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渡井 至彦先生 コラム

慢性腎不全に対する治療として腎移植が血液透析・腹膜透析と並んで確立した治療である事は皆さんご存知と思います。一方で、現在の腎移植の成績がどこまで進歩しているのかを正確に知る機会は多くないと思います。このコラムでは、腎移植を行った後の患者生存率(PS)と移植腎生着率(GS)(移植腎が機能して透析が必要のない状態の確率)について紹介します。

日本移植学会から発表された、2000年以降に行われた生体および献腎移植の10年後の患者生存率は93.8%と80.2%、移植腎生着率は84.9%と66.3%(図1、2)であり、1989年以前の成績と比較すると生存率・生着率共に格段と改善されています。


↑(図1,2)クリックすると大きい画像が出ます


当院(名古屋第二赤十字病院)における2000年以降の生体腎移植の成績をみても、10年後の移植腎生着率は87.8%(図3)となっており、移植後の成績は格段によくなっております。


↑(図3)クリックすると大きい画像が出ます


一方で、日本移植学会のデータに戻りますと、1990年~1999年の移植成績と2000年以降の成績を比較すると新たな免疫抑制剤が使用されるようになって、移植腎生着率は70.4%→84.9%と格段に良くなっているものの、患者生存率は91.3%→93.8%と、生着率に比べると改善していないことが分かります。(図4)


↑(図4)クリックすると大きい画像が出ます


この理由は、免疫抑制療法の進歩によって拒絶反応の発生率が減り移植腎生着率は改善した一方で、death with functioning graftといわれる移植腎が機能していながら心血管・脳血管系疾患・感染症・悪性新生物(がん)等によって死亡される方が増えていることが主な原因と考えられています。

以上のことから、更に患者生存率を改善する為には第一に心血管・脳血管系疾患発症の危険因子となる高血圧症・脂質異常症・肥満等の管理が重要と考えられます。加えて、悪性新生物(がん)の早期発見・治療のためには人間ドックや移植施設での外来での定期検査が必要です。また、心血管系合併症や悪性腫瘍発生の少ない免疫抑制療法も現在研究されています。

加えて、移植腎廃絶原因の中で「患者自身の免疫抑制剤の中止」(=怠薬)が2.3%(表1)となっていますが、実際には慢性拒絶反応で移植腎廃絶となった人達の半分が怠薬をしていたとの報告があります。


↑(表1)クリックすると大きい画像が出ます


免疫抑制剤を主治医の指示通り内服することは移植腎生着にとって非常に重要です。毎日決められた時間、タイミングに、決められた量の免疫抑制剤をしっかりと服用するようにしましょう。

文献:日本移植学会 2014 臓器移植ファクトブック


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