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後藤 憲彦先生 コラム

腎移植後の外来ではさまざまな検査が行われます。腎移植後に検査値をみる上で知っておくべきことや、移植内科医がどのようなポイントをみているのかについて、名古屋第二赤十字病院の後藤憲彦先生にシリーズで解説していただきます。
第10回目は中性脂肪についてです。


①中性脂肪とは

食べ過ぎ

中性脂肪とは、体を動かすエネルギー源となる物質で、体脂肪の9割を占めています。3つの脂肪酸とグリセロールという物質が結びついてできていることから、トリグリセリド(TG)と呼ばれます。
食事から摂取された中性脂肪は小腸から吸収されて血液中に入り、エネルギー源として使用されます。余分なものは肝臓で中性脂肪に再合成され、予備用エネルギーとして脂肪組織や肝臓に貯蔵されます。
しかし、脂肪やカロリーを取り過ぎて、血液中の中性脂肪が増えすぎると脂質異常症となり、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えて動脈硬化が進行します。また肝臓に蓄積し、脂肪肝となり、肝臓の機能が低下して肝硬変や肝臓がんに移行する可能性があります。
逆に、血液中の中性脂肪が低い場合は、肝臓や腎臓の機能低下や、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などが疑われます。


②中性脂肪の基準範囲(*1) 基準範囲は施設によって異なる場合があります。

男性:40~234mg/dL
女性:30~117㎎/dL


③腎移植後に中性脂肪をみる上でのポイント

中性脂肪は、血糖と同じように食事によって大きく変化しますので、まず検査値が空腹時に採血されたものかを確認します。
中性脂肪はいろいろな原因で上昇します。腎移植後に中性脂肪が上昇する原因として可能性があるものは、肥満、コントロール不良な2型糖尿病、腎機能低下、甲状腺機能低下症、妊娠、エストロゲン製剤内服、シクロスポリンやステロイドの使用などです。
中性脂肪の動脈硬化への関与は、コレステロールに比べて少ないとされています。また、どのレベルまで下げておけばよいのかというきちんとしたデータはありませんが、500mg/dL以上では内服治療を併用するのが一般的です。
まずやるべきことは、生活習慣の改善です。肥満があるレシピエントの減量、有酸素運動、糖分摂取を控える、アルコール摂取を控える、糖尿病を有するレシピエントはきちんとした血糖管理などが必要です。これらができれば、中性脂肪はかなり減少してきます。
シクロスポリンやステロイドは、移植後3カ月間の投与量が多いです。その間の中性脂肪は高めに推移します。3カ月以降の中性脂肪が500mg/dLと高いときには、EPA(イコサペンタ酸エチル)を内服開始することもありますが、ほとんどが、体重管理ができていないレシピエントです。


*1 日本臨床検査標準化協議会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲案-解説と利用の手引き-2014年3月31日修正版」




腎移植後の管理で重要な検査値解説 掲載予定内容

【1】クレアチニン(CRE)

【2】eGFR

【3】尿酸(UA)

【4】尿潜血

【5】尿蛋白

【6】尿沈渣

【7】白血球数(WBC)

【8】カリウム(K)

【9】カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)

【10】中性脂肪(TG)(今回)

【11】LDL‐コレステロール(LDL‐C)、HDL‐コレステロール(HDL‐C)

【12】ヘモグロビン(Hb)

【13】空腹時血糖

【14】HbA1c

【15】75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)


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