湘南鎌倉総合病院 レシピエントインタビューは、約7年前にお父様がドナーとなり、生体腎移植を受けた平山明美さんです。平山さんは37歳の時に急速進行性糸球体腎炎と診断され、39歳で腹膜透析導入となり、6年後には血液透析を併用するようになりました。47歳の時にくも膜下出血で倒れ一命を取り留め、その時にご家族の申し出により移植を受けることを決断されました。移植手術に至るまでのお話や移植後しばらくの苦労、その後の充実した生活などについて、さまざまなお話をお聞きしました。

平山さんが移植を受けるまでの経緯

  • 35歳 むくみやすく、疲れやすくなり、ひどい頭痛が起こるようになる
  • 37歳 貧血症状があり受診 ステロイド治療、食事療法開始
  • 39歳 腹膜透析導入
  • 45歳 週1回血液透析を施行し腹膜透析と併用する ハイブリッド療法 へ移行
  • 47歳 くも膜下出血で手術を受ける
  • 47歳 生体腎移植手術

腹膜透析導入へ

慢性腎臓病の症状が出始めたのはいつ頃ですか。

平山さん
結婚して子どもを産むまではとても健康だったのですが、子どもを産んでから疲れやすくなり、35歳くらいから体調が悪いことが多くなりました。当時は2人の子どもが幼稚園に通っていて毎日忙しかったので、頭が痛くても頭痛薬を飲んで我慢していました。健康診断を受けたり、自宅で血圧を測ったりすることもありませんでした。

日髙先生
当時のカルテによると、35歳ぐらいから頭痛や吐き気の症状が出ていたようですね。そのような症状が出始めて3~4カ月後には足のむくみ、その2~3カ月後には労作時の息切れや全身倦怠感などの症状が出始め、当院を受診する1カ月前くらいからは、尿が褐色になることがあったり、泡立ったりすることがあったようです。
平山さんが開業医を受診された際の検査で、クレアチニンが6mg/dL、血圧が180/120mmHgだったため、当院を紹介されて受診し、血液検査でANCA(アンカ)関連の急速進行性糸球体腎炎と診断されました。その後2年くらいはステロイド治療や食事療法を行っていました。
※ANCA(Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody(抗好中球細胞質抗体)):自己抗体の1つで、白血球(特に好中球)を標的とする異常な抗体。ANCA関連血管炎では、血液中にANCAが出現する。
※急速進行性糸球体腎炎:腎炎を示す尿所見を伴い、数週から数カ月の経過で急速に腎不全が進行する症候群。

その後、39歳の時に腹膜透析を開始されたということですが、腹膜透析を選んだのはなぜですか。

平山さん
2人の子どもがまだ小学生で、上の子が受験を控えていたということもあり、血液透析に比べて時間の制約が少ない腹膜透析を選びました。

日髙先生
当時は当院で腎移植を行っていなかったので、腎代替療法の説明については、血液透析と腹膜透析が中心だったと思われます。 私は2008年に当院に着任しましたので、平山さんが腹膜透析を開始されて2年後くらいから腹膜透析外来で平山さんを担当するようになりました。 平山さんは腹膜透析を開始して6年くらいで、徐々に老廃物や水分の除去が十分にできなくなり、むくみ、高血圧、かゆみ、頭痛などの症状が出るようになりました。血圧は様々な薬を使ってもコントロールが難しかったですね。 そのため、2015年からは腹膜透析と血液透析を併用するPD-HDハイブリッド療法に移行しました。

平山さん
私は血管が細くて血液透析の穿刺が痛く、透析中は開始時よりさらに痛くなる状態だったので、血液透析の回数を増やすのは難しかったです。 ただ、透析治療を受けていたころの楽しみは、娘たちと嵐のコンサートに行くことだったので、血液透析を併用し始めてからは、先生から「血液透析を受けた日の後なら一泊してきていいよ」と言われて、北海道で行われたコンサートに行ったこともあります。腹膜透析の場合は、宿泊先に透析液を送らなければならなかったので、その点はハイブリッド療法の良さを感じていました。

平山さんご家族

移植前、ご家族と一緒に