世界中を旅して
移植をしてから一番良かったこと、うれしかったことはどのようなことですか。
大川さん:
いろいろなことを気にせずに食事ができるようになったことや、水をたっぷり飲めるようになったこと、旅行がたくさんできるようになったことなどです。水分に関しては、約20年間、「飲むな」と言われ続けてきましたので、飲んでいいとなっても、いきなりたくさん飲めるようにはならないですね。飲めて1日1リットルくらいです。
今野先生:
いきなりたくさんは飲めないかもしれませんが、以前、「移植後は、汗をかくようになった」とおっしゃっていましたね。
大川さん:
そうです。透析時代はほとんど汗をかかなかったのですが、移植後は、夏場に少し庭作業をしただけで、体中ビッショリになるくらい、汗をかけるようになりました。
移植後の日常生活では、移植腎のためにどのようなことに気を付けて生活をしていますか。
大川さん:
やはり、腎臓が1つですので、疲れたらすぐに休むようにしています。あとは、私は漬物が大好きなので、塩分の取り過ぎに気を付けています。朝食で少し塩分を取り過ぎてしまったら、昼、夜で減らすなど、1日の食事でバランスを取るようにしています。
日常の服薬や、血圧、体重などの記録はどのような方法で行っていますか。
大川さん:
血圧、体重の記録はしていませんが、頻繁に測っています。服薬に関しては、計算も暗算している方が頭のためにもいいのと同じように(笑)、頭にしっかりとインプットして、忘れないようにしています。
移植後、新たに始めたことや、今後の夢はありますか。
大川さん:
透析中は、海外旅行先にはかなり制限がありましたが、移植後は、いつでも、どこへでも行けるようになりました。今後は大きな国以外でも、島や、アフリカ、南米などにも行ってみたいです。
私は動物がとても好きで、特に霊長類が好きなんです。透析中は、シンガポールでオランウータンと一緒に食事をしたこともあるんですよ。
今年は1人でドイツに旅行しましたし、来年はコスタリカに行く予定です。
今野先生:
海外旅行に関しては、移植後、だいたい1年くらいたてば許可を出しています。ただ、感染症についてはよく情報収集して旅行先を決めていただきたいと思います。海外旅行に行く前には必ず、主治医に相談してください。
感謝とメッセージ
手術を担当された今野先生や、八王子医療センターのスタッフにお伝えしたいことはありますか。

大川さん:
今野先生はいつも頼りにしていますし、どんなときでも信じています。これからもよろしくお願いします。また、八王子医療センターの看護師さんにもとてもお世話になりました。こちらの病院の看護師さんは本当によく働いてくださいます。「ナースステーションに居ないで、患者さんのベットサイドに行きなさい」という指導が徹底しているのだと思います。加えて、栄養士さんもしっかりされていて、病院の食事もとてもおいしかったです。
提供ドナーの方への思いを教えてください。
大川さん:
ドナーの方のことはいつも考えています。本当に、ドナーの方には感謝というレベルではなく、何と言っていいのか分かりません。日々、おなかに手をあてて、「ありがとう」と言っています。大切にして長く一緒に生きたいと思っています。
現在、献腎移植を待っている方や献腎移植希望登録を検討している方へメッセージをお願いします。
大川さん:
献腎移植を待っている方は、希望を持って、諦めずに登録を続けてください。私も諦めかけていましたが、機会は巡ってきました。また、移植費用が高いと勘違いしている方も多いようで、私が移植をした際には、「いくらかかったの?1000万?」などと聞かれることも多かったのですが、「ほとんどが保険診療内で収まる」ということを知ってほしいと思います。
そして、多くの人の命を助けるためにも、臓器提供意思表示が増えることを願っています。
最後に今野先生からも移植を検討している方や待機している方々へメッセージをお願いします。
今野先生:
大川さんもおっしゃっていましたが、現在透析治療を受けている方は、まずは列に並ばないと始まりませんので、献腎移植希望の登録をしていただきたいと思います。また、登録後は、病院から連絡があったら、1年に1回は外来に来ていただき、体の状態を確認するのはもちろんのこと、「移植を待っているのだ」ということを、再認識していただきたいと思います。病院に来ることで、医師やスタッフとの面識もでき、実際に移植の連絡があった際にも、緊張せずに手術に臨むことができると思います。