腎移植医療との出会い

糖尿病腎症についてはどのような病状だったのでしょうか。

政二さん
腎臓については、救急搬送された病院で診てもらっていましたが、クレアチニン値も上がってきていたので、そろそろ透析の準備を始めなければいけない状況でした。そのため、シャントを作ったのですが、血管が細く硬くなってしまっていたため、1週間もしないうちにつぶれてしまったのです。
そのような状況の中、愛知医科大学病院から来られていた腎臓内科の先生が、「今度この病院で、愛知医大の先生が腎移植の説明会を行うから、聞いてみたらどうですか」と言ってくださったのです。説明会に参加した後、愛知医大を受診し、移植に向けて話を進めていきました。

腎移植と聞いてどう思いましたか。

政二さん
妻の病気が悪化しているのは分かっていたので、このままだとあと何年ももたないだろうと思っていましたし、透析のためにシャントを作ってもすぐにつぶれてしまったので、透析も難しいのではないかと思っていました。
当時は腎移植についてはまったく知識がありませんでしたが、早くなんとかしたいという気持ちが先にあり、自分がドナーになることに対して若干の不安はあったものの、特に心配はしていませんでした。

奥様はどう思っていましたか。

光子さん
自分のことよりも、私に腎提供してくれることで主人に何かあってはと、そちらの方が心配でした。そのため、主人と何度も話し合いました。

ご夫婦でいろいろなお話をされて、最終的には移植をしようということになったのですね。

政二さん
先生方やコーディネーターの渡邉さん、そして愛知医大で移植をされた方に直接お話を聞く中で、妻の不安が徐々に払拭されていったのだと思います。

愛知医科大学病院では、移植を受ける意思決定をするまでに、どのくらい外来を受診するのですか。

渡邉RTC

渡邉コーディネーター
最低でも3~4回は受診していただきます。初診後、検査を受けてみるというお話になれば、検査を受け、結果をみながらお話するなど、徐々に進めていきます。

政二さん
移植手術までには3泊4日くらいの検査入院もありましたので、その時にも、先生方や渡邉さんとじっくりとお話しできる機会がありました。ただ、私たち夫婦は、検査が始まる前から移植するという意志だけは決まっていましたね(笑)。

渡邉コーディネーター
ドナーもレシピエントも、移植手術の前には、体の検査はもちろんのこと、精神科も受診していただき、手術を受けても問題がないかを判断してもらっています。また、移植直後と移植1年後にも精神科を受診してもらっています。

移植手術前の検査で、特につらい検査はありましたか。

政二さん
つらい検査はありませんでしたが、当時喫煙していたので、たばこを止めないと腎提供はできないと言われ、手術の2カ月前から禁煙しました。それが少しつらかったですね。

渡邉コーディネーター
たばこを吸っていると手術中のリスクもありますので、喫煙者には、移植手術前からたばこを止めていただき、移植手術後ももちろん禁煙を続けてもらっています。

政二さん
現在もたばこは吸っていません(笑)。以前も一度止めたこともあるのですが、止めようと思えば案外簡単に止められるものですね。

奥様はつらい検査はありましたか。

光子さん
それまでがあまりにもいろいろとありすぎたので、移植前の検査でつらいと感じることはありませんでした。

政二さん
妻は、移植前はあまり笑顔を見せなかったのですが、移植のための検査を受け始めたころから少しずつ笑顔が出でてきて、冗談も言えるようになりました。

移植に向けて進めていく中で、希望が見えてきたのでしょうか。

光子さん
こちらの病院で移植を受けられた方とお話しする機会もあり、皆さんから、「大丈夫ですよ」と言われる中で、少しずつ希望が出てきたことを覚えています。