大阪大学医学部附属病院

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大阪大学医学部附属病院 泌尿器科 インタビュー

大阪大学医学部附属病院では、1965年に第1例目の腎移植が行われ、現在までに900例を超える腎移植が行われています。泌尿器科の今村亮一先生と阿部豊文先生に、大阪大学医学部附属病院における腎移植医療の特色についてお聞きしました。(取材日:2019年12月26日)

泌尿器科における腎移植医療の特色

泌尿器科における移植医療の特色についてお聞かせください。

今村先生

今村 亮一先生

今村先生:
まず、当院は全国で唯一、全臓器(心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸)の移植が行える施設である(取材日時点)という点があげられます。当院では2003年に、移植医療の推進を目的として「移植医療部」が設立され、2007年には中央診療施設として承認されました。移植医療を推進していくためには、外科系の診療科や麻酔科、手術部、集中治療部だけでなく、内科系の診療科も含めた多くの診療科の連携が必要です。移植医療部は、各診療科の医師、院内コーディネーター、レシピント移植コーディネーターで構成され、診療科横断で移植医療を推進しています。

移植医療を推進していく上では、レシピエント移植コーディネーター(RTC)の存在も非常に重要だと思いますが、RTCはどのような役割をされていますか。

今村先生:
当院には、移植臓器毎にRTCがおり、移植前から移植後に渡り、患者さんやご家族をサポートしています。例えば、移植前は、ドナー候補者やレシピエント、そのご家族が納得して移植医療を選択出来るように、さまざまな情報提供を行い、相談対応を行っています。また、安全な移植手術のために、関連部署間の調整、レシピエントやドナーの術前検査の調整などを行っています。移植後も、患者さんや生体腎ドナーとなられた方が安心して生活ができるように、外来での生活指導や相談対応などを行っています。
当院の腎移植担当RTCの後藤さんも、非常に患者さんからの信頼が厚く、移植前後の患者さんやご家族をさまざまな面からサポートしてくれています。

こちらの施設では、年間何例くらいの腎移植を行っていますか。

今村先生:
当院で年間50例弱、関連施設を含めると年間で70~80例の腎移植を行っています。また当科では、消化器外科と連携して膵腎同時移植や肝腎同時移植を行っており、2019年も6例の膵腎同時移植を行いました。当科と消化器外科の連携のように、移植医療を行う上で、診療科間の連携体制がしっかりと構築できている点も、当院における移植医療の特色です。さまざまな診療科、医療スタッフがチームとして移植医療に取り組んでいますので、患者さんは安心して手術に臨んでいただけると思います。

生体腎ドナーについてはどのような点に注意して診ていらっしゃいますか。

今村先生:
生体腎移植で一番大切なことは、腎提供後のドナーが腎不全にならないことです。生体腎ドナーの安全が守られない限り、移植に向けて話を進めることはできません。当院では、ドナー候補者の腎機能をイヌリンクリアランス検査で確認し、腎機能に問題が無い場合は、悪性疾患や感染症などの合併症を精査するために、全身の画像検査などを行っています。また、検査結果に加えて、例えば、ドナー候補者に移植手術のために減量していただいた場合は、移植後も太らないように体重コントロールができるかどうか、移植手術前に禁煙していただいた場合は、腎提供後も禁煙を続けられるかなども、腎提供を許可する重要なポイントですので、そのような点も含めて判断します。
その他、腎提供の意思確認のために、精神科を受診していただくなど、さまざまな検査を行った上で腎提供の可否を判断しています。
※イヌリンクリアランス検査:腎機能は糸球体濾過量(GFR)で評価されます。もっとも正確な評価法は、糸球体濾過のみにより排泄されるマーカー物質の腎クリアランス測定です。そのような物質にイヌリンがあります。イヌリンは生体内で代謝されず、タンパク質と結合せず、完全に糸球体濾過され、尿細管で全く再吸収も分泌もされません。そのため、イヌリンクリアランスは国際的にも糸球体濾過量(GFR)測定のゴールドスタンダード(診断や評価の精度が高いものとして広く容認された手法のこと)となっています。

献腎移植の待機者も多いと思われますが、待機中の検査や診察はどのように行われていますか。

阿部先生

阿部 豊文先生

阿部先生:
現在当院で献腎移植を希望して待機している患者さんは220~230人くらいですが、毎年3~4月頃に診察と評価を行っています。基本的に検査は透析施設にお願いし、その結果を当院でチェックしています。移植待機期間中に定期的に検査をしっかりと受けてもらっているので、当院で献腎移植を受けた患者さんは、移植後5年間のがんの発症が少ないという追跡結果が出ています。実際に待機期間中の定期検査で、がんを早期に発見できた患者さんもいらっしゃいました。待機中、年に1回必ず検査を受けることで、移植を受けられる機会が訪れた際に、万全の体制で移植を受けることができます。

