トップページ  >  移植コラム  >  ドクターコラム  >  慢性腎臓病の水分管理 (脱水にも取り過ぎにも注意)

若井 幸子先生 コラム

【1】成人の1日に必要な水分摂取量

成人が1日に必要な水分摂取量は、体重1kgあたり50mlと言われています。例えば、体重が50㎏の方では2.5L、70㎏の方では3.5Lとなります。 水分摂取は、直接口から飲むだけでなく下記の3つの方法で行われています。

①体内で代謝により生成される水分(約0.3~0.5L)
②食事により吸収される水分(約1.0~1.2L)
③直接口から摂取する水分




上記のように、代謝により生成される水分と、食事からの水分で、約1.3~1.7Lほどありますので、直接口から摂取しなければならない水分量は、全体の摂取水分量の約半分にあたる約1.0~2.0Lくらい(その方の体重によっても異なります)になります。


【2】慢性腎臓病の方の水分管理

慢性腎臓病の方の水分管理は、腎機能によって摂取すべき水分量が異なります。一般的に、腎機能(血清クレアチニン、年齢、性別から計算したeGFR:糸球体機能)が良好なら、尿濃縮能(尿細管機能)も良好であり、摂取水分量を気に留めなくとも腎臓が調整をしてくれています。糸球体は濾過を行い、尿細管で水分の再吸収をして尿を生成しています。
腎機能が低下してくると、尿毒素を濃縮して排泄することが困難になるため希釈尿となり、尿毒素の排泄のためには、摂取水分量を多くして尿量を増量し、機能を維持することになります。一口に腎機能低下と言っても腎臓のどこの部分の病変(糸球体か尿細管か)が主なのかで、意味合いが微妙に異なります。
さらに、蛋白尿の程度、塩分の摂取量、血圧や降圧剤の種類によっても最適な摂取水分量は異なります。知らず知らずのうちに、摂取した水分量の排泄ができずに体内に貯留することもあり、このような場合は水分制限が必要となります。特にeGFR<30min/mlでは注意が必要でしょう。


【3】腎移植後の水分管理

腎移植をされた方は、通常腎機能のモニターは血清クレアチニン、eGFR:糸球体機能 で行っていますが、厳密にいえば尿細管機能も考慮しなくてはなりません。
移植腎は脱水や血圧低下に鋭敏に反応し、尿量が減少することにより、腎機能へ悪影響を与えることがあります。当院では移植後の再発IgA腎症の方に扁桃腺摘出術を施行していますが、オペ時に血圧が低めになった際や、絶食絶飲時に補液量が少ない場合にも、尿量が極端に減少します。
そのような事からも、移植者の方は保存期の方と同じレベルのeGFR:糸球体機能 でも、保存期の方よりも脱水に留意すべきと感じます。移植患者さんには脱水にならないように水分摂取を十分にするように指導を行っています。
移植後は脱水に注意し、1日の尿量が1.5~2L以上は確保出来るように、十分に水分摂取するようにしてください。


一方、水分の取り過ぎについてはあまり取り上げられていないかもしれません。摂取水分量(直接口から摂取する水分)の目安としては、季節や気温、乾燥度などに応じて、1.5~3L程度で十分かと思います。まれに、日常的に4~5Lもの水分を摂取されるという方もいらっしゃいますが、過剰な水分摂取は腎臓に負荷がかかるため、取りすぎもまた注意が必要です。
水分の取り過ぎによって起こる水中毒という病態があり、過剰な水分を処理するために腎臓に負担がかかり、体内の老廃物を処理しきれなくなり、低ナトリウム血症、意識障害を起こすことがあります。水中毒は強迫観念が関与している場合もあります。


尿量の測定は日常生活では困難な場合もあると思いますので、毎日体重測定を行い、体重管理をすることをお勧めします。
急激な体重変化は水分によるものと考えられますので、減少していれば意識的に水分を摂取し、増加している場合は、塩分を控えてください。塩分摂取過多は水分貯留を招きます。体重が増加しているからといって、水分だけを控え、口渇に耐えることはむしろ腎機能が悪化することがあります。塩分と水分は密接な関係にあることを忘れないようにしましょう。

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