手術を乗り越えて

そして、無事、移植手術を終えたわけですが、その時の心境を覚えていますか。

串田さん
移植手術後、個室に戻った時に、体に力が湧いてくる感じがしました。移植前は力が入らずフニャフニャだったのに、移植後は体の底から「グワーッ」と力が湧き出てくるんです。「これが元気な人間なのかな」と思いました。

手術後の経過はどうでしたか。

串田さん
術後はとてもすっきりした感じがして、尿もすごく出ましたが、それは束の間でした。移植して1週間後くらいに、尿管が詰まり癒着してしまったので、腎瘻(じんろう)を行いました。


岩本先生
腎臓に針を刺して、尿を逃がす処置をしたんですね。


串田さん
12月16日に移植手術を受け、翌年の1月半ばに退院し、4月にバイパス手術をして、ようやく普通に排尿できるようになりました。病院のトイレで立っておしっこができた時は、本当に感動しましたね。2~3歳の男の子でも普通にできることを、また久しぶりにできた喜びといったら、あんなにうれしいことはありませんでした(笑)。
でもその年の10月に、今度は自分の腎臓が炎症を起こしてしまい、摘出手術を受けました。

移植後も本当にいろいろとあったのですね。先生、糖尿病の方の場合、やはり移植後のトラブルは多いのでしょうか。

岩本先生

岩本先生
糖尿病ではない人に比べると、動脈硬化に関連した血管系の問題や、感染症が多いです。ただ、「糖尿病で透析をしている人」と「糖尿病で移植をした人」の比較では、移植をした人たちの方が、寿命は長くなりますね。

糖尿病の人も積極的に移植を検討された方が、生存率も含めて確実によくなるということですね。

岩本先生
そうですね。ただ、糖尿病の人は透析期間が長くなると、糖尿病でない人たちに比べて動脈硬化が早く進むので、もし移植の機会があるのであれば、早めに移植をされた方がいいと思います。

森屋看護師は、病棟で移植者の方の看護されるときに、特別に気を付けていることはありますか。

森屋看護師

森屋看護師
生体腎移植の場合、入院中にレシピエントとドナーが常に会えるわけではないので、例えば、レシピエントの方に、「今日はドナーさん、こんな具合でしたよ」とか、「歩けていましたよ」とお伝えするようにしています。ドナーの方の元気な様子をお伝えすると、レシピエントの方は皆さんうれしそうにしていらっしゃいますね。

ご主人は術後少し大変な状況がありましたが、ドナーである奥様の術後の経過はどうでしたか。

奥様
手術前は、「移植手術なんて出産に比べたら屁でもない」と思っていたのですが(笑)、手術直後は本当に痛かったです。


串田さん
手術後、集中治療室から個室に移ると、見舞いに来てくれていた2人の娘が、「お父さん大変!お母さんが、おばあちゃんみたいになっちゃったよ!」と言っていたので、大丈夫だろうかと思っていました。その後、妻が、「痛いよ~」と言いながら、点滴を持って私の病室に来てくれたのですが、その姿が本当にヨレヨレだったので、「うわぁ、本当におばあちゃんになっちゃったよ」と思い、とても心配しましたね。


奥様
その時は本当に痛くて、涙を流しながら主人に会いに行きましたね(笑)。でも痛かったのは2~3日で、4日目くらいからは痛みもありませんでした。
ただ、抜糸の時には少し痛かったですね。私はすぐに泣いてしまう方なので、抜糸するだけで、「うわーっ」と叫んでいました(笑)。


岩本先生
人によっても違いますが、やはり手術直後はレシピエントより、ドナーの方が、痛みを訴える人が多いです。でも、その後の回復はやはりドナーの方が早いですね。