食事がおいしくなって

移植後、お母様に対しては何か特別にイベント等は行っていますか。

佐藤さん
特別なイベントはしていませんが、私は自宅で店をやっており、母とは仕事も一緒にしていますし、実家も近所にありますので、これからも近くで一緒に暮らしていきたいと思っています。

移植をしてから一番良かったこと、うれしかったことはどのようなことですか。

佐藤さん
まともなものを食べられるようになったことですね。普通に白米が食べられるというのは本当にうれしいです。念願のフライドポテトも食べることができました(笑)。

やはり、移植後の食事はそれまでとは劇的に変わりますよね。

佐藤さん
そうですね。量に関しても、移植前はたくさんは食べられませんでしたので、好きなだけ食べられるようになって、「ああ、よかったな」と思いましたね。また、退院後、再入院した際に出てきた病院の食事が、成人の一般食になっていたのは、ちょっとうれしかったです。食事に「味がある」と思いました(笑)。味に関しては、腎臓が悪くなり、食事療法をするようになってから、「これまでいかに味の濃い物を食べていたか」ということに気付かされました。今では、外食をすると、「なんでこんなに味が濃いの?」と思うようになりましたね。


食事


和田さんは、移植後の患者さんの食事指導の際には、どのようなお話をされるのですか。

和田管理栄養士
移植後3カ月くらいまでは、お刺身や卵、生肉は食べないように指導しています。生野菜や果物などのその他の生ものについては、注意して食べていただくようにお伝えしています。

移植後の食事で、生もの以外で特に注意することはありますか。

和田管理栄養士
やはり移植後も塩分は取り過ぎないようにしていただきたいです。常食の場合は、1日に9g未満ですが、塩分を1日9gに抑えるのは、実際にはとても大変なことです。栄養相談でもそこの部分を意識しています。

こちらの病院では、食事指導はすべて栄養士さんが行っているのですか。

岩本先生
そうですね。医師からは、「グレープフルーツは食べてはいけません」というような基本的なお話はさせていただきますが、あとは、「食事を楽しんでください」というスタンスで、専門的な細かい食事指導は栄養士さんにお任せしています。

移植後、食事の制限がほぼ無くなったこと以外にも、良かったことはありますか。

佐藤さん
移植前に比べて疲れにくくなり、普通に仕事ができるようになったことです。職場に復帰して間もないころは、外で仕事をするとすぐに息が上がってしまっていたのですが、今は第一線でできるようになりました。忙しいときは、自分が率先して外に出ていきます。今年の夏は、10mくらいの高い所に登って作業をしたり、100㎏くらいの物を引きずったりもしましたので、「だいぶ回復したな」と思いましたね。結局、体力的に戻らないと、やる気も出ないですしね。30分しかできなかったものが1時間に伸び、半日可能になり、その後フルで働けるようになって、という段階を経てきたので、「以前の状態に戻ってきている」と実感しています。

移植後の日常生活では、移植腎のためにどのようなことに気を付けて生活をしていますか。

佐藤さん
減塩は努力して行っています。また、体調管理にも気を付けていますね。夜は、子どもと一緒に家族みんなで21時くらいには寝てしまいます。ぐっすり寝て、朝早く起きる。まるでおじいちゃんみたいな生活です(笑)。

日常の服薬や、血圧、体重等の記録はどのような方法で行っていますか。

薬の管理法

佐藤さん
基本的に、紙に記録をしています。薬は常に3日分、分かるところに吊るしています。また、最低1日分は、常に普段持ち歩いているバッグに入れていますね。

病院では、薬を常に持ち歩くように指導されているのですか。

岩本先生
予備薬に関しては、何があるか分からないので、1週間程度は持ち歩いた方がいいとお伝えしています。

移植後、新たに始めたことや、今後の夢はありますか。

佐藤さん
体力回復のための、朝の散歩を始めました。近所を少しずつ、1日30分くらい、飼い犬と一緒に歩いています。今後の夢は、自分とその周りの人々が、幸せになることですね。これは、自分の信条です。「自分に関わった人間は、とにかく幸せになってほしい」と思っています。家族は絶対に不幸にしたくないので、自分にできることがあれば、必死にやろうと思っています。以前の利己的な生活から逆転しようと思っていますね。


岩本先生
それは、移植をしたから変わったのですか。


佐藤さん
移植前も、もちろんそのような思いは根底にはあったと思いますが、こうやって表に出すようになったのは、移植後からだと思います。


毎日の散歩・大切な家族と一緒に