先ほどRTCの役割についてお聞きしましたが、その他の医療スタッフは移植医療にどのように関わっていらっしゃいますか。

阿部先生:
薬剤師や管理栄養士など、さまざまな医療スタッフが移植医療に関わっています。
例えば、服薬管理については、移植手術後の入院中の患者さんには、当院の病棟担当薬剤師が服薬指導を行います。また、退院後、フォローアップを行っている施設にも移植専門の薬剤師がおりますので、必要に応じて患者さんの服薬指導を行っています。
また、食事指導に関しては、移植手術後、入院中に管理栄養士による指導があり、退院後のフォローアップにおいても、24時間蓄尿検査などの結果に応じて、塩分摂取量や蛋白摂取量が多い患者さんにはフォローアップ施設の管理栄養士が指導を行っています。

移植後のフォローアップ施設における体制についてお聞かせください。

阿部先生:
当院で移植を受けた患者さんのフォローアップ施設は3施設あり、それぞれの施設に当科の医師が赴き、フォローアップ外来を行っています。  フォローアップ施設にも優秀で信頼のおけるRTCをはじめとしたスタッフがそろっています。RTCは患者さん毎に、移植後に必要な検査のスケジュール管理などをしっかりと行っており、レシピエントやドナーからの相談などにも対応していますので、通院しているレシピエントやドナーの方々は非常に安心感があると思います。

現在、初診から生体腎移植手術までは期間はどのくらいですか。

阿部先生:
患者さんやドナー候補者の方、施設の状況などにもよりますが、術前検査等に特に問題が無い場合は3カ月くらいです。ただ当院の患者さんには高齢の方や合併症をかかえリスクの高い方も多く、その場合は半年から1年ほどかかる場合もあります。

現在、関連施設や近隣施設との連携強化のために行っていることはありますか。

今村先生:
関連施設や近隣施設とは勉強会や交流会などを実施して連携強化を行っています。また、患者さんを紹介していただいた近隣施設には、その患者さんの移植後の経過などをきちんとフィードバックするようにしています。患者さんの経過をお伝えすることで、医師同士の顔が見えるようになり、移植医療の正しい情報をしっかりと伝えることができますので、近隣施設と共に、この地域の移植医療を推進することに繋がっていくと考えています。

移植を検討されている患者さんとそのご家族に向けて

阿部先生:
献腎移植は亡くなった方の想いを繋ぐ医療であり、それによって腎不全の患者さんがとても元気になることができる素晴らしい医療だと思っています。しかし、日本では献腎ドナーがなかなか増えない現状があり、腎移植を行うためには、生体腎ドナーに頼らざるを得ない状況です。当院では生体腎ドナーの安全を第一に考え、ドナーの精査を綿密に行った上で腎提供を許可しています。そして、ドナーの方には生涯にわたって定期的に外来を受診いただくよう説明しています。
移植を受けた多くのレシピエントが元気に社会復帰し、充実した生活を送っていらっしゃいます。私は、すべての腎不全患者さんに腎移植という選択肢を提示し、しっかりと正しい情報を伝えたいと思っています。積極的に移植施設を受診し、腎代替療法選択に関する正しい情報を得た上で、ご自身に合った治療法を選択してほしいと思います。

今村先生:
移植ができないとあきらめるのは簡単です。しかし、移植医療で患者さんが良好な日常生活を取り戻せる可能性が高いことは事実です。偏った情報や断片的な情報で治療法を選択するのではなく、当院に限らずしっかりと移植医療に取り組んでいる施設に相談し、評価を受け、判断するようにしてください。
当院ではドナー、レシピエント候補者ともに、しっかりと検査、評価を行った上で移植を行っています。安心して相談にお越しいただきたいと思います。

移植件数・成績

腎移植件数

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
生体腎移植 23 25 35 41 38
献腎移植 4 5 5 4 10
合計 27 30 40 45 48

生着率

生体腎移植 累計症例数:792例(2019年12月31日時点)

期間 症例数 5年 10年 15年 20年
~1990年 257例 81.0% 68.3% 55.6% 48.1%
1991年~2000年 138例 93.9% 91.4% 82.2% 75.1%
2001年~2010年 150例 97.9% 94.9% 82.8%
2011年~ 247例 98.1%

献腎移植 累計症例数:129例(膵腎同時移植は除く)(2019年12月31日時点)

期間 症例数 5年 10年 15年 20年
~1990年 81例 82.2% 70.7% 67.8% 67.8%
1991年~2000年 22例 90.4% 80.4% 75.4% 64.6%
2001年~2010年 9例 100.0% 80.0% 40.0%
2011年~ 16例 100.0%

移植チーム紹介

移植チーム 写真

泌尿器科

  • 今村 亮一
  • 阿部 豊文
  • 加藤 大悟
  • 川村 正隆
  • 谷口 歩

腎臓内科

  • 難波 倫子

レシピエント移植コーディネーター

  • 後藤 舞子

受診について

生体腎移植希望の方

腎移植についてのご相談は「腎移植外来」で対応しています。

お問い合わせ先

泌尿器科

06-6879-5053(移植医療部)

担当:後藤(レシピエント移植コーディネーター)

【受付時間】9:00~17:00

受診の方法

1.通院されている病院または医院の主治医の先生から、大阪大学医学部附属病院保健医療福祉ネットワーク部を通じてご予約ください。
2.大阪大学医学部附属病院移植医療部(06-6879-5053)の腎移植担当コーディネーターまで連絡の上、ご予約ください。

献腎移植希望の方

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