元気を取り戻して

その後、献腎移植希望の登録をしている間は、どのようなことに気を付けて生活していらっしゃいましたか。

パリでの透析中

大川さん
普通に透析生活を続けていましたが、体調をベストな状態に保つことが大事だと思い、食事には特に気を付けていました。制限がありながらも、いかにコントロールして上手に好きなものを食べるかということをいつも考えていました。
そのように体調管理を行っていましたが、移植の連絡をいただいた年には、それまで透析を受けてきた中でも一番調子が悪くなっていました。フランスにも旅行したのですが、現地の透析施設でよく顔を合わせていた日本人の友人からも、「大川さんにしては調子が悪そうね」と言われていました。そのような状態でしたので、「これで旅行も最後かな」と思っていたのです。

献腎移植の連絡を受けた時はどのようなお気持ちでしたか。

大川さん
ドキドキしました。「本当かしら?」とも思いました。朝食を取っていた時に電話があり、もちろん急なことでしたので、「30分後に返事をします」と答えました。主人に話をすると、「受けなくては駄目だよ、受けなさい」と言われ、受けることにしましたが、やはりパニックになりましたね。急いで入院準備をして、タクシーで病院に駆けつけました。
病院に着くと、まずはいろいろな検査を受けて、主人と二人で説明を聞き、主人には手術にも立ち会ってもらいました。それまでもいろいろな手術を受けており、全身麻酔も4~5回受けていたので、手術自体は怖くはありませんでした。

移植手術を終えた時の心境はどのようなものでしたか。

大川さん
何も考えられず、だいぶ時間がたってからうれしさがこみあげてきました。このうれしさは言葉には言い表せません。

手術後の経過はどうでしたか。

大川さん
傷の痛みを感じることもあまりなく、術後の経過もとても順調でした。入院は3週間くらいでした。
今野先生は本当に手術が上手で、今は傷がほとんど見えなくなりましたね。


今野先生
入院が3週間というのは、献腎移植では短い方ですね。普通は3週間~1カ月くらいです。大川さんは術後すぐに尿も出て、特に問題もありませんでした。膀胱がかなり小さくなっていましたが、排尿も比較的スムーズでしたね。


大川さん
排尿に関しては、最初は15分~20分おきでしたので、眠れなくてつらかったですね。大変だという話を先生にしたら、「それが仕事でしょ」と言われましたが(笑)。

どのくらいで眠れるようになりましたか。

大川さん
眠れなかったのは2日間くらいで、その後は徐々に排尿の間隔もあくようになり、1週間くらいで普通になりました。
術後の経過が本当に順調でしたので、病院のお掃除のスタッフからも、「あんた元気だね」と言われていましたね(笑)。


今野先生
大川さんは誰が見ても本当に元気ですよね。入院中も、よく元気におしゃべりされていたのを覚えています。ここ数年はさらに元気になられたような印象です(笑)。


大川さん
主人からも、「移植して元気になって、さらに口が達者になっちゃったから、口を縫ってもらった方がいいんじゃないの?」と言われるのですが、「私からおしゃべりを取ったら死んじゃう」と言い返していますね(笑)。

黒沢看護師は、病棟で移植患者さんを多く診ているということですが、移植手術の入院の際には、どのような点に気を付けていらっしゃいますか。

黒沢看護師

黒沢看護師
透析歴が長いと、食事管理や日々の体調管理をご自身でできている人と、できていない人がいらっしゃるので、退院してから困ることがないように、手術後早めにさまざまな指導をするようにしています。例えば、「食事は制限が無くなるので、食べ過ぎないように」とか、「水分は、透析中は制限されていましたが、移植後はある程度の量を飲まなければいけません」ということなどです。