トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「知っているようで知らない深いチーズの話 その1」 腎移植に対する患者さんの誤解その17

原田 浩先生 コラム

今回は少し堅苦しくない、チーズのお話です。

チーズ

体重増加、血中カリウム上昇を気にせずワインを飲みながら冬の長い夜を楽しむなんて言うのも、移植をされた方の楽しみかもしれませんね。ワインと言えば最も合うコンビネーションとしてはチーズですが、このチーズが実は、よく知らないと一般の方でもとんでもない目に遭うというお話です。
チーズには色々な種類があるのはご存じでしょうか。良く目にするのは、堅いビニールにくるまれたプロセスチーズ、あるいはカマンベールチーズ、粉チーズでお馴染みのパルメザンチーズなどだと思いますが、デパートの食品売り場などに行くと、実に多くのカラフルなチーズが並んでいます。全部気軽に食べて良いのかというと、そうではありません。以下を良くお読み下さい。なお、チーズは勉強をすればするほど奥が深くなり、申し訳ありませんが2部に分けました。今回はその1‐チーズの基本です。さて、チーズは何なのかをもう一度考えたいと思いますが、チーズは動物乳が乳酸などの微生物で発酵、さらに熟成したものと定義されます。チーズは紀元前6,000年もの昔に、動物の反芻(はんすう)胃を利用した容器に保存した乳が変化したことを知ったところから始まったものだろうと言われています(諸説あります)。発酵だけでは飽き足らず、さらに、カビなどのほかの微生物による熟成をさせるようにしたチーズがいろ色々とあり、チーズのバリエーションは数限りなくあります。さて、今回はチーズについての基本編です。まずは、チーズの原理についてみていきましょう。


↑(図1)クリックすると大きい画像が出ます

↑(図2)クリックすると大きい画像が出ます


↑(図1)クリックすると大きい画像が出ます


↑(図2)クリックすると大きい画像が出ます


1. チーズの材料
動物乳です。多くは牛ですが水牛、羊、山羊の乳もあります。動物の乳からはさまざまな乳製品が作られています(図1)(図2)。


2. チーズの発酵に必要な環境
まず乳酸菌です。かつては、無殺菌の乳が使用され、環境微生物中の乳酸菌の力を利用していましたが、現在では原乳を殺菌することが多く、当然混入されている乳酸菌は死滅しますので、発酵の段階で乳酸菌を新たに混入させる必要があります(これをスターターと言います)。乳酸発酵した乳は酸性になり、カルシウムイオンが増加します。
なお、乳中には2種類のタンパク質、カゼインと水溶性タンパク質ホエイが存在します。前者は酸や酵素の働きで凝固沈殿します(これをカードと呼びます)。一方後者はそれらの働きでは凝固はせず熱を加えれば凝固します。もちろんチーズのほとんどの本体はカゼインですが、ホエイを利用したチーズもあります(リコッタというチーズです)。


3. レンネットと呼ばれる酵素混合物
前述のように、哺乳動物の離乳前の仔の胃の中で乳が固まることは何千年も前から知られていたことです。反芻動物の第四胃に存在する乳を固める作用を持つその成分の多くはキモシンと呼ばれる酵素です。牛や山羊などの反芻動物の第四胃の消化液の抽出物が、標準レンネットと呼ばれ、乳の凝固に利用されます。なお、仔は離乳をするとキモシン分泌量が急激に減少し、もう一つの消化酵素のペプシンが増加してきます(この結果、草を食べることができるようになります)。このために、成獣の消化液を使用しても乳の凝固は起こりません。
なお、動物性レンネットの供給が追いつかなくなった20世紀の中頃には、ある種のカビ由来の酵素に凝乳作用があることがわかり、微生物レンネットとして使用されています。また、最近では、遺伝子組み換えレンネットが実用化され、現在では、この微生物レンネットと遺伝子組み換えレンネットが用いられています。


4. 3種類の乳の凝固法
カゼインは乳酸やレモン果汁などの酸により酸凝固をしますが、これはヨーグルトの製造の原理であり、カルシウムが取り入れられず、ゆるやかなカードができます。フレッシュチーズなどの水分が多いチーズ作りに適しています。また、レンネット凝固させたカードはカルシウムが取り入れられ、しっかりしたカードであり、水分の少ない硬質系チーズの製造に向いています。
一般にチーズ作りは、酸凝固とレンネット凝固のバランスにより目的に応じた凝固を行います。
3つ目の凝固は熱凝固です。タンパク質が80℃になると、凝固する性質を利用しています。


5. ホエイの分離
凝固した乳を加圧、カッティング、攪拌(かくはん)によりカードとホエイに分離します。カードをカッティングし型に詰めるまでの技法や、乳酸発酵のコントロールの仕方でさまざまなチーズが作り出されます。


6. チーズの成形
チーズの形は、当然ながらどのような枠に入れるかで決定されます。ここに、さらに圧力をかけるかかけないか、熱を加えるか加えないかで、出来るものが決まります。


7. 加塩
フレッシュチーズは加塩をすることはないのですが、これからの熟成のプロセスに加塩は必要です。その理由は長期の熟成の期間の雑菌の繁殖による腐敗の予防にほかなりません。乳酸菌やカビ、酵母などの有用な微生物に至適な環境を整えるためにも必要です。また、味をつけるためでもあります。


8. 熟成
凝固したばかりのカードは腐敗しやすく、即消費しなくてはなりません。これがフレッシュチーズなのですが、保存食としてのチーズの地位を確立させたのが、熟成という技術であり、またさまざまな種類のチーズがこの熟成の方法により、生み出させるのです。カードからホエイを除いて成形したものを、グリーンチーズと呼びます。これに塩を加え、一定の温度、湿度に保ち、グリーンチーズ内の微生物や酵素、その後取り入れられた微生物(細菌、カビ、酵母)、酵素がタンパク質を分解し、色々なアミノ酸を生成し、脂質を分解して脂肪酸を生み出し、チーズ独特の風味が生み出されます。


さて、今回はここまでです。何となくチーズの生成の原理が理解できたかと思います。
なぜ、今回このコラムにチーズの話を持ち出したかと言いますと、チーズの種類、原理を知っていただきたいからです。チーズには、生成の段階で、有害な細菌、カビなどが付着する場合があります。そのため皆さんはまず、原乳に殺菌操作を加えているか否か、消費期限の短いフレッシュチーズなのか否か、熟成に使用された微生物が本当に100%安全なのか、などを考えて安全に食べられるチーズを選ばなくてはなりません。

次回は、チーズの各論に移ります。お楽しみに。


参考文献
1.C.P.A. チーズプロフェッショナル教本2015. C.P.A. 教本委員会編:飛鳥出版, 東京, 2015.

お気に入り記事に登録

原田 浩先生 過去のコラム

この記事を見た人が読んでいるのは