トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  腎移植における「TDM」とその重要性 その1

吉田 一成先生 コラム


現在の腎移植には、免疫抑制療法が欠かせません。そこで、数種類の免疫抑制薬が投与されることになります。その主なものにはステロイド(プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン)、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)、代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェティル、ミゾリビン、アザチオプリン)、種々の抗体(バシリキシマブ、リツキシマブなど)があります。

このうち特にカルシニューリン阻害薬(時には代謝拮抗薬)は投与中の薬の血中濃度を測って、次の投与量を変更することが行われます。それは、これらの薬の血中濃度によって効果が不十分あるいは逆に副作用が出過ぎることがあるからです。

腎移植の場合では薬が少なすぎて、その効果が不十分であれば、拒絶反応により移植腎が障害されますし、薬が多すぎると副作用として腎毒性や感染症が起きて、やはり移植腎を障害してしまいます。どちらが起きても困りますよね。そこでちょうど良い薬の量をきめ細かく決める必要があるのです。

投薬量を決めるための薬の血中濃度測定は、薬の服用前と服用後、様々な決められた時間に、数回の採血による測定を行い、その結果から計算によって求められたいろいろな指標により次回の投与量を決めます。これを、Therapeutic Drug Monitoring, TDMあるいはPharmacokinetic study, PK studyといい、「治療薬物モニタリング」と訳されます。

痛みを伴う採血は少ないに超したことはありませんので通常、採血は1日1回ですが、この場合1日に何回も採血されることになります。なぜ、このようなことが必要になるのでしょうか? それを理解するには、カルシニューリン阻害薬の作用・副作用と血中濃度の関係を理解する必要があります。

まず、薬を服用(普通は口から)すると薬は消化管から吸収され、血液中に移行して、いろいろな作用を及ぼします。血液中の薬は同時に肝臓や腎臓などにより代謝、分解され、肝臓から胆汁を経て便にあるいは腎臓から尿に排泄されます。すなわち、薬を服用すると、吸収に伴い、その薬の血中濃度は徐々に上昇し、吸収が終わればそれ以上には上がらなくなります。

しかし同時に薬は代謝(分解)排泄されるので、血中濃度は時間とともに徐々に下がり、よって左上の図1のようなピークを持った血中濃度曲線が出来ます。薬を毎日連用して飲みだすと、薬は次第に体内に蓄積し、投与量と排泄量が等しくなると蓄積が止まるので、平均血中濃度は一定のレベルに保たれます(定常状態に達すると言います)。

薬は多くの場合、1日に何回か、そして毎日服用するので、定常状態に達した薬の血中濃度曲線は左上の図2のようになります。これを見ると採血する時間により血中濃度が変わることが解ります。この曲線の変動が少なければ何度も採血する必要はありませんが、変動が大きく、それも人により、さらにその人の状態により形が違ってしまうために何度も測定して、TDMを行う必要があるのです。

カルシニューリン阻害薬のようにTDMの対象とされている薬物は多くはなく、次に挙げるような条件があるものが適応になります。

1. 治療のための血中濃度の範囲が狭く、副作用の発現域と近接している。
2. 薬物の体内動態に個人差が大きい。
3. 血中濃度と薬効・副作用の発現に相関がある。
4. 血中濃度依存的に生じる副作用が重篤である。
5. 投与量と血中濃度が比例関係にない。

場合によっては薬をきちんと服用しているのか確かめるためにTDMをすることも稀にあります。

・・・・・ 次回へ続く ・・・・・

お気に入り記事に登録

吉田 一成先生 過去のコラム

この記事を見た人が読んでいるのは