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後藤 憲彦先生 コラム

腎移植後の外来ではさまざまな検査が行われます。腎移植後に検査値をみる上で知っておくべきことや、移植内科医がどのようなポイントをみているのかについて、名古屋第二赤十字病院の後藤憲彦先生にシリーズで解説していただきます。
第1回目はクレアチニン(CRE)についてです。


①クレアチニン(CRE)とは

腎臓

クレアチニンは、筋肉の収縮に必要なクレアチンというアミノ酸が分解されたあとに出てくる老廃物です。 クレアチンは肝臓で生成され、筋細胞に取り込まれます。その一部は代謝されてクレアチニンとなり、血液を介して腎臓に運ばれ、腎臓の糸球体でろ過された後、尿中に排泄されます。
腎機能が低下し、ろ過機能が衰えると、クレアチニンがろ過されずに血液に戻されてしまうため、血液中のクレアチニン濃度は上昇します。



②血清クレアチニンの基準範囲(*1) 基準範囲は施設によって異なる場合があります。

男性:0.65~1.07㎎/dL
女性:0.46~0.79mg/dL

・血清クレアチニンの量は筋肉量によって個人差があります。一般的に、男性は女性より数値が高く、小児や高齢者の数値は低くなります。
・0.2~0.3mg/dL程度の値は日々変化することがあります。


③腎移植後にクレアチニン値をみる上でのポイント

患者さんが持つ筋肉から腎機能を簡単に評価できるクレアチニン値の検査は、侵襲性がなく何回も検査できることから非常に有効です。しかし、通常の日常生活でも起きうる少しの脱水や運動によっても値は上下することがあります。異常値を問題にするのか問題にしないのかを1回の受診だけで決められないこともあります。クレアチニン上昇の原因を説明できない時には、数日経過したクレアチニンを再検して、経時的にフォローしていくことが重要です。

腎移植後クレアチニン値の正常値はありません。レシピエントの筋肉量、ドナーとの体格差、提供された腎機能により基準値が決まります。通常は、移植腎機能が最もよい移植後1カ月前後の値を指し、1.0㎎/dL前後です。肥満があるレシピエントや、ドナーが体格の小さな親や妻の時には、ドナーとレシピエントの体格のミスマッチから、クレアチニンは1後半から2前半が基準値になることもあります。ベースラインの値はそれぞれのレシピエントにより異なり、クレアチニン値を他のレシピエントと比べて一喜一憂することは意味がありません。

クレアチニン値は、急性の腎機能変化を見るのには最適な検査です。
ベースラインから上昇した時には、急性の問題がどこに起きたかを鑑別する必要があります。下痢や嘔吐、発熱、全身感染症などによる脱水で、移植腎へ流れる水分が減ってしまう場合、急性拒絶反応や移植腎の感染症(BK腎症やアデノウイルスなど)により、移植腎自体に問題が起きた場合、移植腎で尿は作られているが、尿管狭窄や移植腎結石などで体外に出すことができない場合、の3つを考えます。いずれもすぐに対応しなければいけませんが、特に迅速な対応が必要なのが急性拒絶反応です。
薬による上昇もあります。シクロスポリンやプログラフの濃度が高い時、レニンアンジオテンシン系阻害薬で血圧管理をしている時、ニューモシスティス肺炎予防のST合剤を内服している時は、それらの薬がクレアチニン値を上昇させる可能性があります。いずれも薬を減量や中止すれば元に戻るため、心配ありません。
激しい運動をして筋肉の崩壊が増えると、クレアチニンが大きく上昇することがあります。移植腎エコーで急性拒絶反応が否定できれば、運動中止で元に戻ってきます。

慢性の腎機能変化では、蛋白尿増加がクレアチニン上昇よりも先に動きます。急性拒絶反応のリスクが少なくなる移植後1年以上経過後、長期的な移植腎の維持を目標にした時は、蛋白尿にも注意する必要があるでしょう。


*1 日本臨床検査標準化協議会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲案-解説と利用の手引き-2014年3月31日修正版」




腎移植後の管理で重要な検査値解説 掲載予定内容

【1】クレアチニン(CRE)

【2】eGFR

【3】尿酸(UA)

【4】尿潜血

【5】尿蛋白

【6】尿沈渣

【7】白血球数(WBC)

【8】カリウム(K)

【9】カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)

【10】中性脂肪(TG)

【11】LDL‐コレステロール(LDL‐C)、HDL‐コレステロール(HDL‐C)

【12】ヘモグロビン(Hb)

【13】空腹時血糖

【14】HbA1c

【15】75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)


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