トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  「よりよい移植のための工夫:移植診療における小さくて大きい問題」<後編> 第32回腎移植・血管外科研究会報告【3】

森田 研先生 コラム

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 第32回腎移植・血管外科研究会 イブニングセミナー
「よりよい移植のための工夫:移植診療における小さくて大きい問題」


「移植腎機能廃絶後の免疫抑制療法」
 新潟大学 斎藤和英先生(腎泌尿器病態学分野)

移植した腎臓が残念ながら機能を失う場合、安全に透析療法へ移行することが肝要ですが、その際に免疫抑制剤はどのように中止していったら良いのかについては、決まった方法があるわけではありません。
通常は3種類以上の免疫抑制剤を服用していることが多いため、代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチルなど)、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)、ステロイドの順番で中止することが多いようです。しかしその減量、中止スピードは早くするべきか、ゆっくり行うべきか、一定の見解は難しく、研究論文でも相反するものがあるようです。
早すぎる中止は拒絶反応を誘発する危険性があり、逆に時間をかけすぎると感染症の危険性が増します。透析導入の時期にどれだけ減量できているかにもよりますが、拒絶反応が激しくなると移植腎を摘出することによる手術合併症が問題になります。それを考慮し、早期の中止には反対する意見も会場から出されていました。もちろん全国の移植医は各々の患者さんの状態を考慮して適宜調節しているのが実情で、各施設から様々な場合の情報が出されていました。新潟大学での実際の症例の提示もなされ、臨床的に非常に参考になる知識を得ることができました。


「移植後の二次性副甲状腺機能亢進症(HPT)治療」
 名古屋第二赤十字病院 辻田誠先生(移植外科)

慢性腎不全による尿毒症で、腎臓のカルシウム代謝が異常をきたし、カルシウムの貯蔵庫である骨からの動員が進む二次性副甲状腺機能亢進症の治療は、移植を行って腎機能が改善した後でも継続してケアしなければならない難題です。
移植前から二次性副甲状腺機能亢進症の治療を行うことは、骨粗鬆症による骨折の予防、移植腎機能の改善、生存率向上のために非常に重要です。これを移植後から治療しようとすると、最近開発されたシナカルセト(二次性副甲状腺機能亢進症治療薬)では、腎機能や骨粗鬆症への効果が思ったより得られず、長期成績が不明であることが名古屋第二赤十字病院の多数の臨床研究から判明してきているそうです。
その理由として、骨折や移植腎機能への影響が、副甲状腺ホルモン過剰の問題以外の要素も多く、一定の傾向をつかみにくいことと、まだ長期間のデータが揃っていないために未解決の部分が多いということをあげておられました。
腎移植の前に余裕を持って二次性副甲状腺機能亢進症を治療しておくことが必要です。
会場からは移植するまでの期間の長さによる傾向、骨密度を測定するべき部位の違い(腰椎よりも大腿骨の方を重視すべきかどうか)などについて多くの質問が出されていました。


以上4つのテーマについて、限られた時間ながら様々な地域の移植医から意見が交わされました。どの問題を取っても、ひとつひとつが多くの論点をはらんでおり、非常に盛りだくさんながら、内容の濃いセミナーになりました。今後、未解決の問題が残るこれらの「小さくて大きな問題」ひとつひとつについて、継続して取り組んでいく必要性を感じました。


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