妻の行動力

そのような状況の中、何故移植を選択されたのでしょうか?

熊野さん
妻からの積極的な勧めがあり、様々な心の葛藤はありましたが、最終的には移植をすることに決めました。

ドナーである奥様は、どの様にして移植に関しての情報を集められたのですか?

奥様

奥様(ドナー)
医療関係の仕事に携わってきたこともあり、腎不全の治療の選択肢として、腎移植があるという事は知っていました。 また夫は定年を前に腎不全が急速に進み、精神的にも参っていましたので、早く何とかしなければと考えるようになりました。 地元の腎友会の存在等も知っていたため、移植経験者の方を紹介してもらい、その方のお話を二人で聞いたり、電話で情報を得たりしました。
そんな矢先、たまたま娘が、九州大学病院の先端医療である腎移植について学ぶ機会があり、移植が私達にとっても、より現実のものとして具体化していきました。
夫が通院していた地元の病院の先生は、移植には消極的で、なかなか紹介状を書いて頂けなかったのですが、何度も足を運び、なんとか九大病院への紹介状を書いて頂きました。

先生、熊野さんのように、かかりつけの医師から情報が得られない患者さんも多いのでしょうか?

北田先生
透析導入をするような病院でしたら、腎不全の治療の選択肢として腎移植があるという事をお話しして頂けるとは思うのですが、担当の先生によっても対応は異なるようですね。
もし、熊野さんの担当医だった先生が20年位前の移植医療の知識をもとに移植を勧めなかったのであれば、現在の移植医療は違う、劇的に進歩したという事を知って欲しいですね。
熊野さんのように患者さん自らが必死に情報収集しないと移植の情報が入らないという状況はなんとかしたいと思っています。その為には腎不全の治療に関わる医療スタッフの認識を変えていかなければならないですね。

北田先生との出会い

その後、北田先生と初めて移植について話したのはいつ頃でしたか?その時にはどの様なお話がありましたか?

熊野さん
2007年8月です。腎機能の状態と年齢などから、早めに移植を行った方がいいと言われました。その為にはまず組織適合性検査も含め、ドナーの詳しい検査が必要だと言われました。
具体的な検査の説明がありましたので、「移植が出来るかもしれない」と思いました。ここで北田先生はじめ、移植チームの先生方に巡り合えたことが、私達夫婦の人生を大きく変えました。

熊野さん

先生、初めて移植の話を聞きに来られた患者さんにはどの様なお話をされるのですか?

北田先生
まず一通りの流れとして、透析と移植、それぞれのメリット・デメリットをお話しします。現在の日本の移植では生体腎移植の方が現実的、しかしその場合腎臓を提供して下さるドナーさんが必要となりますが、ドナーさんの安全性について話をさせて頂きますね。
そして、レシピエント、ドナー共に様々な検査をしなければなりませんが、検査に問題がなければ移植は出来ます、あとは任せてください、とお話ししますね。

奥様は、先生のお話もお聞きし、ドナーになれる可能性があると分かった時はどの様な気持ちでしたか?

奥様(ドナー)
私自身は先生のお話を伺う前から夫のドナーになることを望んでいましたので、とても嬉しかったです。

ドナーになることに不安や心配なことはありませんでしたか?

奥様(ドナー)
娘が一人っ子ですので、私達夫婦二人に何かあったらどうしようとか、夫の兄弟が私のことを気遣ってくれるあまり、移植に対してあまり賛成してくれなかった事など、気苦労は尽きなかったのですが、乗り切るしかありませんでした。九州大学病院の医療を信じていこうと思っていました。

ご自身のご兄弟からの反対などはありましたか?

奥様(ドナー)
私の親族は逆に応援してくれました。私自身が率先して移植の話を進めていたというのもあるとは思いますが(笑)。