかなり厳しいので、腎臓よりも時間がかかります。

膵腎同時移植希望の登録後、移植についてはどのような勉強をしましたか。

佐藤さん
移植希望の登録をした際に、コーディネーターの方から、本やDVDを頂いたのですが、まだ本気で移植を受ける決心がついていなくて、勉強はあまりしませんでした。ただ、移植の連絡は突然あるということと、入院するための準備をしておくということは、頭に入れておきました。

3度目の連絡

移植希望の登録後、移植するまでには何回か連絡があったのでしょうか。

佐藤さん
移植するまでには、3回連絡を頂きました。3回目の連絡は、登録から1年くらいたったころにありました。

3回目の連絡の時は、どのようなお気持ちでしたか。

佐藤さん
「どうしよう・・・」という気持ちと、「移植したい・・・」という気持ちが混ざって、ぐちゃぐちゃな感じでした。「1番目です」と言われて、「ええっ!?」と思ったのですが、移植を受けることを決めました。電話がかかってきたのは、夜中の1時か2時くらいで、母が取ったのですが、私もまだ起きていました。

橋詰コーディネーター

橋詰コーディネーター
夜中の1時半ごろに佐藤さんの家に電話をかけると、お母様が出て、「一度考えさせてください」と言われて、一旦電話を切りました。15分後に、もう一度電話をすると、佐藤さんご本人が出て、「移植を受けます」とおっしゃいました。移植手術や入院に関する説明をして、病院に来ていただき、午前中に手術前検査をして、手術となりました。

手術前に、ご両親とは何かお話をされましたか。

佐藤さん
私はそこまで切羽詰まった感じではなかったのですが、両親は、「寝ていれば大丈夫だから・・・」と言いながらも、そわそわしていました(笑)。